【南果歩にインタビュー】コロナ禍は海外作品オーディションに励む|映画『GENSAN PUNCH』『MISS OSAKA』についても語る

東日本大震災から10年、南果歩の言葉への思いとは? “最果タヒにハマっています”

心に言葉を響かせて。

人と人との間に距離ができ、つながりが絶たれがちな現在。それでも、沈んだ心を奮い立たせ、深い淵から引き上げるのはやっぱり言葉の力なのだと、南果歩さんは言います。言葉を信じ、届け続ける人は今、その目に何を映すのでしょうか。

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【南果歩】新しい驚きに出会うためなら辛さまでもが楽しい経験になる

外はまだ厳しい冬のさなか。でも、スタジオにはいち早く春が訪れていました。心地よいコットン、滑らかなシルクのツーピースに身を包んだ南果歩さん。窓辺に立ち、「気持ちいいね!」と明るい声を上げます。

心地よいものに触れた時、気持ちを動かされた瞬間、南さんは素直に思いを唇に乗せる人。去年の春から始まった『大人のおしゃれ手帖』連載のエッセイ「I am Here!」にも、その率直な言葉が綴られています。毎月届けられる南さんの言葉に、私たちはこの一年、どれほど慰め、励まされてきたことでしょう。
「心がけて、というわけではないんですが、2020年はすべての人が同じ窮地に立たされた、とても特別な年だったので。地球規模で、60億人が同じ災害に直面するなんて、100年ぶりだったと思うんですよね」

こういう時は、言葉を。南さんはそう思い、周囲の人へ、遠くにいる人へ、できる限りたくさんの言葉を届けたと言います。それも、できるだけ前向きな言葉を。
「直接会うことがままならないとしても、日本の人とも海外に住んでいる友だちとも、お互いを気遣い、励ましあうようにして。2020年に発し、書いた言葉には、その時々の自分の心情が形になっていると思います。それに、人間はどうしてものど元を過ぎると熱さを忘れてしまうから……。3月には東日本大震災から10年を迎えますが、残念なことにすでに風化が始まりかけていますよね。だから、その時その時に感じたことは、多少なりとも書き留めておこうと」

以前から、本を読んで好きな言葉に出会うと、そこにアンダーラインを引いたり手帖に書き写したりしてきたという南さんの日常の杖になるのも、やはり言葉。とくに、詩に強い愛着を持っていると言います。
「心が動揺した時は、詩を読みます。それも、めちゃくちゃ暗い詩を(笑)。こんなに明るいのに意外? でも、私が明るいのは、たぶん心の奥底にあるものとの距離をとっているからじゃないのかな……。詩を欲する時の心情って、ちょっと疲れていたり、ダメージを受けていたりするじゃないですか。そういう時、私の場合はもっともっと暗い淵に連れて行ってくれるような言葉を選びます。そうすると、すごく落ち着くんですよね。どんな励ましの言葉よりも、不思議と心の安定につながるというか。よく読むのは、最果タヒさんの詩。純度が高く、ウエットじゃなくてドライなところがとても好きで、大好きな(中原)中也以来ぶりにハマった詩人です」

混乱する世界と、そして自分の心と向き合い、静かな対話を重ねた南さん。2021年は、久しぶりに海の向こうへと羽ばたきます。年明けからすぐカナダのバンクーバーへ飛んで海外のプロダクションに参加し、ドラマの撮影に挑む南さん。ステイホームの間は、こうした海外作品のオーディションに励んだ期間でもありました。
「オーディション、大好きなんですよ。とくに海外でのお仕事の場合は、相手は今までの仕事のことを知らない。私のことを知らず、私のお芝居を見たことのない人が選んでくれるのって、うれしいじゃないですか! もちろん、オーディションの最後の段階が近づくと辛くなる時もありますが、それだって楽しいことをしている時の辛さですから。新しい役や作品に出会えるのだったら、苦労も含めて楽しめるんです」

同じく今年は、2つの映画出演作が公開される年。カンヌ映画祭で監督賞を受賞したフィリピンの名匠ブリランテ・メンドーサ監督のもとにアジアの才能が結集した『GENSAN PUNCH』は、障がいを乗り越え栄光を掴んだボクサーの真実の物語。デンマーク、日本、ノルウェーの3か国共同制作の『MISS OSAKA』は、大阪のナイトシーンを舞台に繰り広げられるミステリアスでファンタジックなストーリーで、南さんはボーダーレスな場で魅力を発揮し、ますます輝きます。
「もちろん私にも、コロナで諦めなくてはならなくなったこともたくさんありました。でも、そればかりを数えていたらきりがないし、制限された範囲でできることだって、探してみたらけっこうあるんですよね。それに挑戦したり、オンラインを駆使して次のために勉強をしたり……そういうチャンスもまた、与えられたものだと思って」

海の向こうから届けられる言葉に耳を澄ましつつ、私たちも勇気をつなげ、形にする。そんな輪を広げる年にしたいものです。

【南果歩にインタビュー】コロナ禍は海外作品オーディションに励む|映画『GENSAN PUNCH』『MISS OSAKA』についても語る
ブラウス¥61,000、スカート¥71,000/ともにトリー バーチ(トリー バーチ ジャパン)、イヤカフ(上)¥58,000、イヤカフ(下)¥60,000、ネックレス¥88,000、リング(人差し指)¥75,000、手首側からブレスレット¥54,000、ブレスレット¥75,000/すべてジジ(ホワイトオフィス)、シューズ¥44,000/ネブローニ(フラッパーズ)

南 果歩がコロナ禍の撮影で感じた喜びと葛藤。ソーシャルディスタンスの楽しみ方も

INFORMATION/映画『GENSAN PUNCH』(邦題:義足のボクサー)

監督:ブリランテ・メンドーサ
出演:尚玄、ロニー・ラザロ、ビューティー・ゴンザレス、南 果歩ほか
2021年公開予定

幼少時に義足のハンデを負いながらボクサーとなった青年が、日本では手にできないプロ資格を求めてフィリピンへ渡った感動の実話を映画化。ベルリン、カンヌなど数々の国際映画祭で賞を受けたブリランテ・メンドーサ氏の撮影に参加したことは「台本のない中での撮影は、頭で考えるより感じて動くことが優先。俳優としての自分を試された、得難い経験でした」と南さん。


南 果歩がマスク10万枚を寄付。ひっ迫する医療現場に直面し、改めて感じたこと

南 果歩がステイホームの近況報告! 自粛生活でたどり着いたコロナとの向き合い方

INFORMATION/映画『MISS OSAKA』

監督:ダニエル・デンシック
出演:ヴィクトリア・カルメン・ゾンネ、ミケル・ボー・フォロスゴー、森山未來、阿部純子、南 果歩ほか
2021年公開予定

閉塞した環境を脱したいと、自分と瓜二つの女性・マリアに成り代わったデンマーク人女性・イネス。マリアが暮らしていた日本の大阪へ渡り、混沌の夜の最中でイネスが見たものとは……。南さんは、イネスが働くナイトクラブ「MISS OSAKA」のママを彩り豊かに体現。「デンシック監督の描く、リアルでありながら幻想的な世界をともに作り上げる作業にワクワクしました」。


[南 果歩]愛犬のトイプードルとの出会いは? お婿さん選びに奔走

PROFILE/南果歩(みなみ・かほ)

1964年兵庫県生まれ。最近の出演作に大河ドラマ『麒麟がくる』、ドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』、映画『脳天パラダイス』『ブルーアワーにぶっ飛ばす』、舞台『あの出来事』など。『大人のおしゃれ手帖』連載「I am Here!」は、まもなく開始から1周年。

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南果歩が50代で筋トレにチャレンジ! 見事な180度の開脚姿も披露

photograph:Takashi Noguchi(San Drago)
styling:Kuniko Sakamoto
hair & make-up:Keizo Kuroda(K Three)
text:Michiko Otani
大人のおしゃれ手帖 2021年3月号

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web edit:FASHION BOX

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