『呪術廻戦』さながら!日本史にみる呪術師の抗争の記録まとめ

『呪術廻戦』とは?

『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載中の大ヒットマンガ『呪術廻戦』。主人公・虎杖悠仁(いたどりゆうじ)が「呪い」を祓(はら)う呪術師を目指し、「呪い」が具現化した呪霊(じゅれい)や、呪術を悪用する呪詛師(じゅそし)たちと戦いを繰り広げるダークファンタジーだ。

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呪術勢力の対立は実際に日本で起こっていた!

『呪術廻戦』第136話で日本では呪術師や物の怪(もののけ)の数が突出して多いことが語られている。実際の歴史においても日本には数多くの呪術師が存在し、さまざまな説話集や神社仏閣の縁起などに記され、中には朝廷や幕府の公的な歴史書に記録されていることすらある。

西欧では呪術師は社会のアウトサイダー的な地位だが、日本における呪術は、朝廷を中心とした公的機関が主体となって保護と研究がなされた。陰陽師(おんみょうじ)や呪禁師(じゅごんし)などはいわば国家公務員であり、密教寺院もまた朝廷や幕府からの保護を受ける半官半民的な団体だった。

また国家の保護を受けた呪術はやがて民間にまで広がっていき、それまで貴族たちしか受けられなかった呪術の恩恵を求めた人々によって、非公認の呪術師たちが誕生していった。

こうして日本では呪術師の人口が増加していったのである。

 

陰陽道の名門一族同士の対立

『呪術廻戦』では、主人公が所属する天元(てんげん)を中心とした呪術師のグループもまた一枚岩ではなく、内部抗争やマウンティングの様子が描かれている。その象徴ともいえるのが、呪術界における3つの名門一族である、加茂(かも)家、禪院(ぜんいん)家、五条(ごじょう)家の呪術御三家だ。

史実の陰陽道においても、主に暦(れき)道を司る賀茂(かも)家と主に天文道を司る安倍(あべ)家が、二大宗家として代々継承することになり、衰退と復活をくりかえすことになる。安倍家は鎌倉時代になっても有力な人材を輩出して、鎌倉幕府からの支持を取り付け関東圏にも勢力を伸ばしたが、賀茂家は凋落していった。南北朝時代には安倍家は土御門(つちみかど)家と、室町時代に賀茂家は勘解由小路(かでのこうじ)家とそれぞれ称するようになった。しかし室町時代後期に勘解由小路家の直系の嗣子が殺害されて後継者が途絶え、土御門家が暦道と天文道の両方を司ることになった。江戸時代になると途絶していた勘解由小路家に代わって賀茂氏系の幸徳井(かでい)家が採用されて再興されるが、土御門家の勢力に対抗することはできず、土御門家が陰陽道の実権を握る。そして土御門神道が成立すると全国の陰陽師を統括するようになった。その後、明治時代の陰陽道禁止令によって賀茂系統の陰陽道は消滅する。

 

日本の歴史上もあった宗教界の内部対立

虎杖悠仁らが通う呪術高専は東京校と京都校の2つがあるが、姉妹校にもかかわらず両校の対立が描かれている。毎年行なわれている姉妹校交流会では、指定された区画内に放たれた呪霊(じゅれい)討伐の競い合いが行なわれるが、「妨害行為アリ」とされ「相手を殺したり再起不能の怪我を負わせることのないように」と東京校学長の夜蛾正道(やがまさみち)から生徒たちが注意を受けている。

日本においても呪術を継承する二大勢力の対立は多く起きた。例えば伊勢神宮では神社の運営や祭祀の中心的な役割を担う禰宜(ねぎ)として、荒木田(あらきだ)、根木(ねぎ)、度会(わたらい)の3氏があったが根木氏は早くに断絶。やがて内宮(ないくう)は荒木田氏、外宮(げくう)は度会氏が禰宜の中核となった。鎌倉時代になると独自の古例を継承していた度会氏は度会神道を成立させた。室町時代に人が参拝しやすい外宮が経済的に優位になっていくと、内宮と外宮の対立は深まり、やがて武力衝突による流血や放火などが起きた。両宮の対立は江戸時代には沈静化したが、融和したのは明治時代になってからだった。

密教では1200年もの間、和解しなかった宗派がある。日本に密教をもたらし、真言(しんごん)宗を開いた空海(くうかい)と天台(てんだい)宗を開いた最澄(さいちょう)は、9世紀初頭に仲違いをして絶縁した。以降、密教の二大宗派の対立が続くことになる。真言宗と天台宗の公式な和解は、空海と最澄が仲違いした約1200年後の2009年のことだ。

 

日本では呪術の系統が多く存在し、それぞれ国家的な保護を受けてきたが、呪術の本流を一本化することはなかった。そのため、呪術を継承する勢力同士が競い合う競争原理が生まれ、多様な呪術を生み出していき、超人ともいえる呪術師を輩出していったのである。

 

監修:加門七海

【Profile】
(かもんななみ)
東京都墨田区生まれ。美術館学芸員を経て、1992年『人丸調伏令』で作家デビュー。オカルト・風水・民俗学などに造詣が深く、作品にもそれらの知識が反映されている。他の著書に『うわさの神仏 日本闇世界めぐり』『霊能動物館』『着物憑き』(以上、集英社)、『お祓い日和 その作法と実践』『お咒い日和 その解説と実際』(ともにKADOKAWA)、『加門七海の鬼神伝説』『大江戸魔法陣 徳川三百年を護った風水の謎』(朝日新聞出版)などがある。

 

(抜粋)

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編集 青木康(杜出版株式会社)
執筆協力 青木康
編集協力 阪井日向子
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