“命がけで嫁ぐ”上皇后美智子さまがご成婚時、御歌に込めた想いとは

“命がけで嫁ぐ”上皇后美智子さまがご成婚時、御歌に込めた想いとは

(2020年3月24日 更新)

≪目次≫
●たまきはるいのちの旅に吾を待たす君にまみえむあすの喜び
●三十余年君と過ごししこの御所に夕焼けの空見ゆる窓あり
●【監修者 紹介】

あと数時間で、いよいよ新元号“令和”がスタート。皇太子さまが、新天皇に即位されます。
同時に、今上天皇・皇后両陛下は、上皇・上皇后(じょうこうごう)へとおなりになります。国民の誰もが両陛下の末永いご健康を改めて願っていることでしょう。

ご成婚後、常に陛下に寄り添ってこられた美智子さま。実は美智子さまは、皇室に入られて以来、数多くの御歌(みうた)を詠まれてきたことをご存じでしょうか?

わが国の皇室には、平安の頃より、妃(きさき)が東宮(皇太子)とご成婚され、御所へ入内(じゅだい)する際に、恋の御歌を交換する習わしがあります。
とはいえ、幼少の頃より和歌に親しむ文化がある皇族の方々とは違い、一般のご家庭でお育ちになった美智子さまは、ご結婚前の「お妃教育」の期間、歌人の五島美代子さんのもとで、一日一首を詠む「百日の行(ぎょう)」という“特訓”に挑まれました。
そして、その「行」の最後の御歌として、美智子さまが皇太子殿下(今上天皇)へ向けて詠まれた御歌がこちら。

たまきはるいのちの旅に吾を待たす
君にまみえむあすの喜び

「たまきはる」は「命」の枕詞(まくらことば)です。陛下のもとへ命がけで嫁ぐという、覚悟と決意を示されたのです。

これまで様々なお題で御歌を詠まれてきた美智子さまですが、そこに共通するテーマは、「寄り添う」という慈愛のお心ではないでしょうか。
常に時代に寄り添い、国民に寄り添い、そして陛下に寄り添ってこられた皇后美智子さま。
大きな災害があれば、陛下とともに現地へ赴き、人々を励まされ、先の大戦で亡くなった御魂へは深く祈りを捧げられる。そこから紡ぎ出される歌詞は、国母としての鎮魂の祈りとなって、わたしたちの心の奥深くへと届きます。
また、皇居のお庭で花を愛でられ、季節の風をお感じになり、養蚕をご覧になるといった、日々のなにげない出来事を詠まれた御歌からも、その先には、常に国民の幸福と国家の安寧を願う、皇后としてのお気持ちをうかがうことができます。

皇室ジャーナリストで、美智子さまとも親交がある渡邉みどりさんは「和歌ほど詠む人の心模様が表れるものはありません」と語っています。それゆえに、美智子さまの御歌は人々の心を強く揺さぶる力があるのでしょう。

美智子さまは平成5年、「移居」というお題で、30年以上住まわれた赤坂御所への思いをお詠みになりました。

三十余年君と過ごししこの御所に夕焼けの空見ゆる窓あり

独自の子育てや、自ら台所に立たれてのお料理、陛下と過ごされた楽しい日々……。そうした様々な想いが溢れ出てくるような御歌です。

あれから四半世紀、時代は「平成」から「令和」へと移ります。皇居を離れる両陛下は、港区の高輪皇族邸に仮住まいされた後、この懐かしい赤坂御所(「仙洞(せんとう)御所」へ改称)へ、上皇・上皇后としてお戻りになります。
思い出の詰まったお住まいで、ゆったりと流れるお時間の中、美智子さまがこれからも御歌を詠み続けていかれることは、すべての国民の喜びでもあります。

【監修者 紹介】

山口謠司(やまぐち ようじ)
【Profile】
1963年、長崎市佐世保市生まれ。大東文化大学文学部准教授。博士(中国学)。大東文化大学大学院、フランス国立高等研究院大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員を経て現職。主な著書に『日本語の奇跡』『ん』『日本語通』(以上、新潮社)、『てんてん』(KADOKAWA)、『日本語にとってカタカナとは何か』(河出書房新社)、『日本語を作った男 上田万年とその時代』(集英社インターナショナル)、『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)、『知性と教養が一瞬で伝わる! 一流の語彙力ノート』(宝島社)など多数。『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞受賞。

※ 画像・文章の無断転載はご遠慮ください
構成・執筆:浮島さとし
編集:FASHION BOX
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(参考)

“命がけで嫁ぐ”上皇后美智子さまがご成婚時、御歌に込めた想いとは
出典: FASHION BOX

『美智子さま 心に響くすてきな御歌(みうた) 100選』
監修:山口謠司
編:別冊宝島編集部

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