sweetのフェムテック企画では、おなじみの産婦人科専門医・山村菜実先生が、書籍『子宮を愛してあげよう』を上梓しました。そこで、今回は本についてはもちろん、フェムテックやフェムケアについてお話をお伺いしました。また、本にも書かれている幸せホルモン「オキシトシン」についても語っていただきました!
山村菜実(やまむら なみ)先生
医療法人財団小畑会浜田病院・東京美容クリニック理事長
PROFILE
東京都生まれ。東京女子医科大学医学部医学科卒業後、東京慈恵会医科大学附属病院勤務。産婦人科専門医を取得後、2019年東京美容クリニックを開設、2022年東京美容クリニック理事長就任。産婦人科医としての経験を活かして、婦人科領域の美容施術も行う。2023年日本最古の産婦人科病院、浜田病院理事長就任。女性の悩みすべてに寄り添う丁寧なカウンセリングにファンも多い。プライベートでは2児の母。
オキシトシンと子宮ケアが大人女子を幸せにする!
――今回『子宮を愛してあげよう』という本が出版されました。この本を書くきっかけとなったのは?
「今まで、医師として1対1で患者さんと向き合ってきたのですが、それと同時に性教育やフェムケアの必要性をセミナーや講話などで、多くの方に伝えていきたいと思っています。なので、本という形なら、多くの女性にメッセージを届けられるのではないかという思いで本を執筆しました」
――『大人女子の悩みを解決するオキシトシンと子宮ケア』ということですが、オキシトシンとはなんでしょうか?
「オキシトシンは分娩時に子宮の収縮を促すことで陣痛を誘発したり、出産後に子宮の回復を促す効果のあるホルモン。妊娠・出産に関連する女性特有のホルモンという認識がありましたが、最近ではオキシトシンは老若男女を問わず、すべての人に分泌されることがわかってきました。オキシトシンには、様々な働きがあり、中でも不安を鎮めて安らぎを感じたりポジティブな気持ちになれる効果や、人と人との信頼性を深めていく効果に注目が集まっていて、それこそが、“幸せホルモン”と言われる所以です」
――子宮を大切にすることがなぜ重要なのでしょうか?
「私達、産婦人科医にとって子宮やオキシトシンはとても身近な存在です。その中でも子宮は、赤ちゃんが生まれてくる場所で、人にとって最初の“おうち”的存在。そこを大切にできないということは自分を大切にできないということだと思うんです。人間社会でも、愛されている環境で生きるのとそうでない場合でも、考え方や行動に差が出てくるもの。愛されている人は、常に安心感に包まれているので、前向きになれるし自分の魅力の火がたかせ方も知っている。そう考えると、子宮を愛するということは自分自身を愛することでもある。また、子宮はからだの真ん中にあるので、そこを常に意識することで姿勢を正すこともできるんです。なので女性は常に、自分が生まれてきた場所である子宮を意識し慈しむことが大切だと皆さんに知っていただきたいと思っています」
――オキシトシンに関しては?
「オキシトシンも出産するときには必要不可欠なホルモン。生命の誕生には必須なものです。それがさらに、自分を幸せにしてくれる効果もあるのだから、多くの人にオキシトシンの重要性を知っていただいてオキシトシンを上手に分泌させて、より幸せな人生を送ってほしい。そんな思いで、オキシトシンも、この本のキーワードとして挙げさせていただきました」
――本の中では、子宮を愛するため、オキシトシンを増やすための様々な方法が紹介されています。ぬいぐるみを抱きしめるとか、小さな幸せがオキシトシンを増やす秘訣なんですね。
「そうなんです。日常でちょっとした幸せを感じたときにオキシトシンが分泌されるので、小さな幸せを日々感じることも大切です。例えば『幸せ』って口に出しているといつの間にか、本当に幸せになっているように、ちょっとしたことを意識することが大切。私自身『私って幸せ』ってよく言うようにしているのですが、そうすると気持ちまで軽くなってくる。逆にネガティブな言葉を使っていると、気持ちもそれに引きずられてしまうんですね。なので、『今、私、幸せホルモンがいっぱいでてるわ』と意識しながら生活をすることがオキシトシンを増やす秘訣だと思います」
――sweetでは、フェムテックの企画などから、フェムテックやフェムケアの重要性を紹介していますが、先生自身そういった意識は女性たちに広まっていると感じますか?
「実際に来院される患者さんにもフェムケアなどを意識していらっしゃる方は増えてきていると感じています。私も含め、sweet世代には浸透してきているのかなと感じますが、10代から20代の若い層や、逆に50代、60代以上の世代には、まだ届いていない部分も多いように感じています。特に年齢が高い方に関しては、『生理もないし更年期だから仕方がない』と決めつけて諦めている方が多い印象です」
――sweet世代でも、やはり友達や家族、恋人とそういった会話をする機会は少ないので、自分から積極的に情報を集めないと、なかなか意識は変わってこないのかなと思います。
「そうですね。今はネットや雑誌、本など様々なものから知識を得られる時代だからこそ、自分自身で積極的に情報を取りに行く姿勢が大切かなと思います」
――この記事もネットでの掲載となりますが、ネットに関していうと正しい情報と間違った情報が入り乱れている印象もあります。正しい情報を手に入れるために知っておくべきことはありますか?
「ネットなどで幅広く知識を取り入れることはとてもいいことだと思います。ただ、やはり正しい情報かどうかを見極めるとはとても難しいので、信頼できるかかりつけ医のような医師の存在が大切なんじゃないかと思います」
――本の中では“フェムキュア”の重要性についても解いています。フェムキュアとはどういうことなのでしょうか?
「フェムケアは自分でできるセルフケア、フェムキュアとは医療で問題を解決することです。普段のケアではなく、なにか気になることがあったら、自己判断に頼らず専門医の診察を受けることが大切です。やはり女性でも婦人科や美容婦人科にハードルの高さを感じている人も多いと思います。やはり先生との相性もあると思うので、ちょっと違うかなと感じたら、他の病院にも行ってみるなどをしながら、自分にあった医師を見つけていただきたいですね」
――美容婦人科で行える施術はどんなものがあるのでしょうか?
「それぞれの美容婦人科によってメニューは変わってきますが、HIFU(ハイフ)による女性器のエイジングケアや、VIO脱毛、膣縮小、小陰唇縮小などがあります。現在は日本では保険適用外のものが多いのですが、今後はヨーロッパのように保険適用内で受けられるものも増えていくと思います」
――sweet世代の大人女子が心もからだも健やかでもっともっとキレイになるためのアドバイスを頂きたいです。
「30歳前後って、社会に出ていろいろなキャリアを積んできた世代で、これからまだまだいろいろなことがたくさん起こると思うんです。また様々なライフステージで、結婚するのか、子どもを生むのかなどたくさんの選択をしていかなければならない。それに伴って、自分では想定していなかった変化も起こってくるもの。例えば、子どもを作ったことによって、友達などの人間関係が変わることもあります。だからこそ、自分を愛する気持ちを大切にしていただきたい。その気持さえあれば、何が起こってもきっと乗り越えていけるはず。そして、自分だけ幸せになってもつまらないので、自分と同じように周りの人のことも愛せるようになったら、いい幸せの連鎖が生まれていくと思います」
『子宮を愛してあげよう
大人女子の悩みを解決するオキシトシンと子宮ケア』
現代書林¥1,540
幸せホルモン「オキシトシン」を増やすことが幸せにつながるをキーワードに、オキシトシンの増やし方や簡単なセルフケアを紹介。さらに産婦人科医の視点から、女性特有の相談しづらい悩みをフェムケアとフェムキュアで解消する方法をわかりやすくまとめています。
TEXT_REMI SATO