突然死の約6割が心筋梗塞などの心臓の病気によって起こるといわれています。そのリスクを減らすために、動脈硬化を防ぎ、血管を若返らせる生活習慣を身につけましょう。しなやかで強い血管をつくるには、血管の修復とメンテナンスが行われる睡眠の時間がカギ。質の高い睡眠がとれれば、体も血管も若返ります。
教えてくれたのはこの方
新浪 博士(にいなみ・ひろし)先生
1962年、神奈川県出身。1987年、群馬大学医学部卒業後、東京女子医科大学大学院修了。同年、東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所に入所。アメリカ・ウェイン州立大学、オーストラリア・アルフレッド病院、オーストラリア・ロイヤルノースショア病院への留学で心臓血管外科の研究と治療に従事する。帰国後、東京女子医科大学心研循環器外科医長、東京女子医科大学心臓血管外科助教授を歴任。2004年に順天堂大学 医学部心臓血管外科助教授に就任し、当時の天皇陛下(現在の上皇)の心臓手術を行った天野篤教授のパートナーとして活躍。埼玉医科大学 心臓血管外科教授を経て、2017年より東京女子医科大学 心臓血管外科の主任教授に就任。現在、年間300症例もの心臓血管外科手術を手がけている。
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睡眠時のホルモンで血管も修復されている
疲れた脳や体のダメージを回復させてくれる睡眠。実は血管も眠っている間にメンテナンスされています。眠っている間にホルモン「成長ホルモン」「メラトニン」が分泌されることで、血管のリカバリーとメンテナンスを行っているのです。
眠りを誘うホルモンであるメラトニンは、朝日を浴びると、15~16時間後に分泌が始まるようにセットされます。そして、再び朝日を浴びるとリセットされます。一方、体をリカバリーする成長ホルモンは、眠りについた3時間後に分泌量がピークを迎えます。この2つのホルモンの分泌が重なり、相乗効果が得られるもっとも理想的な夜11時〜朝7時の間に質の高い睡眠をとることで、血管がいい状態に保たれます。
睡眠前の入浴に2つのうれしい効果
睡眠前に入浴するだけで、一酸化窒素が出るだけでなく、体の修復&メンテナンスが効率的に行われるようになります。
1. 血流量増加で一酸化窒素を分泌
入浴によって血管が拡張して血流がよくなります。これによって、血管をしなやかにする一酸化窒素が分泌されます。
2. 血管修復&メンテの準備が整う
入浴をすることで、戦闘モード(交感神経優位)から休息モード(副交感神経優位)に切り替わります。これにより、末梢血管まで血液が巡りやすくなります。
眠る前の入り方
□ 38〜40℃のぬるめの湯
□ 心臓に負担がかからない半身浴
注意点
□ 入浴前後に水分をしっかり摂る
□ 寒い日は浴室と脱衣所に温度差をつくらない
入浴で休息モードになり、血管メンテの環境が整う
質の高い睡眠を得るには、入浴が大事です。湯船につかることで、交感神経が優位の戦闘モードから、副交感神経が優位の休息モードへ変わるからです。
人の体には交感神経と副交感神経があり、スイッチを切り替えるようにして、血液を調整しています。交感神経が優位な日中は、戦うために重要な臓器や筋肉のある体の中心に血液を集めます。一方、副交感神経が優位になる夜は、メンテナンスのために、末梢の毛細血管まで血液を流します。そして、酸素や栄養、ホルモンなどを体のすみずみへ送って、体を修復・メンテナンスするのです。
いずれにしても睡眠時間の前に入浴すれば、血流量が増えて一酸化窒素が分泌されるので、血管にはメリットしかありません。入浴時は、心臓に水圧の負担がかからないよう半身浴を。睡眠を妨げる交感神経を刺激しないよう、ぬるめの湯に入るといいでしょう。
(抜粋)
TJ MOOK『心臓血管外科の名医が教える切れない! 詰まらない! 血管ほぐし』
監修:新浪博士
編集・原稿:油野 崇、奥津圭介
イラスト:石山綾子
写真:小島 昇(小島昇写真事務所)
WEB編集:FASHION BOX
(TJ MOOK『心臓血管外科の名医が教える切れない! 詰まらない! 血管ほぐし』)
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