【温泉旅館「界」でご当地文化体験①】「界 長門」で赤間硯作りを体験

書家・華雪さんが訪れたのは、〝神授の湯〟と伝えられる山口県・長門湯本温泉。歴史ある温泉地には、伝統工芸「赤間硯」があります。古来より湧く湯に癒やされ、伝統の凄みに魅せられる旅の始まりです。

今回の旅人

書家  華雪(かせつ)さん

京都府生まれ。1992年より個展を中心に活動。 〈文字を使った表現の可能性を探る〉ことを主題に、国内外でワークショップを開催。書籍の題字なども多く手掛ける。

 

 

最古の温泉郷。川の畔に佇む旅の拠点へ

涼やかな風が渡る音信川(おとずれがわ)の両側に、宿が立ち並ぶ長門湯本温泉。山口県の西北部に位置し、美しい日本海の景色が広がる、のどかな場所です。ふだんから着物を着ることが多いという書家・華雪さんもすぐに湯の街の風情に溶け込みます。山口県最古の温泉地で、江戸時代には歴代の藩主が湯治に訪れたというこの地に、今回の旅の拠点となる温泉旅館「界 長門」があります。

本陣としても使われた、藩主の御茶屋屋敷をコンセプトに、武家文化を感じる設えが現代の建築とうまく融合。快適な寛ぎ空間が広がります。なかでも地域の文化を取り入れた客室「ご当地部屋」は、藩主が休む寝台をイメージした設えに、徳地和紙、萩焼など、山口県の伝統工芸が配され、土地の魅力を感じる工夫が随所に。一気に旅情に誘われます。

「界 長門」のロビーからは、音信川の風景と豊かな緑を一望。地元作家の陶芸作品なども飾られ、和モダンな空間。「界 長門」のロビーからは、音信川の風景と豊かな緑を一望。地元作家の陶芸作品なども飾られ、和モダンな空間。

山口の武家文化を取り入れた露天付きの「長門五彩の間」。山口の武家文化を取り入れた露天付きの「長門五彩の間」。

山口市の無形文化財、徳地和紙をベッドボードに使用するなど華やかな雰囲気。山口市の無形文化財、徳地和紙をベッドボードに使用するなど華やかな雰囲気。

新旧旅館が立ち並ぶ長門湯本温泉。「鄙びているけれど歩きやすい温泉街です」と華雪さん。新旧旅館が立ち並ぶ長門湯本温泉。「鄙びているけれど歩きやすい温泉街です」と華雪さん。

現代の快適さを持ち合せた空間で古と変わらぬ湯に浸かる

藩主を癒やした湯は、強めのアルカリ性で、化粧水のような成分の泉質。大浴場には湯温が高い「あつ湯」、低めの「ぬる湯」がある内風呂と、露天風呂が。「肌がすべすべしてくるような湯ざわりで、ゆっくり浸かることができました」と華雪さん。地元の旬の食材を生かした夕食は半個室の食事処で。萩焼や桶など、意匠を凝らした器で供される「宝楽盛り」など、目にも楽しい料理の数々を味わった後は、番傘や灯篭を借りて、夜の温泉街をそぞろ歩き。ライトアップされた竹林の階段や川に架かる橋は、明るい時間とはまた違ったしっとりとした趣で、旅の夜を静かに照らしてくれます。

宿泊者以外も利用できる「あけぼのカフェ」。川床テラスでいただくのも気持ちいい。宿泊者以外も利用できる「あけぼのカフェ」。川床テラスでいただくのも気持ちいい。

山口県オリジナル柑橘「ゆずきち」や夏みかんのジャムを使ったどらやきが楽しめる。山口県オリジナル柑橘「ゆずきち」や夏みかんのジャムを使ったどらやきが楽しめる。

夕食の特別会席。手の込んだ八寸やお造りを盛り合わせた「宝楽盛り」など山口県の名産、ふぐの薄造りなど、地元の食材が満載。夕食の特別会席。手の込んだ八寸やお造りを盛り合わせた「宝楽盛り」など山口県の名産、ふぐの薄造りなど、地元の食材が満載。

暗くなると温泉街のあちこちがライトアップされ、浴衣で歩けば雅な雰囲気。暗くなると温泉街のあちこちがライトアップされ、浴衣で歩けば雅な雰囲気。

大浴場の温泉はアルカリ性単純温泉。神経痛や筋肉痛、冷え性、疲労回復などの効能が。湯上がりにはご当地ドリンクも用意。大浴場の温泉はアルカリ性単純温泉。神経痛や筋肉痛、冷え性、疲労回復などの効能が。湯上がりにはご当地ドリンクも用意。

 

伝統工芸「赤間硯」職人の技に触れ、戯れ、作るご当地体験

界のもうひとつの特長は、日本各地の伝統工芸、文化を体験できること。ここ長門では、山口県の伝統工芸「赤間硯」に触れることができます。硯で墨をすり、扇形の型紙に文字を綴る「ご当地楽 おとなの墨遊び」、「手業のひととき~赤間硯職人と行う硯づくり体験」も開催。800年以上の歴史を持ち、連綿と受け継がれながら、現在ではその職人はわずか3名という希少な工芸を間近に見て、触れ、教わりながら硯を仕上げていきます。「今まで感覚的に選んでいた硯ですが、自分で掘ってみると、なぜ使いやすいのかがよくわかります」と華雪さん。

墨をすり、書く楽しみを味わう

「おとなの墨あそび」はスタッフから赤間硯の歴史や特徴などを聞きながら墨をすり、文字をしたためる。「硬い印象だったけれど、するとやわらかい」と華雪さん。赤間硯は粒子が細かく、よくすることで発色や伸びがよい墨汁に。立ち上る墨の香りにも癒やされる。

墨をすり、一筆一筆、何かを感じ取るように筆を下す華雪さん。

「『晶』の字はキラキラと光るものを意味します。この旅の印象を重ねました」(実際の体験では旅館が用意した紙を使用)。

職人の技を体感し、自分だけの硯を作る

現存する3人の作硯家のひとり、日枝陽一さん。採石から型作り、彫り、磨き、仕上げまでほぼひとりで行う。

30cmほどもある大きなミノを使い体で押すようにしながら彫っていく。

水をつけながら砥石で磨きをかけ仕上げへ。

「墨をする『陸』と墨がたまる『海』の深さのバランス、石の硬さと墨の相性など、彫っていたら自分が使いやすいと感じる理由がどこにあるのか、よくわかりました」(華雪さん)。

 

1月からは 「萩焼作家と行う自分だけの手びねり体験」が始まります

今年の「赤間硯職人と行う硯づくり」は残念ながら既に終了していますが、代わって1月からは「萩焼作家と行う自分だけの手びねり体験」が始まります「界 長門」でも使用している器などを手がける萩焼作家、坂倉善右衛門さんから直接手ほどきを受け、自分の作品を制作する貴重な体験をぜひ!

期間:2024120日~218日の土日 時間:10:0011:00(体験は滞在日2日目)料金:1 名¥10,000 (税込、宿泊費別)定員:15名まで(1名より催行)

予約:公式サイトにて前日20:00までに要予約

 

界 長門

山口県長門市深川湯本2229-1 1泊32,000円~(2名1室利用時1名料金)税・サ込、夕朝食付きJR新山口駅より車で約70分、山口宇部空港より車で約70分 ☎︎:050-3134-8092(界予約センター)https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kainagato/

information

星野リゾートが運営する温泉旅館ブランド「界」。現在全国22か所に展開し、「王道なのに、あたらしい」をテーマに、快適な和の空間、その地域や季節ならではのおもてなしを用意。地域文化を楽しめる特別なサービスも提供しています。

 

構成・文/大人のおしゃれ手帖編集部 撮影/山本康平
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

RELATED CONTENTS

関連コンテンツ