月経痛や婦人科系の疾患は、女性なら誰でも起こりうることです。
女性の社会進出が増え、未婚や出産しないという選択をした人も多い現代。更年期の症状や閉経後にかかりやすい病気に影響はあるのでしょうか。
今回、女性のための統合ヘルスケアクリニックで多くの更年期の女性の診療にあたっている産婦人科医・高尾美穂先生にお話を伺いました。
出産経験の有無で閉経時期や更年期症状は変わる?
仕事や趣味を思いきり謳歌してきて50代に突入したという人も多い、『大人のおしゃれ手帖』世代。自分自身はまだまだ元気だと思っているけれど、アクティブなだけに心や体にどんな症状が現れるかが心配という人も多いよう。
「閉経の時期や更年期の症状に、出産経験の有無は関係ありません。
また、初潮が早かったから閉経が早いということも、月経痛が重いから更年期の症状も重いということもありません。
それよりも、生活習慣や環境のほうが大きく影響します。十分な睡眠時間が確保できていない人ほど、更年期症状が重めな傾向に。また、睡眠時間が足りておらず睡眠負債を抱えてしまうと、「更年期うつ」のような心の不調にもつながりやすいと思います。
「更年期うつ」は、運動などの体を動かす習慣がある人ほど起こりにくいこともわかっています。継続できるような運動をしてしっかり眠ることが、大人の心と体を穏やかに保つカギになります。
出産経験がなくても産婦人科への通院はあり?
世の中には、産婦人科と婦人科、レディースクリニックなどの女性外来がありますが、違いはあるのでしょうか。
「自分は出産を経験していないから産婦人科では門前払いされるかも……なんてことはありません。「産科」「婦人科」と明確に分かれているところ以外基本的には、産婦人科でも婦人科的な診察や検査はしてくれます。
レディースクリニックは婦人科をメインに扱っているところが多いですが、女性のみ受診できる内科を併設していたり、女医のみで対応してくれるところなどがあります。
ちなみに、大学病院とクリニックでの経験がある私の見解からすると、更年期の相談や個人個人の症例の詳細を持っているのは、クリニックの方かなと思います。気軽に相談できる環境が整っていますし、待ち時間も少ないですし(笑)。
年齢と共に少なくなるホルモン・エストロゲンを補う治療「ホルモン補充療法」や、更年期の症状を包括的にケアする「漢方」などの処方も、街のクリニックをかかりつけにすることで、細やかな症状の変化にもすぐに対応してくれますよ」
家族の有無は更年期症状の現れ方に関係はある?
更年期を乗り切るには、まわりの人の理解が必要と聞いたりしますが、うまく乗り切るのに家族の有無は影響するのでしょうか。
「家族がいればわずらわしく感じることもあるだろうし、一人なら孤独感にさいなまれるかもしれないし、どんな環境でもメンタル的にマイナス傾向になることは十分にありえます。
私は、がまんすることが女性自身を苦しめているとも思うのです。自分では気づいていないかもしれませんが、家族のために自分の何かをがまんしていた、仕事の成果やキャリアアップのために何かを犠牲にしていた、なんてことはよくあることです。
なので、家族や仕事関係以外のところで共通の趣味を持つ仲間のような新しい交友関係を構築しておくのはいいと思います。
今は人生100年時代。新たな出会いや環境を整えておくことで、晴れて更年期が終わったときに、新しい人生が切り開けるかもしれませんから。
これから成し遂げたいことや楽しみたいことなど、少しでも前向きになることを考えることは、ただでさえ沈みがちな気持ちを高めるにはいいこと! これまで十分がんばってきたのですから、自分を十分認めてあげて、自分のことだけを考えてあげるのはプラスに働きます」
教えてくれたのは高尾美穂先生
産婦人科医・医学博士・スポーツドクター。
女性のための統合ヘルスクリニック「イーク表参道」副院長。
文部科学省・国立スポーツ科学センター 女性アスリート育成・支援プロジェクトメンバー。
長年ヨガを愛好し多くのヨガインストラクターを指導。
YouTube「産婦人科医 高尾美穂からのリアルボイス」では毎日、女性のお悩みに答え、楽に生きられる考え方を配信している。
取材・文/大人のおしゃれ手帖編集部
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください