在宅ワークが増え自宅のデスクに座りっぱなし、夏は暑いからシャワーでさっと入浴を済ませる……実はこれらの生活習慣も、女性の体の悩みを引き起こしているみたい! そこで、婦人科系の悩みにもくわしい石原新菜先生にお話を伺ました。この夏は生活を見直して、健康的に過ごしましょう。
教えてくれたのは…
石原新菜先生
医師・イシハラクリニック副院長。2000年4月帝京大学医学部入学。2006年3月に大学卒業後、同大学病院で2年間研修医として経験を積む。現在は、父・石原結實のクリニックで主に漢方医学、自然療法、食事療法によって、さまざまな病気の治療にあたっている。クリニックでの診察のほか、親しみやすい人柄で、テレビなど多くのメディアでも活躍中。
□仕事中に気をつける2大ポイント
①座りっぱなしはN G
「イスに座るときは、ソケイ部のところで脚が曲がり、直角の状態になります。そうすると太い動脈や静脈を圧迫して巡りが悪くなり、むくみやすくなります。1時間〜1時間半に1回、立ち上がって、屈伸やスクワット、もしくは少し歩くなど、体を動かしたほうがいいですね。壁に向かって手をついて腕立て伏せをするのもいいと思います。在宅ワークが増えた人におすすめです」
②冷え対策をしっかり
「夏は冷房を使ったり、冷たいものを飲んだりしがち。それで体が冷えることで全身の血流が悪くなり、いろんな臓器の働きも落ちていきます。特に女性は生理痛が強くなったり、生理不順になりやすい。外は暑いけど室内は寒いから、実は冬よりも夏の方が体調を崩す女性って多いんです。だから冷え対策をしっかりと。熱中症対策のためにも冷房は適宜使うべきですが、冷えない格好でいることが大事。薄手のカーディガンを羽織ったり、靴下を履いたり、ひざかけを使うのもいいでしょう。冷房のきいた室内では温かいものを飲んだりすれば、そこまで体は冷えないはず」
□生活の中での見直しポイント
・眠りに入る環境を整える
「体を休めることは、フェムケアに限らず健康な体を保つために大切なこと。寝る1時間前くらいから、照明を間接照明にしたり、パソコンやスマホはあまり見ないように。光刺激が加わると、睡眠に必要なメラトニンというホルモンの分泌が抑えられてしまいます。すぐに眠れるという人はいいですが、なかなか眠れない人は、眠りに入る環境を整えるのが効果的だと思います。寝る前の時間でストレッチや腹式呼吸をしたり、アロマを焚いたりするのもいいですね。リラックスできる音楽をかけて過ごすとか、ゆったりする時間を1時間ぐらい作っておくといい睡眠につながります」
・入浴はちゃんとお湯に浸かる
「いい睡眠をとるためにも、入浴時は必ず湯船に浸かりましょう。長く入る必要はなく、40°くらいのお湯に10分程度で大丈夫です。体が温まることで、子宮や卵巣を含めて全身の血流もよくなります。女性ホルモンがきちんと分泌されるので、生理痛が軽くなることも。あとはお湯に浸かることで水圧が体にかかり、むくみもとれてきます。リラックスする効果もありますし、夜ぐっすり眠れると思います」
・温活を心がける
「血流をよくするためにお腹を冷やさないようにしたほうがいいので、私は腹巻きをおすすめしています。不調というものは、血流が悪いと起こることが多いんです。肩こりもそうですし、胃腸の消化不良、便秘や下痢も、その臓器がちゃんと働けていないから、症状が起こります。すべての臓器にちゃんと働いてもらうには、血液が運んでくれる栄養や酸素、水が必要です。また、いらなくなった老廃物を排除するのも血液なので、とにかく血流をよくしないと、いろんな臓器で不調が起こります。卵巣は女性ホルモンを分泌するところなので、卵巣に栄養などが届かないと正常に働かなくなり、生理不順を起こしやすいのです。体、特にお腹を温めて血流をよくするようにしましょう」
Check!
血流の悪さがPMSにつながる!
PMS(=月経前症候群。生理痛など、生理前に起こる体や心の不調)で悩んでいる人は、血流の悪さがひとつの原因。湯船にしっかり浸かり、腹巻きをするなどして体を冷やさないようにすることが対策になります。適度な運動、特に下半身を動かすウォーキング、ランニング、スクワットが効果的。足腰を動かすことで、下半身の血流がよくなります。子宮や卵巣も下半身の臓器だから一緒に巡りがよくなるので、下半身を重点的に運動するのがおすすめ。
ウォーキングやランニングは、1回20分くらいが目安。会社まで歩く、帰宅の際に歩くでもOK。毎日が理想ですが、週3回くらいでも十分効果は期待できます。
さらに、運動を習慣化すると体力がつくので、今までと同じ仕事量でも疲れにくくなります。運動をすることで、女性でも男性ホルモンが分泌されるので、ストレスに強くなったり、一日に受けるいろんなダメージが少なくなるのだそう。代謝が上がって筋肉がつき、それだけではなく、メンタル面にもいい効果があるといえます。
☆ストレスを忘れる時間を作りましょう
ここまでお話を伺ってきましたが、一番気をつけるべきことはストレスを抱えることだと話す石原先生。「ストレスがかかっていると、交感神経が優位になってしまいます。交感神経が優位になるとアドレナリンが出て、血管が縮んでいきます。その状態が長く続くと血流が悪い状態になるので、冷えの原因に。それこそ子宮や卵巣も含めてさまざまな臓器の不調を引き起こします」。暮らしの中で、オンオフの切り替えをすることでストレスから解放されていくのだそう。「そこで、平日と休日でしっかり気持ちを切り替えたり、自分の好きなことを楽しむ時間を作りましょう。漫画を読む、カラオケに行く、ヨガをする、お風呂やランニングでもなんでもいいです。マインドフルネス(=自分の心に集中する)といいますが、ストレスを忘れる時間を少しでも作れればいいと思います」。仕事で忙しいとつい自分のための時間を忘れてしまいますが、一日の中で休息や楽しむ時間を見つけていきましょう。
取材・文/弓削桃代
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