午後から夕方にかけて、つらい症状が強く出てくるのが下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)の特徴。重症化する前に、体が発する違和感を見落とさないことが大切です。
教えてくれたのはこの方
静岡静脈瘤クリニック院長
佐野成一(さの・なりかず)先生
2003年、聖マリアンナ医科大学医学部卒業。2005年に東京慈恵会医科大学病院形成外科に入局し、2009年から岡山大学病院形成外科・リンパ浮腫治療班に加わる。2013年には東京医科歯科大学血管外科にてリンパ浮腫専門外来開設に尽力。2016年、地元である静岡に静岡静脈瘤クリニックを開業、リンパ浮腫と静脈瘤の専門医として治療に当たる。東京医科歯科大学血管外科・非常勤講師、リンパ浮腫療法士、日本医療リンパドレナージ協会認定セラピスト。監修書に『自分で治す下肢静脈瘤の本』 (宝島社) がある。
【オススメ記事】
更年期障害の予防にはアーモンド!? 病気を防ぐ食材まとめ
更年期とともにやってくる!? 実は40代から増える関節痛ってどんな病気?
軽度の下肢静脈瘤は体の違和感で見つける
下肢静脈瘤の自覚症状として誰もが思い浮かべるのは、足のグネグネした血管や、ボコボコとしたコブだと思います。けれども、まだコブができるほどではない軽症の場合や、コブなどができにくいタイプの場合は、いくらじっくり足を見ても静脈瘤を見つけ出すことはできません。しかし、やっかいなことに見た目の問題がなくても、実は皮膚の下で着々と静脈瘤が進んでいることも多いのです。
そうした静脈瘤を見つけるのは、見た目よりも体で感じる自覚症状のほうが頼りになります。思っている以上に体は初期の段階からSOSを出しているものです。
「1日歩きづめだったから足の疲れがひどく、年のせいかむくみも取れにくくなった」「かぶれているわけでもないのに足首のかゆみが治らない」……など、もしかしたらそれは、足の静脈からのSOSかもしれません。
おもな自覚症状であるむくみ、重だるさ、かゆみ、しっしん、こむら返りといった足の違和感の中に隠れている下肢静脈瘤の初期症状を見逃さないようにしてください。
見た目
下肢静脈瘤のもっとも代表的な症状は、変化に気づきやすい血管の膨らみです。すねやひざの後ろ側、ふくらはぎの内側と外側などの血管が太くなって蛇行したり、盛り上がってコブのようになることがよく知られています。また、くるぶしまわりなどの毛細血管が拡張して青色や赤紫色に透けて見えるようになっている場合もあります。いずれにせよ見た目がよくないので、それを気に病む人が多い症状です。足の状態を確認するときは、全身が映る鏡を使ってください。下肢静脈瘤は足の後ろ側に発症することも多いので、足全体をていねいに確認していってください。
血管が浮き出ていないか、コブはないか、皮膚がデコボコしていないかをチェック。
むくみ
患者の多くが訴える症状です。靴下の跡がくっきりつく、靴が窮屈になって足が痛いといったことが、特に夕方以降ひどくなります。
むくみは簡単にいうと、体の細胞や組織の隙間に血液をはじめとする余分な水分がたまった状態です。通常は毛細血管などの働きによって、体に水分がたまらないように調整されています。ところがなんらかのトラブルによって、それらのバランスが崩れると水分がたまり、むくみが発症します。そのトラブルの一つが下肢静脈瘤です。本来、心臓に戻るべき血液が逆流防止弁が壊れたことで足に滞ってしまい、むくみを引き起こします。血流を悪くさせるふくらはぎの筋ポンプ作用の衰えも、むくみの原因になっています。
むくみチェック
足のすねを5秒ほど親指で強く押します。指跡が白くへこむ、もしくはあまりへこまないが指跡が3秒以上消えない場合は要注意です。
だるさ・重さ
重だるさはむくみと同じで、心臓に戻るべき血液の循環がうまくいかないことが原因となっています。ふくらはぎや足の裏が重たくだるくなる症状は午後から夜にかけて起こることが多く、両足ではなく静脈瘤のある足だけに起こることがほとんどです。通常は足を高くして休み、足にたまった血液の流れをよくすると症状は和らぎます。
かゆみ・しっしん
下肢静脈瘤によって足の血流が悪くなると、皮膚にも悪影響が出ます。血管内に老廃物がたまり、皮膚のターンオーバーやバリア機能が正常に働かなくなるからです。皮膚が新しく生まれるタイミングは崩れ、無防備な状態の皮膚は刺激に弱く簡単に傷つき、その状況に危険を感じた皮膚は過剰に反応するようになり、ちょっとしたことでかゆみや炎症を引き起こすようになります。静脈瘤と関連づけずに皮膚のトラブルとして対処し、悪化させてしまうケースもあります。
ステロイド剤を塗るだけでは治らない。
こむら返り
「こむら」とはふくらはぎのこと。ふくらはぎの筋肉がカチカチに収縮して、強い痛みを伴うけいれんの一種です。激しい運動のあとに起こることがあるため、静脈瘤の症状としてはあまり知られていませんが、静脈瘤では比較的よく起きる症状です。足の血流が悪くなり血液が滞るようになると、足は酸素不足になりけいれんを起こすのです。特に就寝中の明け方に起こりやすく、初期の静脈瘤が中程度の静脈瘤に進行する時期によく起きます。
こむら返り対処法
つった足を伸ばして座る。足のつま先を持って体のほうへゆっくり引っ張り、ふくらはぎを伸ばす。
【オススメ記事】
デリケートゾーンがカユい&臭い……これ病気!? 誰にも聞けない婦人科系トラブルQ&A
健康診断で安心するのは30代まで! 更年期に用心すべき2大がん
(抜粋)
TJ MOOK『足のボコボコ血管・クモの巣状血管がすっきり! よくわかる下肢静脈瘤の本』
https://tkj.jp/book/?cd=TD295774
監修:佐野成一
編集:入江弘子
構成・文:田中絵真、前原雅子
撮影:赤石 仁
モデル:松久准子(オスカープロモーション)
ヘアメイク:岩澤衣里(プラスナイン)
WEB編集:FASHION BOX
(TJ MOOK『足のボコボコ血管・クモの巣状血管がすっきり! よくわかる下肢静脈瘤の本』)
※ 画像・文章の無断転載はご遠慮ください