ナンパは長期的に勝てるゲーム。
ナンパ師・零時レイ×恋愛工学の提唱者・藤沢数希が語る、ナンパ&恋愛のメカニズム(前編)
恋愛だけでなく、ビジネス、コミュニケーション力まで。ストリートナンパであらゆる能力を磨いたと語る零時レイさん。その技術を余すところなく詰め込んだ書籍『ナンパが最強のソリューションである』(宝島社)がいよいよ発売されました。そこで、著書『ぼくは愛を証明しようと思う。』(幻冬舎)で、恋愛を科学的に研究する「恋愛工学」を広めた藤沢数希さんとの対談が実現。実体験と理論から「モテ」のテクノロジーを探求してきたふたりが語る恋愛とは? 前編では、おふたりが感じているナンパの自己啓発力について話します。
(構成・葉月涼)
《目次》
■いきなり強敵が立ちはだかるナンパ
藤沢数希(以下、藤沢) 新著『ナンパが最強のソリューションである』に加え、最初の著書『究極の男磨き道 ナンパ』(BBR)も拝読したんですが、いい本でしたね。
零時レイ(以下、零時) ありがとうございます!
藤沢 『究極の男磨き道 ナンパ』は精神論、『ナンパが最強のソリューションである』は実践編で、セットで読むといい感じになってるんですね。僕が今、『ぼくは愛を証明しようと思う。』を読み返して思うのが、ナンパしようと思っても、なかなか知らない女性に話しかけられず、道端で固まってしまってお地蔵さんのようになってしまう、いわゆる「地蔵」の克服法をあまりにもあっさり書き過ぎてると思うんですよ。
零時 なるほど。
藤沢 ナンパはゲームバランスが非常に悪いんですよ。ロールプレイングゲームだと、最初のうちはスライムを倒したりして、ちょっとずつ成長できるじゃないですか。ナンパでは、初心者が、レベル1の状態でいきなり地蔵というドラゴンと戦って、倒さなきゃいけない(笑)。
零時 たしかに! 地蔵は手ごわいです。
藤沢 地蔵の脱却方法について、いい本はないかとずっと思っていました。零時さんの『究極の男磨き道 ナンパ」は、その経験談なんかについて、失敗なんかもくわしく書いてあって、よかったです。けっこう前に発売されてるんですけど、読んだのは最近なんですが。
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■欧米で鍛えられた
藤沢 零時さんは、フランスに留学経験があるんですよね。
零時 そうですね。
藤沢 僕も欧米に留学していたんです。そのとき初めて、普通に彼女を作るというか、最後までさせてくれる女の人を見つけるのがこんなに大変なのか!と思い知った。向こうだと、日本人男性はぜんぜんモテないんですよね。それでやむにやまれず、半年ぐらいずーっとナンパしていたんですよ。1日10人、20人ぐらいにとりあえず声をかけて。
零時 すげえ! マジっすか!?
藤沢 週4ぐらいでクラブに通っていました。それで、半年経ったぐらいでやっと最後までさせてくれる女の人ができた。僕は男子校出身で、大学に入るまで男女交際なにそれ?みたいな感じだったんですが、大学デビューが順調で、デビュー以降は恋愛相手のインターバルが空いたことは一度もなかったんです。大学時代の勢いがずっと続いていたら、たぶん、恋愛工学も生まれなかったと思うんですけど。しかし、日本人男性は、欧米だと体型がガリガリだし、外国人同士でも英語もだいたい女性のほうができる。日本だとブランド大学で、塾講師とか割のいいバイトもしていて、学生としては遊び金もふんだんにあって、大学生の中ではヒエラルキーがだいぶ上だった。しかし、向こうに行くと底辺になったわけです。大学院生として奨学金をもらってたけど、遊び金まで回らないし、英語で気の利いたことも言えないし。そういう何もブランドがないなかで、自らの肉体とトークだけでやっていかなきゃいけない、という経験をして、もうそれは大変でした。そんな状況では、とにかく数を撃つしかないですよね。
零時 素晴らしい!
藤沢 最初はひとりぼっちだったんですが、パブとかクラブとかでまずは同じ大学に交換留学とかで来ている男友達ができたり。貧乏だから、安い紙パックのワインをまずは友達の家で飲んで、それからクラブに行っていたんです。まあ、楽しかったのですが、だんだんとお酒は体によくないな、あと次の日の本業の研究活動にもちょっと響くな、と感じるようになって、シラフでテンションを上げようと思って、いろいろがんばりました。まあ、初心者は、地蔵が一番の強敵だから、お酒はそれを崩すためのプロセスとしてはいいんだけど。酔拳、みたいな(笑)。でも、長く続けていくというか、週に何回も出撃するには、やっぱり酒はよくないですね。
零時 最初は飲むのもひとつの選択肢かもですが、それをやり出すとナンパするには酒が必要になっちゃうので。シラフが一番ですよね。
藤沢 お酒に頼るのは、ちょっと危険ですよね。性犯罪で捕まる人もいるし、お酒を飲みすぎてハメを外して取り返しがつかないことをしでかすこともありえますしね。
■実は女性は、スペックなんて見ていない
藤沢 「お金持ちが好き」という女性、たくさんいますよね。女性はいろいろスペックのことを言うけれど、実は、出会いの「入り」には、スペックはあまり関係ないんですよ。原始人的な脳の恋愛スイッチが入らなきゃいけないから。
零時 はいはい。
藤沢 1回そのスイッチを入れて乗り越えた後は、スペックが高いほうがめっちゃ有利なんです。交際までいくと。ただ、スペックが高ければ普通にセックスができるかといったら、違うんですよ、これが。
零時 それは感じますね~。俺がナンパ研究所「スパルタ部」で教えているのは、いわば玉ねぎの皮をむくのに似た作業。素の自分を出す訓練です。女性の前で、一番素の自分を出せたら、「その女に影響されていない」ってこと。とくにかわいい子ほど、一番むいたところを出せれば、「今まで私と同レベルの女と、どれだけ普通にヤッてきたのか」と思う。実績を背景として見せられるんです。
藤沢 そうなんですよ! きれいな人に対しては、だいたいの男の人が下からいくんですよね。ただ、下からいくと、男性はきれいな人に対して上手く振る舞えないんですよ。そこでナチュラルに振る舞えると、相手の恋愛スイッチが入りやすくなる。恋愛工学でいうと、Attractionフェーズをクリアってこと。
零時 ほんとそう! 無心で振る舞い、「この子のかわいさに影響されていない」って見せるだけで、反応がぜんぜん違います。「なんで私にビビらないんだろう?」って思うんですよ。 そんで女のほうが不安になり、受け身になる。主導権を取れる。
藤沢 なんかこう、禅の精神世界みたいなんですが、美女の前で精神が落ち着いている状態だと、勝てるというか。
零時 まったくそうなんです!
藤沢 この精神世界の戦いでいうと、実は二段階あってね。ナチュラルに振る舞っていい感じになってくると、おおっ、ときれいな女性からいいサインが来るんですよ。そこで男性が「やったー!」って食いつくと、きれいな女性は逃げちゃうんですよ。もう1回そこで、適当にあしらわないといけない。なんというか、剣術の試合みたいな感じですよね。パン!パン!ってお互いが入っている精神世界で剣を当て合う。
零時 あああ、その通りです!
藤沢 ほんの1、2分の戦いなんですよ。ちょっとイキったり、舞い上がったりしたところを見せただけで、「あ、こいつ、ダメ」と見限られてしまう。
零時 舞い上がるとすぐバレますよね。それと、キモくなるのはダメ。
藤沢 ただ、この剣術のようなプロセスは、ある意味で、女性の人生を不幸にしているんですよね。普通にスペックが高いまともな人って、オドオドしちゃうんですよ。いろいろ考えるし、ある意味で誠実だから。でも、そういった人のほうが、結婚相手としては素晴らしいと思うんですよ。きちんとした人は、この1、2分ぐらいの「剣の戦い」に勝てないんです。そこで勝てる人って、クズな男ばっかりなんですよ(笑)。バカだったり、失うものがないから、ビビらないヤツとかね。
零時 本当にそうです(笑)。
藤沢 だから、すごくきれいな女性って、クズみたいな人と付き合うことが多いです。本当に自分と釣り合うハイスペックな人と付き合う美女ももちろんいるけど、だいたいの人は中途半端なDJとかとくっつく。動じないことだけが取り柄みたいな……。
零時 (笑)。あるレベルまで行くと、美女ほど落とすのは簡単だと思うことがありますね。男性が接するとき、みんな下からいくから、対等に接するだけで、他の男と差がつくんです。
■「あいつ遊んでる」はモテのキラーフレーズ
藤沢 剣術の試合なんですが、人生の中で、たまに会心の一撃が決まるときがあるんですよね。僕がそれを生まれて初めて経験したのは、大学2年生ぐらいのときかな。
零時 おお!
藤沢 最初にお話ししたように、僕は男子校出身だったけど、大学デビューは順調でした。テニスサークルで、チャラい生活を送っていたんです。サークルの外で基本的にがんばっていたんですが、単純だから、「この人たちのコミュニティでは、モテたら仲間から褒められるんだ」と思って、サークルの中で同じことやったら、めっちゃハブられた(笑)。で、サークルの人たちから、男女問わず「彼はちょっとヤバいよ」と言われたりして。
零時 「ヤバい」と言われるのは、ある意味素晴らしい!
藤沢 学園祭のとき、僕はそのサークルでフランクフルトとか売っていて、そのときに、めっちゃきれいな子が歩いていたんです。今思い出しても、アイドルとかよりぜんぜんかわいい。で、その子にセールスに行きつつ、ナンパしようとしたら、そしたら、僕のことを悪く思ってるサークルの人たちが集まってきて、「この男には、絶対に電話番号教えちゃダメだよ」とわざわざそのめっちゃきれいな子に言うわけですよ。そんで、僕は、ふっ、と余裕ぶっこいて笑って、その忠告を聞いているそのめっちゃきれいな子に、「大丈夫だよ、君の期待は裏切らないから」と、まるで彼女が連絡先を聞かれることを期待しているかのようなセリフを、なんか自分でも信じられないんですけど、マグレで自然と落ち着き払って吐いたら、その偶然の剣のひと突きが、めっちゃグサッと刺さったみたいで……。その女性とは、2年ぐらい付き合いました。
零時 藤沢さんが置かれた状況は、ある意味ピンチですよね。せっかく上手く会話が始まっていたのに、知り合いがわざわざ悪口を言いにくるのは普通に考えたら逆境です。でも、その逆境をものともしない100点の態度が取れれば、評価が激上がりします。マイナス100点からの100点みたくなる。振り幅は200点です。悪い注目が集まっている状況をむしろ利用するわけです。悪口を言う人たちは舞台設定をしてくれたぐらいのものになる。
藤沢 ナンパしていると、大学のテニスサークルなんて典型なんですけど、日本のコミュニティでは悪い噂が立つんですよ。そういう男が、知り合いの女性にアプローチをすると、それを疎ましく思っている男が、「あいつは絶対遊んでいるからやめたほうがいいよ」とか忠告するの。でも、この「あいつ遊んでるから、やめたほうがいいよ」は、実はめっちゃキラーフレーズ。こう言われることで、逆にめっちゃモテるんですよ(笑)。
零時 ある意味、嫉妬してるってことですから。宣伝してくれているようなもんですよね。
藤沢 そう、宣伝してくれてるようなもんなんです! 要するに女性は、いろんな女性と遊んでいる、遊べている男性に惹かれるもの。結果、モテる女の人は、クズな男性をつかんでしまう。僕は一度、そういう理論的背景を説明して、クズとくっつかないよう、知り合いの女の人を変えようと思ったことがあったんです。それは不可能でした。女の人は、どんなときでも自分の気持ちで動くから。
零時 それは感じますね。
■自分を「売る」ナンパは一番きつい営業
藤沢 ナンパって、営業として考えたら、一番きつい営業じゃないですか。ドブ板営業というか(笑)。しかも、売るのは他人が作った商品じゃなくて、自分自身。拒否されたときの傷つき方も違うんですよ。でも、その大変さを乗り越えればだいたい何でもできますけどね。
零時 ほんっとそうですよね。とくにストナン(ストリートナンパ)は、ハードルが高い。そのぶん、自己啓発性も一番高いですね。ストナンをやっていると、他の活動のハードルが全部下がるんですよ。英語を勉強したり、読書をしたりすることが、「こんなに楽をしていていいのか!」と思えるようになる。起業さえ、ナンパに比べればハードルが低い。ナンパをしていない時間を充実させようって気持ちになるし、今までつまらなかったことが、めちゃくちゃおもしろくなります。
藤沢 ストナンでは、いわゆるスペックなんて役に立たないんです。「俺はこんな会社に勤めていて~」と言っても証明しようがないし、上手くいかない。僕が留学先で、何も持っていないけれど、この身ひとつで外国語で初めて女の人をゲットできたとき、もう世界中どこに行ってもやっていけると思いました。まあ、僕の男友達は、その僕にとってはすべての始まりだった女神のような女性を見て、ブス、ブスと言ってましたけど(笑)。
零時 ストナンできると、「何やったって死なねーだろ」と、どっかで開き直れるんですよね。
藤沢 ストナンなんて、成功よりも失敗のほうがはるかに多い。罵倒されることもある。ただ、そこでみじめな思いをたくさんしておくことは、心の筋トレになるんです。ストナンで鍛えておくと、たまにホームパーティーなんかに呼ばれたりすると、これが楽勝なんですよね。「こんなきれいな女性が、向こうからフレンドリーにしゃべってくれる!」って。
零時 普通に人扱いされると、すっげーうれしかったりしますよね(笑)。ただ、ずっとホームパーティーのようなぬるい場所に行っているとなまるので、またストリートへナンパしに行きます。ただ、ストナンは基本的に相手から下げられる場。そればっかりやっていると、ちょっとおかしくなってくることも……。
藤沢 ストナンはハードルが高いだけに、やっぱり、最初に成功体験が必要なんですよ。やり始めて1、2か月のうちに成功体験がないと、やめてしまうと思うんです。
零時 最初の成功体験は重要ですね。そこはギャンブルと同じかな。
藤沢 そう。ただ、ギャンブルは長期的には必ず負けてしまうから、最初の成功体験の味をしめないほうがいいです。でも、ナンパは長期的に勝てるゲームです。
零時 出撃すればするほど、長期的には勝てますよね。
藤沢 ただ、僕も零時さんも、もうけっこう年ですね。ストナンは若い人のゲームだな、と思うこともあります。まあ、ペンネームの僕は、本も売れたり、インフルエンサーみたいになっちゃって、チヤホヤされる部分がある。それこそ、ホームパーティーとか行くとね。でも、ひとりの無名のおっさんとしてストリートで、普通の女の子に罵倒されたりして、何もない自分の価値を確かめる、みたいなことが尊いんです。だから、まだ、たまにストナンに出ているけれど、ヒットレシオ(成功する確率)は、やっぱり20代、30代だったときのほうがだいぶ高い。今は、どうかっこよく年をとるかもひとつのテーマですね。
零時 若いうちは、そんなに技術が高くなくてもイケるんですよね。でもそれだけだと、年々、ヒットレシオは下がってくる。どう技術を上げるかにシフトしてきますね。それはそれで、今しかできないことなのかな、と思います。
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(参考)
『ナンパが最強のソリューションである』
著者:零時レイ
(宝島社)
「モテ、コミュ力、仕事での交渉力。すべての悩みはナンパで解決する!」。5年間のひきこもりを経て、33歳のときにナンパに出合い、その自己啓発力に気づいた著者。すご腕ナンパ師たちの技を、心理学、行動経済学、NLP(神経言語プログラミング)などをもとに体系化し、誰でも習得可能な形にして伝授。実体験を交え、ナンパのタイプ別にわかりやすく解説する。