滋賀県といえば日本最大の湖・琵琶湖をはじめ、特産品の鮎やシジミ、そしてご当地キャラの「ひこにゃん」など、たくさんの魅力に溢れた県として知られている。そんな滋賀県の知られざる特徴が「名字」だ。一見なんと読むのかわからない“難読名字”や“珍名字”が全国の中でもひときわ多い、そのルーツなどを姓氏研究家の森岡浩さんに伺った。
≪目次≫
●「全国の傾向とは違う!? 滋賀県の名字ランキング
●お金とは関係ない「一円」さん
●滋賀県ならではの珍名字「浮気」
●教えてくれたのは……
全国の傾向とは違う!? 滋賀県の名字ランキング
滋賀県の名字ランキングのベスト5は、「田中」、「山本」、「中村」、「西村」、「山田」で、まさに近畿地方の典型例。その一方、特徴的なのは6位の「中川」と7位の「北川」がほぼ同数で並んでいることだ。
どちらも決して珍しい名字ではないが、人口比ではともに滋賀県が日本一。特に、「北川」がベスト10に入っているのは全国でも滋賀だけである。
また、15位の「辻」、16位の「奥村」、18位の「西川」なども、これほどランキングの上位に入っている県は珍しい。それ以外を見ても、地形や方位に関係する名字が圧倒的に多く、100位以内に県独自の名字がほとんど見受けられないほどだ。上位の名字はお隣の京都と似通っており、歴史的な結びつきの強さを感じさせる。
このほか、「藤居」、「松居」、「中居」など「井」の代わりに「居」を用いた名字が多いのも滋賀の特徴。その中でも、「藤居」は全国の約半数にのぼり、長浜市と彦根市に集中している。
お金とは関係ない「一円」さん
近畿地方の典型的な名字が多く見られる滋賀県だが、この地ならではの名字もたくさんある。「一円(いちえん)」は多賀町などで見られる独特の名字で、お金の単位に由来するものに思えそうだが、実際は町内にある地名がルーツ。後に一族は土佐に移っており、現在でも一円氏は滋賀県と高知県に集中している。「上坂」は全国的に「うえさか」と読むケースが多いが、滋賀では9割以上が「こうさか」。近江国坂田郡上坂がルーツとされ、戦国時代に浅井氏の家臣となった上坂氏などが有名。ちなみに、地名の読み方は「こうざか」と濁る。
戦国時代といえば、現在、滋賀県にゆかりの深い武将として真っ先に名が挙がるのは、明智光秀だろう。大河ドラマ「麒麟がくる」の主人公として脚光を浴びたことで、城主として治めた坂本(大津市)の住民らに慕われていた名君としての顔がクローズアップされるようになった。一般的に、光秀は美濃の名門・土岐(とき)氏の流れを汲む土岐明智氏の出身とされ、その名字のルーツは美濃国可児(かに)郡明智荘(岐阜県可児市)にある。
滋賀県ならではの珍名字「浮気」
滋賀県の珍しい名字としては「浮気(ふけ)」が挙げられる。「浮気」は、かつて低湿地のことを「ふけ」と呼んでいたことに由来し、さまざまな漢字があてられた中の一つと見られる。「うき」「うきぎ」「うわき」と読む家もある。
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教えてくれたのは……
森岡浩(もりおか・ひろし)先生
【Profile】
1986年、早稲田大学政治経済学部卒業。以来、姓氏研究家として活動。現在は、テレビ・ラジオへの出演や、書籍・雑誌の執筆・監修を行う。著書は『決定版! 名字のヒミツ』(朝日新聞出版)、『日本名字家系大事典』『難読・稀少名字大事典』『県別名字ランキング事典』(以上、東京堂出版)『名字の地図』(日本実業出版社)、『名字の謎』(ちくま文庫)、『名字の謎がわかる本』(幻冬舎文庫)、『47都道府県・名字百科』(丸善出版)など多数。
(抜粋)
宝島社新書『47都道府県 名字の秘密がわかる事典』
監修:森岡浩
編集:佐藤裕二、斉藤健太、林賢吾、山下孝子(株式会社ファミリーマガジン)
執筆協力:水野春彦、幕田けいた、佐藤勇馬、早川満、荻田美加
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WEB編集:FASHION BOX、株式会社エクスライト