ユーチューブは、今や芸能人の活動フィールドのひとつとして認知されています。ただ、ウェブコンテンツであるユーチューブに参入し、人気を得るためには、芸能人だからこその壁があるようです……。今回は、人気チャンネル、キングコング・梶原雄太さんの「カジサック」、アカデミックを芸にしたオリエンタルラジオ・中田敦彦さんの「中田敦彦YouTube大学」、そして、女優・本田翼さんの「ほんだのばいく」を通して、3人がなぜユーチューバーとして成功したのか、YouTubeアナリストの関口ケントさんに教えていただきました。
≪目次≫●芸能界とユーチューブ界の垣根
●芸能人ユーチューブフィット3原則
●フィット3原則 その1:梶原雄太さん「カジサック」
●フィット3原則 その2:中田敦彦さん「中田敦彦のYouTube大学」
●フィット3原則 その3:本田翼さん「ほんだのばいく」
●教えてくれたのは……
芸能界とユーチューブ界の垣根
ユーチューブだけの話ではないのですが、いまだに芸能界やテレビ業界では、ウェブメディアに「都落ち」のイメージがあるようで、そのマイナスイメージが多くの芸能人の本格参入を阻んでいました。僕もテレビ番組制作会社のADだった当時、番組ツイッターの運用をしていると、ほかのスタッフに嘲笑されていましたから。
この「都落ち」感をなくさせた3人がいます。ジャージ姿で革命を起こしたキングコング・梶原雄太さんの「カジサック」。ホワイトボードを舞台にアカデミックを芸にした「中田敦彦YouTube大学」、そして、女優・本田翼さんの「ほんだのばいく」です。3人とも、それぞれ異なる形で芸能界とユーチューブ界の垣根を破壊し、芸能人ユーチューバーのスタンダードを形成しました。
芸能人ユーチューブフィット3原則
結局、芸能人のユーチューブへの移行の仕方は3種類しかありません。
その1
ユーチューバーと同じ土俵に立つ
その2
芸能人としてのアウトプットをユーチューブに適した形で展開する
その3
自分の好きなものとユーチューブにある好きなコンテンツが合致したなかで圧倒的な差別化で勝つ
これを「芸能人ユーチューブフィット3原則」と名づけておきましょう。
フィット3原則 その1:梶原雄太さん「カジサック」
カジサックが革新的だったのは、「芸人・梶原雄太」ではなく、「カジサック」としてユーチューブの土俵に立ったこと。ジャージを着て「新米ユーチューバー・カジサック」というキャラクターになって、ある意味で、芸人であることを捨てた。そして、ほかのユーチューバーを「先輩」と呼び、ユーチューブで人気の企画をやり、ユーチューバーと同じ視点でチャンネルをつくっていきました。
最初は視聴者から「なんだなんだ?」「芸人がユーチューバーをバカにしてやってるんだろ」と批判コメントも数多くつきました。でも、徐々にユーチューバー側がカジサックの本気度を理解し始めました。そうなると、ユーチューバーたちもコラボなどで協力するようになり、芸能人としてではなくユーチューバーとしての認知度を獲得していったんです。ある意味で、芸人以上に跳ねることに成功した。これは本当に革命でした。
もともとは、2018年10月、「2019年の年末までに登録者数100万人にいかなかった場合、芸人を引退したいと思います」と宣言してスタート。その目標は1年も経たずにクリアしました。世間的には「芸人引退を免れた」という見え方かもしれません。でも今では、本チャンネルが登録者数200万人超、サブチャンネルも40万人超。お笑い芸人とユーチューバー、どっちが本業なのか、という状況にまでなっています。
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フィット3原則 その2:中田敦彦さん「中田敦彦のYouTube大学」
そして、芸能人ユーチューブフィット3原則その2の代表格が先ほども紹介した「中田敦彦のYouTube大学」です。もともと「アメトーーク!」(テレビ朝日系)などで見せていた“勉強大好き芸人”としての下地があり、アカデミックなことが好きで、プレゼンテーションもうまい。そのアウトプット先としてユーチューブを使い始めました。「しくじり先生」(テレビ朝日系)でも人気だった「しくじり偉人伝」のフォーマットを、しっかりユーチューブナイズドしたとも言えます。ホワイトボードを一面ビッシリと使う構成もユーチューブ的です。
フィット3原則 その3:本田翼さん「ほんだのばいく」
そして、芸能人ユーチューブフィット3原則その3における革命者が女優の本田翼さんです。ゲーム好きな本田さんが「ゲーム実況」の世界にやって来ました。ゲーム実況という、男が集う世界のなかで、ある日突然、圧倒的にカワイイ子がゲーム配信を始めたわけです。
最初の動画でプレーしたのが「デッド バイ デイライト」というネット受けするゲームで、本人の画像は出てこず、本当にただただゲームをするだけ。これ、相当のゲーム好きでなければできないこと。これを、狙ってではなく自然体でやったのが本当に恐ろしい。「きょうはゲームでもやろー♫」と軽い感じで動画を上げてドカン! の大人気。動画はまだ10本ちょっとしか上がっていないのに、登録者数は200万人超。動画1本の再生が300万、500万が当たり前という状況です。本人としては本当はもっと自由気ままにやりたいのに、あまりの人気に事務所側がセーブをかけている印象すらあります。
こうして、芸人から人気女優まで芸能界のフルレンジで成功事例が生まれたから、そのほかの芸能人もユーチューブに参入しやすくなりました。だからこその「革命」なのです。
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教えてくれたのは……
YouTubeアナリスト
株式会社Wednesday CEO
関口ケント(せきぐち・けんと)さん
【Profile】
1989年東京都生まれ。26歳で妖怪ウォッチ公式YouTubeチャンネルを立ち上げ、チーフプロデューサーとして流行を生み出す。2017年に株式会社テクサ(現株式会社ライバー)の執行役員に就任し、YouTuber50人ほどのチャンネルコンサルティングを担当。多くの人気YouTuberを育てる。また、ヒカルや加藤純一らも出演したクリエイターフェス『うず祭り』を企画・総合プロデュース。2019年に「株式会社Wednesday」を立ち上げCEOに就任。現在、神田伯山、関暁夫、島田秀平、登坂淳一、はなわ、KAMIWAZA、よしお兄さんなどのチャンネル運営を行うなど、YouTubeに軸足を置いて多角的に広がるビジネスを大量に推進している。
(抜粋)
書籍『メディアシフト YouTubeが「テレビ」になる日』
著者:関口ケント
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企画・プロデュース・編集・図:石黒謙吾
構成:オグマナオト
SPECIAL THANKS:すずきB
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WEB編集:FASHION BOX、株式会社エクスライト