“ながら”視聴ができるユーチューブ。テレビに代わり空き時間にユーチューブを見て過ごす、若い世代の人も多いはず。エンタメを楽しむだけでなく、調べ物をする時にも使用するなど、すっかりメディアの主軸となったユーチューブですが、なぜこんなにも生活習慣に入り込んでいったのでしょうか? 今回はその秘密をYouTubeアナリストの関口ケントさんに教えていただきました。
≪目次≫●「文字より動画が早い」若い世代が増えている
●ユーチューブのアプローチ方法 1:ラジオの感覚
●ユーチューブのアプローチ方法 2:“なんか見ちゃう”コンテンツ
●ユーチューブのアプローチ方法 3:見る側に寄り添い疑問を解決してあげる
●ユーチューブのアプローチ方法 4:今の全力なんです、と正直に伝える
●元バーテンダーのYotoさんが手がける「お酒とYotoの物語」
●教えてくれたのは……
「文字より動画が早い」若い世代が増えている
ここ最近、動画であらゆるものを吸収する人が急激に多くなってきています。活字を読む力がなくなってきているからとも言えますが、悪い方向ばかりじゃありません。動画で何かを伝えようという意識がこれからますます高まるだろうし、実際、企業のなかには動画に対して予算をかけるケースが増えていて、募集要項に「ユーチューバー募集」と掲げる企業も出てきています。
調べものをする際に、検索エンジンではなくダイレクトにユーチューブで検索する人も増えています。今の若い世代にとっては、文字で情報を追うよりも動画で見たほうが早い、という感覚なのです。企業サイドからすると、その観点でのものづくりやサービスが求められていると言えます。昔は、本にしても雑誌にしても選んだものを大事に読み込む人が多かったわけですが、今は、選んだあとは勝手にインプットされるものを求めている。つまりは、“ながら”視聴ができるユーチューブは生活習慣のなかに入り込みやすく、最適、ということになります。
ユーチューブのアプローチ方法 1:ラジオの感覚
生活習慣のなかでの使われ方という意味で、ユーチューブはラジオに近い。かつて、ラジオはテレビ以上に生活習慣のなかに入り込んで愛されたメディアでした。家事をしながら、勉強をしながら、仕事をしながら、眠りに落ちながらラジオを聴いていました。今、その役割をユーチューブが担っています。
仕事や勉強といったこと以外の、自分の時間を何に使うか、どう有意義に過ごすかが大事になってきている時代に、ユーチューブの「ながら視聴ができる」「映像により理解への時間が短くて済む」という点が重宝がられているのです。
ユーチューブのアプローチ方法 2:“なんか見ちゃう”コンテンツ
ユーチューブチャンネルが生活習慣に入り込む重要性は、何度も何度も見ていると無意識下でその人を好きになって、パーソナルが気になり始める。そこを受け入れるようになると、さらにコンテンツを長く見るようになるというサイクルができあがります。たしかに、最初は本題だけの短い動画がいいかもしれない。でも、その先を見越して、「人から好きになってもらうにはどうしたらいいんだろう」と考えてコンテンツをつくっていかないと成り立たない時代になってきています。
生活習慣に入り込むことは、ビジネス的な言葉で言い換えれば、可処分時間を消費させること。視聴者の時間をどれだけ取ることができるか。取れば取るほど次につながります。要は時間泥棒になれるかどうかです。
【きぬちゃんねる】美容系YouTuber愛用の韓国コスメブランド11選
人気YouTuberエミリン初の著書『ここは負けても死なないテーマパーク』発売! 限定グッズが当たるAmazon予約キャンペーン
ユーチューブのアプローチ方法 3:見る側に寄り添い疑問を解決してあげる
これからは、視聴者の生活習慣を分析した上で、見る側に寄り添い疑問を解決してあげるプロモーションをしないと見てもらえない時代になってきます。カミソリであれば、「切れてな〜い」じゃなく、「なぜ切れないのか?」というアプローチのほうが興味を持ってもらえる時代になってきました。
ユーチューブのアプローチ方法 4:今の全力なんです、と正直に伝える
言い換えれば、ごまかしが利かなくなってきている、というわけです。これからはコピー1発でドカンと話題になったり、モノが売れる時代ではない。とにかく実用性が大事であり、ロジカルかつインタレスティングな広告表現やプロモーション展開じゃないと通用しません。誠実でブレないものが好まれるのは、最近のモノの流行を見ていて痛感するところです。
少し前までは、大事な情報がブラックボックスで隠されている、なんてことがまかり通る世の中でした。でも、今はブラックボックスがあること自体が即NG。そして、CMでものすごく誇張していて、いざ使ってみたら全然違う、みたいなものはもはや炎上リスクだけの超デメリット広告でしかありません。だったら、少しまだ改良の余地はあるかもしれないけど、これが今の全力なんです、と正直に伝えたほうがいい。視聴者側は、かっこつけている必要があるのかと感じるわけです。
元バーテンダーのYotoさんが手がける「お酒とYotoの物語」
1つ実例を挙げると、元バーテンダーのYotoさんが手がける「お酒とYotoの物語」というチャンネルがあります。この人の動画で、仕事が終わったあと家で究極のハイボールを飲むために全力を尽くす「自宅ハイボールガチ勢」という企画があり、これがハイボール好きにはたまらない動画です。透明な氷をつくるところから始まり、おつまみも簡単だけどちょっと気の利いたものを用意。たかが1杯のハイボールに本気になるこの人は誰だろう? と思って見始めると、ほかにもいろんなジャンルのお酒を紹介していて、つい飲みたくなる。こうして僕の生活習慣にこのチャンネルがするっと入ってきてしまったのです。
それと、お酒を紹介する際、美味しくないものは美味しくない、と正直に言うのがこのチャンネルの強みであり、信頼できる点です。何かに遠慮することなく、評価軸がブレない。ファンにどれだけ信用されているか、の重要さが感じられる好例です。
YouTubeに芸能人が参入! 本田翼、カジサック、中田敦彦が成功した理由は?[プロ監修]
バーチャルYouTuber・懲役太郎は“元ヤクザ”! 実体験した「塀の中」の生活とは
[プロ監修]SNS運用での炎上を回避! ステマより共感シェアコンテンツの時代
教えてくれたのは……
YouTubeアナリスト
株式会社Wednesday CEO
関口ケント(せきぐち・けんと)さん
【Profile】
1989年東京都生まれ。26歳で妖怪ウォッチ公式YouTubeチャンネルを立ち上げ、チーフプロデューサーとして流行を生み出す。2017年に株式会社テクサ(現株式会社ライバー)の執行役員に就任し、YouTuber50人ほどのチャンネルコンサルティングを担当。多くの人気YouTuberを育てる。また、ヒカルや加藤純一らも出演したクリエイターフェス『うず祭り』を企画・総合プロデュース。2019年に「株式会社Wednesday」を立ち上げCEOに就任。現在、神田伯山、関暁夫、島田秀平、登坂淳一、はなわ、KAMIWAZA、よしお兄さんなどのチャンネル運営を行うなど、YouTubeに軸足を置いて多角的に広がるビジネスを大量に推進している。
(抜粋)
書籍『メディアシフト YouTubeが「テレビ」になる日』
著者:関口ケント
『メディアシフト YouTubeが「テレビ」になる日』をアマゾンでチェック
企画・プロデュース・編集・図:石黒謙吾
構成:オグマナオト
SPECIAL THANKS:すずきB
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
WEB編集:FASHION BOX、株式会社エクスライト