taraさんと考える「私と地球に心地よい暮らし」
地球と私たち生物のサステナブルな未来のために、今何ができるのか。モデルのtaraさんと一緒に学び、実践しましょう。今回のキーワードは「海洋プラスチックごみ問題」。レジ袋やペットボトルなど生活の利便性を求めて使っているプラスチックのごみが海に流れ、生物たちを脅かしています。それは巡り巡って、私たち人間にも還ってくるのです。
キーワード → 海洋プラスチックごみ問題
廃棄されたプラスチックによる環境汚染について研究を続けている高田先生にお話を伺いました。
――海に流れ出たプラスチックごみはどんな影響を及ぼしますか?
2019年の報告ですがギリシャの海岸でクジラとイルカ34頭中、9頭の胃の中からプラスチックが出てきたそうです。その半分以上がレジ袋だったと。これらが消化器官にひっかかり死んでしまったと思われるクジラもいたそうです。
レジ袋などの大きなプラスチックごみ(以下プラごみ)は、紫外線や波でボロボロになり5ミリ以下の大きさのマイクロプラスチックと呼ばれるものになります。こうなると、小さな生物もプラごみを取り込んでしまう。
さらに大きな問題があります。プラスチックには性能の維持のために有害な添加剤が含まれており、中には環境ホルモンの作用があるものも。それらが体内に入るとホルモンのバランスを崩し子宮内膜症や乳がんなどのホルモンに関係する病気や、精子の数が減るなどの生殖に関係する障害を引き起こすと言われています。マイクロプラスチックを魚や貝が食べ、体内で添加剤が溶け出す。その魚や貝を人間が食べる。食物連鎖を通じて人間にも影響するのです。
――私たちがプラごみを減らすためにできることは何でしょうか?
漂着ごみだけで考えるとポイ捨てに気をつければいいということになりますが、家庭排水も原因です。たとえばプラスチック製のたわしやメラミン製スポンジは使ううちに削れて海洋プラスチックごみに。衣服もそうです。ポリエステル製やアクリル製などの化学繊維のものを洗濯すると、洗濯くずとしてマイクロプラスチックが発生するのです。
日々の生活でプラスチックをゼロにすることはできません。ですから少しでも減らすことを目標に、マイボトルやエコバッグはもちろん、買い物をするときは天然素材のものや、プラスチックでも生分解性のあるバイオマスプラ(※1)、リサイクルしやすい単一素材(※2)のプラでつくられたものを選びましょう。消費者が賢く選んでいくことで、社会や企業も変わっていくのではないでしょうか。
※1 微生物の働きで分解される自然由来のプラスチックで堆肥化ができる。2019年に「プラスチック資源循環戦略」を国で定めバイオマスプラスチックを増やす動きがある。
※2 プラスチックには種類があり、複数の素材で製造されたものだとリサイクルしづらい。単一素材か、複数素材かは容器に表示されているマークで確認できる場合も。
賞味期限と消費期限の違いは知ってる? 食品ロス専門家が生ごみを減らすコツを解説マイバッグでサステナブルな暮らし|エコバッグどれにする? トート・パッカブルetc.
ウォーキングは“1日8000歩、20分速歩き”がベスト! ガンや認知症も予防[医師が解説]
タラのまとめ
気づけば手に取るモノのほとんどがプラスチック製品になってしまった私たちの生活は、“利便性”を手に入れたかわり、自然界に戻ることのない負の遺産と大きな代償を残してしまいました。私たちの健康にも実は影響を及ぼしているプラスチック、今すぐすべてを手放すことは難しいかもしれませんが、「何かひとつでも“プラスチックフリー”を生活に取り入れることで未来は変わります!」と、笑顔で答えてくださった高田先生の言葉に勇気をもらいました。
オーガニックコットンの奄美大島泥染めロングドレス¥66,000/コズミックワンダー(センター・フォー・コズミックワンダー)
初秋の穏やかな葉山の海。砂浜で裸足になって、自然がもたらしてくれる心地よさを一歩一歩踏みしめます。
おしゃれ&便利なエコバッグ5選|素敵世代にぴったりの機能とデザインを兼ね備えたアイテムたち
tara プロフィール
tara/5歳よりバレエを始め、15歳で単身渡米。ヒューストンバレエⅡの研修を経て、チェコ、クロアチアの国立劇場でソリストとして踊る。2016年から拠点を日本に移し、モデルとしての活動をスタート。認定トレーナーであるジャイロトニックジャイロキネシス(R) の指導、バレエ講師、ヴィーガン・グルテンフリー料理のレシピ開発、ケータリング、イベント等にも出店している。
環境負荷を減らすこだわりバッグ|お洒落で環境にも優しい優秀バッグ9選
教えてくれたのは……
高田秀重先生 プロフィール
東京農工大学農学部環境資源科学科教授。2005年より世界各地の海岸で拾ったマイクロプラスチックのモニタリングを行う市民科学的活動「International Pallet Watch」を主宰。国連の海洋汚染専門家会議のグループのメンバーとして世界のマイクロプラスチックの評価を担当。
※ 画像・文章の無断転載はご遠慮ください
model_tara
photograph_Miho Kakuta
text_Nao Yoshida
(リンネル 2020年12月号)
web edit_FASHION BOX, Ayaki Ando[vivace]