『鬼滅の刃』から学ぶ江戸時代の刑罰の歴史|追放刑、入れ墨刑、打ち首etc.

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『鬼滅の刃』で知る江戸時代の刑罰

国民的マンガとなった『鬼滅の刃』(集英社)。大正時代を舞台に、主人公・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)が仲間と共に鬼退治を行うストーリーだ。

大正時代の日本には、江戸時代以前の伝統や風習が根強く残っていた。また『鬼滅の刃』の作中には、炭治郎の祖先や鬼の記憶として、平安時代や戦国時代のエピソードも盛り込まれている。作品に登場する日本の歴史を知れば、物語への理解がより深まるはずだ。

今回はすべての鬼の祖である鬼舞辻無惨(きぶつじ・むざん)の手下、上弦の参・猗窩座(あかざ)が人間時代に課せられた刑罰をもとに、その歴史に迫る。

※本文にはネタバレを含む箇所があります。ご注意ください

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江戸時代の刑罰1. 狛治(はくじ)が受けた「追放刑」の源流は?

狛治(上弦の参・猗窩座)は、掏摸(すり)を繰り返したことから、「所払い」という刑を受けている。これは追放刑と呼ばれるもので、日本独特の刑罰だ。

追放刑は犯罪者を一定地域外へ放逐する刑罰で、中世から近世にかけて行われた。中世は「追却(ついきゃく)」とも称され、鎌倉や京都、領国からの追放事例がみられる。江戸時代の追放刑は「払(はらい)」とも称され、キリシタンの国外追放、身体刑(耳切り・鼻削ぎなど)と組み合わせるなど、過酷な事例もあった。

8代将軍徳川吉宗の時代に編纂(へんさん)された『公事方御定書(くじかたおさだめがき)』では、追放刑は6等級に整理されている。最も重い重追放は、居住する国と事件を起こした国のほか、関東や畿内などの15ヶ国、東海道筋・木曽路筋を御構(おかまい)場所(立入禁止区域)とし、家財や屋敷を没収された。追放刑は原則として無期刑だったが、恩赦で許される場合もあった。一方で、御構場所に入ると1等重い追放刑が課された。とはいえ、現代のような監視システムが存在しない時代だったので、御構場所に立ち入る者もいた。

また、追放刑に処されると武士は浪人、庶民は無宿とされたが、生活が苦しくなって犯罪を犯す者もいた。そこで、再犯のおそれがある者を金山や銀山に送って働かせたり、幕府が寛政2年(1790)に石川島(現在の佃島)に設置した加役方人足寄場(かやくがたにんそくよせば) という自立支援施設に収容するなどした。

「払」よりも重い追放刑として「遠島」がある。いわゆる流罪で離島に罪人を送ることで、江戸で「遠島」となった者は財産を没収され、伊豆七島などに送られた。

 

江戸時代の刑罰2. 狛治の両腕には「入れ墨刑」の跡が!

狛治の両腕には3本線の入れ墨があるが、これは刑罰として入れられたものだ。

入れ墨刑は、追放刑と共に江戸時代の日本独特の刑罰だ。正式に刑罰として幕府に採用されたのは享保5年(1720)で、8代将軍徳川吉宗が犯罪の抑制をはかるために導入した。

皮膚に傷をつけ、そこに墨や朱などの色素を入れて紋様や文字、絵柄などを描く入れ墨の文化は古く、『魏志』倭人伝には「邪馬台国の男性は皆入れ墨をしていた」という記述がある。中世にはほとんど見られなくなったが、江戸時代になると再び発展を遂げ、裸で働くことが多い鳶職人や飛脚が文化の担い手となった。

ただし、刑罰としての入れ墨には華がなく、腕に2本ないし3本の線を入れられたり、おでこに×印を入れられるなど、非常にシンプルだった。また、初犯は「一」、再犯すれば「ノ」と足していき、「犬」の字が完成したら死罪になるという地域もあった。入れ墨があることで前科者であることがわかり、犯罪の抑止力になったが、入れ墨のせいで更生の機会が失われ、自暴自棄になる者もいた。

 

江戸時代の刑罰3. 鞭でめったうちにされようが……「敲(たた)き刑」とは?

ほかにも、江戸時代には竹製の鞭で体を打つ敲き刑があった。50回敲く「軽敲(かるたたき)」と100回敲く「重敲(じゅうたたき)」があり、盗みや喧嘩などの軽犯罪を犯した者に適用された。

狛治も「鞭でめったうちにされようが骨を折られようが親父の為(ため)なら耐えられる」と敲き刑を受けているが反省することなく、さらに重い追放刑を受けることになった。

 

 

(抜粋)

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監修:小和田哲男、瀧音能之

 

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監修:小和田哲男(おわだ・てつお)

1944年、静岡県生まれ。1972年、早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。2009年3月、静岡大学を定年退職。静岡大学名誉教授。研究分野は日本中世史。著書に『お江と戦国武将の妻たち』(角川ソフィア文庫)、『呪術と占星の戦国史』(新潮選書)、『黒田如水』『明智光秀・秀満』(ともにミネルヴァ書房)、『名軍師ありて、名将あり』(NHK出版)、『黒田官兵衛 智謀の戦国軍師』(平凡社新書)、『家訓で読む戦国 組織論から人生哲学まで』(NHK出版新書)、『戦国武将の叡智』(中公新書)などがある。

 

監修:瀧音能之(たきおと・よしゆき)

1953年生まれ。駒澤大学文学部歴史学科教授。著書・監修書に『カラー改訂版 忘れてしまった高校の日本史を復習する本』(KADOKAWA)、『図説 出雲の神々と古代日本の謎』(青春出版社)、別冊宝島『古代史再検証 蘇我氏とは何か』『日本の古代史 飛鳥の謎を旅する』『ビジュアル版 奈良1300年地図帳』『完全図解 日本の古代史』『完全図解 邪馬台国と卑弥呼』、TJMOOK『最新学説で読み解く日本の古代史』(すべて宝島社)など多数。

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編集 青木康(杜出版株式会社)
執筆協力 青木康、五十嵐敬史、高野勝久、常井宏平
編集協力 小野瑛里子、阪井日向子

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