[南果歩]新しい仕事の前は妄想族に! デビュー作『伽倻子のために』の衣装合わせで学んだことは?

南果歩|役作りは‟妄想族“になるところから 女優の原点は意外なところに

南果歩さん『大人のおしゃれ手帖』連載「I am Here!」

『大人のおしゃれ手帖』で連載中の南果歩さんの「I am Here!」。新しい仕事が始まるときは、さまざまな妄想をして役作りをするという南さん。実際にどのように役と向き合っているのか教えてくれました。

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【南果歩】「変身願望」

[南果歩]新しい仕事の前は妄想族に! デビュー作『伽倻子のために』の衣装合わせで学んだことは?
ニット¥88,000、ブラウス¥121,000、スカート¥165,000/すべてブラミンク、リング(人差し指)¥88,000、リング(薬指)¥132,000/ともにウパラ(パサンド バイ ヌキテパ)

新しい仕事が始まる前は、色んな妄想が私の頭の中で渦巻きます。

まずは、最初に台本を開く時。どんな物語の中で生きている人物なのか、どんな人生を歩んでいるのか。台本を読んだ時のファーストインプレッションが後々活かされることもよくあること。だから真っ白な気持ちで読めるように、一人になってから仕事机に向かい、ページを開きます。このワクワク感は特別です。

何は無くとも、シナリオや戯曲が私の変身の始まりなのです。

そしてそこから妄想族(笑)の本領発揮です。

私が演じる人は、何に幸せを感じ、何を欲し、何に悩み、どんな服を着て、どんな髪型をして、どんな物を食べて、どんな生活を送っているのか、想像し始めたら止まらなくなります。この時間はまるでひとり遊びのような、私にとっては最も自由な時間です。

この妄想の原点は、幼い頃のお人形さんごっこ遊びにあります。

大好きなリカちゃん人形さえあれば、私はどんな女の子にも変身できる気がしていました。お人形たちの設定を考え、役を割り振って、即興でお人形達が会話をする。そして物語はどんどん展開していくのです。あの楽しさは一体何だったか。まるで演劇のエチュードのようでした。ということは、私はずっと子どもの頃から好きだった遊びをやり続けていることになるのかもしれません。

生業としてやっているからには、遊びとは言えないけれど、演技は英語で言えば「PLAY」ですから、やはり遊び心が必要なのかもしれません。

本気で遊ぶ。これは幼い頃から変わらない私の信条です。

そして役のことを頭の中で想像を膨らませた後に、具体的に衣装と髪型を決めていくのです。

衣装が決まればいよいよ役が具体化してきますが、かといって一筋縄では行きません。

19歳で「伽倻子のために」で映画デビューした時のこと。私は一般公募でオーディションを受けた駆け出しでした。初めての衣装合わせで撮影所の衣装部屋に足を踏み入れた時、あまりの衣装の多さに驚きました。

衣装さんが用意してくださったものに袖を通し、小栗康平監督やメインスタッフの前に登場すると、みなさん無言の表情で私を見つめます。

何着も何着も着替えた後に監督がひと言。「目に映るものは疑え、だな。まあ、それなりに似合ってはいるけれど、決定的ではないな。果歩、衣装さんと一緒に衣装倉庫に行って来い。自分でも探せ」

その日は何ひとつ衣装は決まりませんでした。後日、衣装さんと助監督さんと私の3人で、とんでもない広さの倉庫を訪れました。

自分が演じる伽倻子という少女はどんな服を着ているのか、それが決まらない限りは、私は映画の中で生きられないのだと、大きなミッションが監督から課せられていました。

広い広い衣装倉庫の中から、自分が演じる役の衣装を探すなんて、その後の仕事でも経験できないことでした。

そして小栗監督が私に教えてくださった最も大事なことは、目に映るものを単純に信じるな、ということでした。「もっと他にあるはずだという気持ちで見ても揺るがないものを探し出せ」ということだったのでしょう。

大きな衣装倉庫での宝探しに終日を費やし、2度目の衣装合わせで、衣装ストックの奥底から私が見つけ出した、丸首の紺のセーターとグリーンのチェックのスカートが晴れて役の衣装として採用されました。

そこで決まらなかったものは、仕立ててもらうこととなりました。初めての映画で、衣装探しの奥深さを私は身をもって知ったのでした。

“それなりに”ということほど曖昧なことはない。本気で変身するのならば、準備を怠ることなく、最も相応しいものを探し続けることなのです。

美しい衣装もそうでない衣装も、私にとっては仮面ライダーの変身ベルトのようなもの。思いっきり変身するためには不可欠なのです。

[南果歩]新しい仕事の前は妄想族に! デビュー作『伽倻子のために』の衣装合わせで学んだことは?

新作映画の撮影を前に髪を切って変身。髪も服も、役に通じる大事なエッセンス。

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PROFILE/南果歩(みなみ・かほ)

兵庫県出身。短大在学中に映画『伽倻子のために』(小栗康平監督、1984年)のヒロインオーディションに応募、主役に抜擢されてデビュー。第62回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した、ブリランテ・メンドーサ監督最新作『GENSAN PUNCH~(義足のボクサー)』(日本、フィリピン合作映画/邦題は仮)、ダニエル・デンシック監督『MISS OSAKA』(デンマーク・日本・ノルウェー合作映画)がそれぞれ来年公開予定。

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photograph:Takashi Noguchi(San Drago)
styling:Kuniko Sakamoto
hair & make-up:Kei Kokufuda
text:Kaho Minami
大人のおしゃれ手帖 2021年12月号

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web edit:FASHION BOX

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