仕事をしていると周囲にお願いをしなくてはならないシーンに出くわします。お願いするときの言い方次第で相手の受け取り方も大きく変わるもの。お互い気持ちのよい言葉遣いとコミュニケーションで仕事を円滑に進めましょう!
教えてくれたのはこの方
吉田裕子(よしだ・ゆうこ)
国語講師。大学受験塾やカルチャースクール、企業研修などで教える。NHK Eテレ「テストの花道 ニューベンゼミ」に出演するなど、日本語・言葉遣いにかかわる仕事多数。著書『正しい日本語の使い方』(枻出版社)は12万部を突破。他に『品よく美しく伝わる「大和言葉」たしなみ帖』(永岡書店)、『美しい女性をつくる言葉のお作法』(かんき出版)、『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など。東京大学教養学部卒。
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依頼:上司がとても忙しそう。それでも話しかけたい!
×:つい言ってしまう言い方
「ちょっとすみません(忙しいとこ、すみません)」
○:常識人とみられる言い方
「お忙しいところを申し訳ありませんが、ただ今お時間よろしいでしょうか」
「ちょっといいですか」といった言い方は、少し押しつけがましく実は断りづらい印象を与える言い回し。忙しい上司の「貴重な時間を割いてもらう」という意識を大切に、「お忙しいところを申し訳ありませんが」など一言添えて、やわらかく丁寧にお願いしよう。
◎:一目置かれる、より丁寧な言い方
「ご多用中恐れ入りますが、○分ほどお時間をいただいてもよろしいでしょうか」
忙しくても、それほど時間を要しない用件ならば聞いてもらえる可能性もある。相手の意思を確認する疑問形を使いながら、「○分ほどお時間をいただきたい」と所要時間の見通しを具体的に伝えることで、相手も時間が割けるか否かの判断がしやすくなる。
貴重な時間を「いただく」という意識を。
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依頼:困った! 深刻な悩みを上司に相談したい
×:つい言ってしまう言い方
「実はちょっと悩んでまして……聞いてもらえますか?」
○:常識人とみられる言い方
「お力を貸していただきたいことがありまして、ご相談してもよろしいでしょうか」
深刻な用件の相談は、相談される側も気が重いもの。単に自分の不安や悩みをぶつけるようにせず、相手を頼りにしているからこそ相談に乗ってもらいたいという気持ちを伝えることで、「力になってあげなくては」という気持ちを引き出しやすい。
◎:一目置かれる、より丁寧な言い方
「折り入ってご相談があるのですが、よろしければお聞きいただけませんか」
「折り入って」の「折り」は、「四季折々」の「折々」と通じる意味を持ち、本来は“季節を特定できる風物詩を吟味して和歌に折り込む”ことを意味する。転じて、「あなただからこそ」と選んだ特別感を表せる言い回しで、頼りにしていることを表現できる。
「頼りにしている」ことを丁寧に伝えよう。
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依頼:このままでは仕事が終わらない!助けを乞いたい……
×:つい言ってしまう言い方
「すみません、手伝ってください!」
○:常識人とみられる言い方
「申し訳ありませんが、お力をお貸しいただけませんか」
「〜してください」と言うと、悪気はなくても押しつけがましい命令調に聞こえてしまうことも。自分が切羽詰まった状況だとしても一呼吸置いて、相手の状況や立場に配慮し、「〜していただけませんか」といった疑問形で尋ねる方が社会人としてはスマートだ。
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◎:一目置かれる、より丁寧な言い方
「お忙しいなか恐れ入りますが、お力添えいただけないでしょうか」
なんとか援助してもらいたい、という気持ちをやわらかい印象で伝えられるのが「お力添え」という表現だ。ただし、口頭でなくメールや文書などで依頼したい際には、「ご支援」「ご協力」といった熟語表現を使った方がいい場合もあるので使い分けを。
相手の状況も考えてスマートに依頼しよう。
(参考)
書籍『一生分の教養が身につく! 大人の語彙力強化ノート』
https://tkj.jp/book/?cd=TD296221
著者:吉田裕子
※ 画像・文章の無断転載はご遠慮ください
編集協力/小芝俊亮、細谷健次朗、山口紗英(株式会社G.B.)
執筆協力/龍田昇
イラスト/イラスト工房
デザイン/山口喜秀(Q.design)
DTP/ハタ・メディア工房株式会社
編集/FASHION BOX
(書籍『一生分の教養が身につく! 大人の語彙力強化ノート』)