近年のフェムテックブームにより、女性の性に関する悩みや課題がメディアで多く取り上げられており、女性が性に対してどのように考え、何を知りたいのかが明らかになってきました。一方で、男性の性については、悩みや課題にフォーカスして語られることがあまり多くありません。そこで『月刊TENGA』は、20~60代の約1000人の男性を対象に「性の悩み」について調査を行いました。男性が性に関して知りたいことや、彼らの「本音」について明らかにしていきます。また、調査結果や男性が実践している対策法について、泌尿器科医の今井伸先生、AV男優の森林原人さんに解説していただきました。
前回の記事では、「男性の7割以上が何かしら性に関する悩みを抱えているのにもかかわらず、友人に話さない理由」などを紹介しました。今回は、人に聞けないからこそ男性が気になっている「他の人はどうなの?」について深掘りしていきます。
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『月刊TENGA』とは?
「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」がビジョンのアダルトグッズメーカー・TENGAが定期的に発行しているニュースレター。TENGAの製品やニュースだけでなく、性にまつわる様々な調査結果やユニークな切り口の情報を発信中! マニアックな小ネタから真面目な話まで、めちゃくちゃ面白いのでぜひご一読を!
【調査概要】
調査タイトル:男性の性の意識に関する調査
調査主体:株式会社TENGA
調査方法:インターネット調査
調査対象:1030人(全国/男性/20~69歳)
調査期間:2023年12月15日~ 12月18日
※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはならない場合があります
Chapter 1 人に聞けないからこそ、男性が気になる「他の人はどうなの?」
「他人がどうなのか気になった」ランキングでは、自分自身のことは「セックスのテクニック」、パートナーとのコミュニケーションでは「セックスレス」が1位に。
▶「体のこと」「パートナーとのコミュニケーションのこと」のいずれも、自分自身が気になっている、上位5つの項目と同じ傾向になりました。自分自身が気になっていることについて、他人はどうなのか気にしていることがわかります。
「自分自身の性や性生活の悩みや気になること」について、「誰の話だと聞きたいと思うか」という質問には、専門家が32.2%、AV男優が12.1%。
▶“誰の話なら聞きたいか”という質問には、1位「専門家(32.2%)」2位「友人(16.8%)」3位「AV女優(13.0%)」4位「AV男優(12.1%)」という結果に。
▶世代別の結果では「専門家」に聞きたいと回答した人のうち、35~39歳が22.3%と他世代よりも10ポイント程度低い傾向が見られました。
▶20~24歳のみのランキングを見ると、1位「専門家(34.0%)」2位「友人(30.1%)」に次いで3位「AV男優(28.2%)」という結果となり、他世代よりもAV男優の方から話を聞きたい、という傾向が見られました。
Chapter 2 調べてやってみたあれこれ。
専門家に「それって、実際どうなの?」を聞いてみた!
自由回答から見える、男性の「本音」の数々。「他人がどうなのか気になったランキング」の上位項目を中心に専門家が回答!
アンケート調査の中では、「気になったけど 調べなかった」という回答が多かったですが、自由回答からは、色々なことを実践していることがわかりました。たくさんある回答のなかで、多く集まったものをいくつか紹介し、その方法が実際どうなのか、専門家のお二人に解説いただきます。
#01 セックスのテクニック関連
♂ 男性の活力UPについての自由回答
・毎日亜鉛を摂取しています(40代)
・精液の量が少なくなって心配だったので、サプリを飲んだ(30代)
・セックスする際は、サプリを飲んでから実行しているが、成果が得られなかった(30代)
Q:男性の活力UPにはどんなことをしたらよいと思いますか?
AV男優
森林原人さん
サプリに頼りきるよりは、筋トレのほうがおすすめです。筋トレをすると男性ホルモンが増えることが期待できます。勃起力には男性ホルモンは欠かせない存在なので、ぜひ取り入れてみてください。
♂ 男性器を鍛えることに関する自由回答
・男性器にお湯と冷水を交互にかけて鍛える*(60代) *医学的根拠はありません
・排尿時に、出したり止めたりし、射精コントロールに使う筋肉(PC筋)を鍛えています(30代)
・勃起力を高めるためスクワットをする(30代)
Q:男性器って、本当に鍛えられるのですか? おすすめの方法があれば教えてください。
AV男優
森林原人さん
男性器を鍛えることはできると思いますが、それを体得するのは少々難しいかもしれません。男性器を鍛えることとは別に「射精コントロール」を鍛えてみるのはいかがでしょうか。射精までに、勃起する、射精感が訪れるといういくつかの段階があると思います。この段階をコントロールできるようになることが、早漏改善のトレーニングになります。男性の場合、勘違いしているのは、セックスをしている時に、「早くピストンをしないと女性は気持ちよくないのでは」と思っていることです。そのように思っていると、ずっと動かさないといけないので、射精感が訪れ、早漏の原因になってしまいます。女性の場合、挿入してゆっくり動かしたり、止まっているだけでも十分刺激になっています。動かさないでも勃起が維持できるようにトレーニングしてみてください。
#02 早漏関連
♂ 早漏対策に関する自由回答
・セックスをする当日の朝、もしくは、数時間前にマスターベーションをしておく(20代)
・セックスをする日の2日前には一回マスターベーションをしておく(20代)
・早漏スプレーを使うようにしている(40代)
Q:早漏対策には何が効果的でしょうか?
泌尿器科医/聖隷浜松病院リプロダクションセンター センター長
今井 伸 先生
できるだけ、長持ちさせたい場合は、「マスタベーションで自分はどの程度まで我慢できるか」を把握することが重要です。それをセックスまでに体得している必要があります。その際に間違ったマスターベーションをしていると、セックスの時に得られる感覚と異なるため、本番を想定した練習でないと意味がありません。手で男性器をしごくのと、本当の膣で得られる感覚は異なるので、TENGAのカップを使うこともおすすめです。また、「3回我慢して4回目に射精する」ことを取り入れてください。早漏を改善するトレーニングとしても効果的です。トレーニングも重要ですが、“射精する前に相手がどれだけ満足しているか”が重要です。もしも、射精の前に、相手がオーガズムを得ていたら、挿入の時間が仮に短くても、相手は満たされている可能性があります。大事なのは、早漏かどうかよりも、“相手を満足させられているかどうか”です。
#03 セックスレス関連
♂ セックスレスについての自由回答
・年齢を重ねても、自分の性欲は、まだ減退していないが、パートナーにまだ性欲があるか聞けず、そのままセックスレスになってしまった(60代)
・歳をとって性欲が減退していることを伝えられなかった(50代)
Q:セックスレスの原因と対策を教えてください。
AV男優
森林 原人 さん
ポイントは、“なぜセックスレスが悩みなのか”の本質を特定することにあると思います。例えば、相手とセックスをしなくなったことで、性欲の発散ができなくなったことが悩みの原因であれば、性欲の発散をパートナーだけに求めることは違うと思っています。ほかにも、セックスの概念が「勃起・挿入・射精」になっていることも原因のひとつです。日本人は、日常生活とセックスとの間のコミュニケーションが不足しているといわれています。この“間のコミュニケーション”は、例えば、下着を一緒に選ぶこともその一つです。
#04 セックスのコミュニケーション関連
♂ セックスの誘い方についての自由回答
・セックスの誘い方をWEBで調べたり、友達から聞いたりして試してみた(20代)
#05 番外編:相談・会話することができず、後悔したエピソード
♂ やってみたいプレイに関する自由回答
・コスプレやもう少し激しいプレイもしたかったが嫌われそうでできなかった(30代)
・性癖などを伝えて色んなプレイをしてみたいと思うが、なかなか言えないで後悔する(20代)
♂ セックスについての自由回答
・相手が前に気持ちいいと思っていた場所が、後々気持ちいい場所ではなくなっていたのに、そこばかり責めてしまっていた(30代)
・初体験であることを、相手に言い出せなかった(20代)
♂ ピロート―クに関する自由回答
・セックス後にパートナーと反省会をするようになってからセックスを楽しめるようになった(20代)
・セックスが終わったあとは、相手を抱きしめながら、ピロートークをしている(20代)
Q:セックスのピロートークって何を話したらいいのでしょうか?
AV男優
森林 原人 さん
セックスの後は、「何がよかったのか」「何が気持ちよかったのか」を聞いてみるといいと思います。女性の場合、セックスの好みをうまく伝えられないことも多いため、「何も言われなかったから満足させてあげられなかった」と思わないことです。もしも、「あの時は痛かった」と言われたときは、あなた自身を否定しているわけではなく、その行為を否定しているだけだと思ってください。一番大切なのは、「何も不快なことがなかったセックス」が一番いいセックスだと捉え直してください。
いかがでしたか? 女性目線から見ても、とても興味深い内容でした。特に自由回答の“男性の本音”は、なんともリアルだなと感じました。活力UPや男性器の鍛え方、早漏対策など、友達に相談するほどでもなく、病院に行くほどでもないけれど、気になっているという人は多そうです。また、パートナーとのピロートークに関しても、絶対的な正解はないと思いますが、今回のようなプロからのアドバイスを知っているか否かで大きく違ってくるのではないでしょうか。“メンテック”という言葉がより一般に浸透することで、薄毛、ED、不妊などの深刻な悩みだけでなく、些細なモヤモヤにも注目が集まることで、男女ともにより気軽に話せるような環境が整えばいいなと思いました。
出典:月刊 TENGA 第52号
編集・文=鈴木恵理子