「アイラブユー、セリーナ」
全米オープンで日本人初のグランドスラム制覇を達成した大坂なおみ。決勝進出を決めた際、彼女は対戦相手となる女子テニス界のレジェンド、セリーナ・ウィリアムズに異例のラブコールを送った。
大坂にとって、セリーナはテニスを始めた幼少期からのアイドルだった。観客から容赦のないブーイングを浴びながらも相手を圧倒する姿に、「なんてすごい人なんだろう……」と憧れを抱くようになった。
「なおち」と呼ばれた少女の最大のライバルは1歳半年上の姉まり。まりに勝てるようになったのは10歳のころだったが、大坂にとっては人生のハイライトともいえる出来事だった。
それを象徴しているのが2014年、当時世界ランク19位のサマンサ・ストーサーから大金星を挙げ、世界中のテニスファンを驚愕させた試合後の会見だ。
「これはキャリア最大の勝利?」と聞かれた大坂は「いいえ、これは2番目よ。いちばん嬉しかったのは姉に勝ったときだから」
ランキングを上昇させ、キュートな発言で注目を浴びるようになったのもこのころからだ。
試合後に意気込みを聞かれ「ちょっと眠い。お腹すいた」と発言したり、コーチに関して聞かれると「私の知っていることしか言わないんだもん!」などと奔放なコメントを連発。
インタビュアー、記者、会場のファン、TV観戦している誰もが笑顔になる。パワーテニスとキュートなキャラクターのギャップは、世界共通で見る者を虜にしている。
現コーチとの出会いは“運命”
今現在、大坂のテニスは、パワーに頼らなくなっている。試合中の駆け引きも覚えた。大坂を変えたのは2017年末からコーチとなったサーシャ・バジンだ。
大坂自身、「彼との出会いは運命」と語っているように、サーシャがコーチとなってからプレイスタイル、メンタル、トレーニングなどすべてにおいて進化した。
全米オープンを観て、大坂の体が引き締まっている印象を受けた人が多いという。サーシャコーチとともに体幹を鍛え上げ、「勝てる体」へと改造した成果が表れているのだ。
フェドカップ日本代表監督の土橋登志久氏は、「トップを目指すという自覚の表れです。動きの良さが今後、もっと上がってくるでしょう」と解説する。
杉山愛、松岡修造も絶賛!
日本を代表するレジェンドプレイヤーたちも大坂のポテンシャルを絶賛している。
「私が選手だったら、絶対に当たりたくない選手。見るたびに成長を感じるすごい選手です」(杉山愛氏)
「いい意味で理解不能。プレイを観ていると楽しくて仕方がありません。ボクは彼女のテニスに釘付けになっています」(松岡修造氏)
松岡氏は全米オープンの開幕前、「なおみキャンドルが消えることがある」と語っていた。心の炎を灯し続けるメンタルの重要さを説いていたのだが、全米オープンでのなおみキャンドルは最後まで消えることがなかった。
愛用ラケットに問い合わせ殺到
大坂の快進撃を受け、用具契約を結んでいるヨネックス、アディダスにも問い合わせが殺到しているという。
伊達公子はメーカーに細かい注文をすることで知られていた。だが、大坂からメーカーにはほとんど注文がない。メーカーにとっては手のかからない選手なのだ。
大坂はシャイな性格でも知られ、メーカーへ挨拶に行った際、用意していたコメントを話すことができず、「ラケットのパワーとコントロール、OK」としか言葉がでなかった。
「では、ストリングについて」と聞かれると、「うん、同じ」で終了したという。
純粋なまでにセリーナを追いかけ続けた大坂。「全米オープン決勝でセリーナと戦う」という夢を、20歳最後のグランドスラムで達成した。
彼女の次なる夢とは? そして、ここでは語り切れなかった知られざる素顔とは?
現在発売中の『TJMOOK 女子テニス新時代 大坂なおみSpecial』で、大坂なおみの魅力に触れてもらいたい。
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