仕事をしていると、ときにはお断りをしなければならないことも。“お断り”は、言い方次第では相手を傷つけてしまう可能性もあります。そんな事態を招かない上手な断り方を、日本語の魔術師・山口謠司さんが教えてくださいました。
このコンテンツの監修者は……
【Profile】
山口謠司(やまぐち・ようじ)さん
1963年、長崎県生まれ。大東文化大学文学部准教授。博士(中国学)。テレビやラジオの出演も多く、NHK文化センター、朝日カルチャーセンター、中日文化センターなどでも定期的に講演や講座を開いている。『日本語を作った男 上田万年とその時代』(集英社インターナショナル)で第29回和辻哲郎文化賞受賞。『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)、『心とカラダを整える おとなのための1分音読』(自由国民社)など、著書多数。
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できないことを伝えるとき
×:やりがちな言葉遣い
「できません」
「無理です」
○:美人の言葉遣い
「いたしかねます」
「お引き受けできかねます」
「ご遠慮いたします」
「私の力では難しく存じます」
ワンポイントアドバイス
「ご容赦(ようしゃ)ください」は、もともと「どうか罪を免じてください」という謝罪の言葉だが、丁寧な断りの言葉としても便利に用いることができる。
否定形を断定形に変えてソフトな印象に
できないことを伝えるときには、相手を不快な気持ちにさせないような柔らかい言い回しを心がけることが必要です。いくら自分には無理だと思っても、「できません」と、ストレートに突っぱねるように断ってしまえば、お願いしてきた相手の面子(メンツ)を傷つけかねません。
だからといって、YESなのかNOなのか、はっきりしない曖昧(あいまい)な言い回しをすると誤解を招くことがあるので禁物です。
では、どうしたらよいかというと、否定形を断定形に変換してみるだけでも、相手への伝わり方は柔らかくなります。たとえば、「できません」なら、「お引き受けできかねます」「いたしかねます」「ご遠慮いたします」と変換するのです。
これらの言い回しにすることで、「自分の能力が及ばないので、できません」というニュアンスが含まれ、角が立たなくなります。
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自分の力不足を理由にすると角が立たない
角を立てずに断るためには、なぜできないのか、なぜ無理なのか、その理由をきちんと伝えることも大切です。
しかし、だらだらと理由を並べ立てては、ただの言い訳にしか聞こえず、「そこまでして引き受けたくないのか」と相手を不快な気分にさせてしまいます。
スマートに断りの理由を伝えるには、「私の力では難しく存じます」や「私の力では及び難(がた)く存じます」「私では荷が勝ちすぎるかもしれません」などの言い回しが好ましいと思います。 「不甲斐(ふがい)なくて申し訳ありませんが、いろいろと考えてみた結果、今の自分は力不足です。だから、引き受けられません」という長たらしい断りの言葉を端的にまとめてくれています。
また、自分の力不足を理由にした断りの言葉なので、相手の面子を潰(つぶ)すことがなく、相手への配慮を感じさせる言い回しです。
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答えられないことを伝えるとき
×:やりがちな言葉遣い
「わかりません」
○:美人の言葉遣い
「存じ上げません」
「わかりかねます」
「私の一存(いちぞん)ではお答えしかねます」
さらにステップアップ!
詳しい事情がよくわからないことを「不案内(ふあんない)」という。「その件については不案内なものですから、お調べしてからお答えします」などの遣い方をする。
謙譲語の「存ずる」を遣って丁寧な返答を
上司や取引先の人から「この件についてわかる?」と尋ねられることはよくあるでしょう。知っていれば問題ありませんが、困るのは知らないときです。「わかりません」「知りません」と答えるのでは、あまりにそっけなく、愛想がないように感じられます。目上の人への敬意にも欠ける印象を与えます。
こういうとき、社会人としては「存じ上げません」と答えると礼儀正しい印象を与えます。「存じます」は、「思います」や「知っています」の謙譲語です。「その件なら、よく存じ上げております」や「わたくしは存じませんが、ただいま聞いてまいります」などと遣うと、丁寧で品のよさを感じさせます。
ただし、「存じ上げません」という否定形は冷たい印象を感じさせる場合もあるので、気になる人は、「わかりかねます」と肯定形の言葉を選ぶとよいでしょう。
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相手を傷つけないように断るとき
×:やりがちな言葉遣い
「もうA社に決まっているんです」
「不採用です」
○:美人の言葉遣い
「今回はご遠慮いただくことになりました」
「今回は見送らせていただきます」
ワンポイントアドバイス
「見送らせていただきます」の「見送る」は「さし控える」の意味。「させていただく」は、「させてもらう」の謙譲語なので、二重敬語にはならない。
次回への期待をもたせる言葉で落胆を和らげる
取引先からの提案を断るとき、相手を傷つけずに不採用であることを伝えるにはどうしたらよいでしょうか。
「もうA社に決まっているんです」と告げるのは、たとえそれが事実でも、あまりにあけすけで相手への思いやりが足りないように思います。「不採用です」とストレートに告げるのも、相手の努力や苦労に対して冷淡な対応でしょう。
相手に配慮するなら、「今回は」というひと言をプラスしてみるとよいでしょう。次回へのチャンスを感じさせ、相手の落胆を和らげることができる言葉です。
また、「ご遠慮いただく」の「遠慮」は「遠くを慮(おもんぱか)る」という意味です。「先のことまで考えれば、チャンスがないわけではありません」というニュアンスを含むので、これも相手に次回への期待をもたせることのできる言葉です。
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書籍『美人は上品な言葉遣いでできている オトナ女子のための「語彙力」練習帳』
著者:山口謠司
イラスト/chieko
構成・編集/小西眞由美 西垣一葉(春燈社)
WEB編集/FASHION BOX
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