黄色や緑色の鼻水、2週間以上続く鼻づまりは、副鼻腔炎(ふくびくうえん)かもしれない!
「いくらかんでも鼻水が止まらない」「鼻がつまって息苦しい」。そんな鼻水や鼻づまりの多くは、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎が原因だそう。日本医科大学大学院医学研究科教授の大久保公裕先生に詳しくうかがった。
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ガマンと放置は避けよう。鼻の不調はきちんと治せる!
鼻は、味覚に比べてはるかに高度な仕組みを持つ嗅覚(きゅうかく)を担う大事な器官である。
また、呼吸器につながる空気の取り入れ口であり、肺に向かう空気を温め、湿度を保ち、ほこりの粒子や細菌、ウイルスなどの異物を除去するフィルターの役割も果たしている。
嗅覚に支障をきたせば、香りを楽しむことができず、味覚(みかく)にも大きな影響を与える。異臭を感じないことによる生活リスクも無視できない。嗅覚の衰えは脳の働きに悪影響を与えるという研究報告もある。
副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎は、さらにさまざまな合併症を引き起こす。
副鼻腔炎は、鼻腔(鼻の内側)に隣接する副鼻腔(鼻骨の中の空洞)に細菌やウイルスが侵入して起こる。
かつて、多くの子どもたちに見られた蓄膿症(ちくのうしょう)と副鼻腔炎は、ほぼ同じ病気といってよい。副鼻腔に膿(うみ)がたまる蓄膿症に対して、膿がたまるほどではない粘膜炎症も含めた疾患を副鼻腔炎と呼んでいる。
鼻水や鼻づまりといった、ありふれた症状として現れるため見過ごされやすいが、副鼻腔炎は実にやっかいな病気である。
不快な鼻水や鼻づまりが長期にわたるだけで、日常生活に支障が出る。膿性(のうせい)で粘りが強く、黄色や緑色の鼻水と、不眠、頭痛、顔面痛、歯痛などが2週間以上続いたら、急性副鼻腔炎のサインと考えていい。
これが慢性化した慢性副鼻腔炎となると、全身の不調につながり、さらに、さまざまな合併症のリスクが高まるのである。
嗅覚障害や味覚障害をはじめとして、鼻に隣接した目や耳、口、脳の障害となるリスクが高まり、失明や脳機能低下につながるという研究報告もある。鼻水がのど側に流れて気管に入ると、気管支(きかんし)ぜんそくやCOPD(慢性閉塞性〈へいそくせい〉肺疾患)を引き起こしかねない。
鼻で呼吸できないために、口呼吸に頼らざるを得ず、その健康リスクも多岐(たき)にわたる。裏を返せば、鼻呼吸は健康を保つ重要なキーワードなのである。
鼻づまりや鼻水を軽く見ず、きちんと治すことで、QOL(生活の質)が向上し、体全体の健康につながることを知っていただければ、幸いである。
そして、鼻水や鼻づまりが長期化したら、「風邪をひいたから内科」ではなく、鼻のトラブルも念頭に置いて、ぜひ耳鼻咽喉科を受診していただきたい。
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鼻の不調を治すと起こる“いいこと”
感染症を遠ざける
鼻呼吸をすると、口呼吸よりも湿った空気が肺に入るので、乾燥を好む細菌やウイルスの繁殖を抑制できる。その結果、風邪やインフルエンザなどの感染症を遠ざけることができるのだ。
脳が活性化する
鼻の周囲や粘膜には静脈が発達しており、鼻がつまると血流が悪化し、特に鼻と場所が近い脳は働きが悪くなる。鼻づまりを解消すれば、脳の性能ももとの状態を取り戻せるのだ。
疲れに強い体になる
鼻呼吸ができるようになると、口呼吸のときよりも酸素を効率よく体内に取り込むことができる。その結果、体内の必要な場所にきちんと酸素が届くため、疲れに強い体になる。
虫歯・歯周病を防げる
鼻呼吸ができるようになると、口を閉じていることで抗菌作用を持つ唾液(だえき)の量が増える。すると、口の中が清潔に保たれ、虫歯や歯周病、歯肉炎といった病気の予防につながる。
アレルギー性体質が改善
鼻毛や鼻の中の粘膜は、侵入する異物のおよそ70%をカットする。鼻呼吸ができるようになると、アレルギーの原因物質の侵入を減らすことができ、アレルギー体質の改善も期待される。
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このコンテンツの監修者は……日本医科大学大学院医学研究科教授 大久保公裕(おおくぼ・きみひろ)先生
【PROFILE】
医学博士。日本医科大学大学院耳鼻咽喉科卒業後、アメリカ国立衛生研究所(NIH)留学。日本医科大学耳鼻咽喉科医局長、教授などを経て現職。日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科部長、奥田記念花粉症学等学術顕彰財団理事長。著書に『クスリいらずで鼻はスカッとよくなる!』(扶桑社)、『花粉症は治せる! 舌下免疫療法がわかる本』(日本経済新聞出版)、『あなたの知らない 花粉症の治し方』(暮しの手帖社)など多数。
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(抜粋)
TJ MOOK『決定版! 副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎を治す名医のワザ』
編集・執筆/株式会社はる制作室、真瀬 崇、坂本夏子、黒澤 円、石野宏幸
執筆協力/常井宏平
写真・イラスト協力/shutterstock、photolibrary
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