生理前になると、過食、イライラ、腹痛など、さまざまな不調に悩まされていませんか?
とくに、生理前になると食欲が増す方は、つい食べすぎて後悔したり、我慢しすぎてイライラしたり、精神的な負担もあってつらいですよね。
このような、生理前にみられる心身のさまざまな不快症状のことを月経前症候群(Premenstrual Syndrome:PMS)とよびます。生理前は、妊娠に備えて女性ホルモンのバランスが変化することで、過食などのPMS症状があらわれやすくなるのです。
この記事では、生理前の過食の原因と対処法についてご紹介します。生理前の過食に上手く対処して、快適な毎日を過ごしていきましょう。
生理前のイライラは食事で改善!? PMSをおさえるコツを薬剤師が解説
PMSで過食が起こる原因
生理前にPMSによって過食が起こるのは、ホルモンバランスの乱れが原因と考えられています。
生理前は、食欲抑制作用をもつエストロゲンが減少し、食欲刺激作用のあるプロゲステロンが相対的に増えることで、過食が起こりやすくなるのです。
PMSによって過食をしてしまうと、PMS症状をさらに悪化させてしまうこともあるため、注意が必要です。
過食によって血糖値が急激に上がると、大量のインスリン(血糖値を下げるホルモン)が分泌され、血糖値が急降下します。このような血糖値の急激な変化によって自律神経が乱れることで、さらにイライラや過食が加速してしまいます。
女性ホルモンのバランスは日々の食事や生活リズムの影響を受けやすいため、普段から食生活を整えておくことが大切です。
PMS期の過食への対処法
PMSで食欲が止まらないのは仕方がない……と諦めている方も多いでしょう。しかし、とる食べ物を工夫するだけで、過食をコントロールできます。
ポイントは、栄養バランスがよい食事をとることと、血糖値が急上昇しないようにすることの2つです。
以下にPMS期の過食に対処する方法をご紹介します。
バランスよく栄養を摂る
まずは3食の食事をバランスよくとりましょう。
3大栄養素(タンパク質、炭水化物、脂質)を万遍なく含む食事で栄養バランスを整えることで、ホルモンバランスの乱れも整いやすくなります。
血糖値の上昇が緩やかな食べ物を摂る
おなかが空いたときに、血糖値の上昇が緩やかな食べ物をとるようにすると、過食が続く悪循環を防ぐことができます。
3大栄養素のなかでもタンパク質は、血糖値を安定させて満腹感をもたらしてくれるので、食欲が抑えられないときにおすすめです。次のような、高タンパクで低糖質な食材を積極的に摂るようにしましょう。
<高タンパクで低糖質な食材>
卵、チーズ、ちくわ、ソーセージ、プロテインなど
PMSの諸症状を食事で改善する方法
過食だけではなく、イライラ、腹痛、むくみなどPMSの諸症状も改善できたらうれしいですよね。食事を改善すれば、過食だけでなくPMSの諸症状も改善を目指せます。
そこで、PMSに効果的な食生活のポイントをご紹介します。
バランスのよい食事をとろう
食事のバランスは、ホルモンバランスに影響します。次のような食事のポイントをおさえて、ホルモンバランスを整えましょう。
<食事のポイント>
・大豆製品、魚、海藻などを積極的に摂る
・脂肪分、糖分、塩分、カフェイン、アルコールを摂りすぎない
ポイント1 大豆製品、魚、海藻などを積極的に摂る
大豆製品に含まれる「大豆イソフラボン」には、女性ホルモンを調節して変動を和らげるはたらきが期待できるといわれています。また、魚や海藻には、PMSに効果的なミネラルやビタミンなどが豊富に含まれているので、積極的に摂るように心がけましょう。
ポイント2 脂肪分、糖分、塩分、カフェイン、アルコールを摂りすぎない
脂肪分の摂りすぎは、体重増加や肌荒れにつながります。糖分の摂りすぎも、血糖値が急激に変動してPMS症状が悪化しやすくなるといわれているので、注意が必要です。
塩分やカフェイン、アルコールも、むくみや緊張感、イライラなどにつながるため、摂りすぎないように気をつけましょう。
食べ方に気をつけよう
血糖値の急激な上昇を防ぐためにも、次のような食べ方のポイントを押さえましょう。
<食べ方のポイント>
・欠食をしない
・食べる順番を意識する
・よく噛んでゆっくり食べる
・食べ過ぎない
食事の際は、「食物繊維(野菜、きのこ、海藻など)」→「タンパク質・脂質」→「炭水化物」の順番で食べると血糖値が急上昇しにくくなります。
また、よく噛んでゆっくり食べることで、血糖値の上昇が緩やかになるだけでなく、満腹感も得やすくなります。
ホルモンバランスは漢方で調整するのもおすすめ
PMSのケアに、漢方薬を取り入れるのもおすすめです。PMSに効果が認められている漢方薬もあり、実際に産婦人科でPMSの治療に多く使われています。
漢方薬は、体質そのものにはたらきかけるとともに、自律神経を安定させてホルモンバランスを整え、心身の健やかな状態を目指します。
PMSの影響で食べすぎてしまうのは、イライラが原因であることも。そうした場合にも、漢方薬はホルモンのバランスを整えることで神経の高ぶりを抑え、イライラを改善し、ストレスで過食しない体質へと導きます。
「健康的な食事を毎日続けるのが大変……」という方でも、漢方薬なら、自分の症状や体質に合うものを毎日飲み続けるだけなので、気軽に継続しやすいでしょう。
<PMSに悩む方におすすめの漢方薬>
漢方では、PMSは主に「血(けつ・血液)」の流れが滞る「瘀血(おけつ)」から起こると考えられ、次のような瘀血を改善する漢方薬が用いられます。
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):冷えやめまい、むくみなども気になる方に
産婦人科の三大漢方薬のひとつで、「血」の不足を補い、巡りをよくしてからだを温めてくれます。
・加味逍遙散(かみしょうようさん):イライラや不安、肩こりなども気になる方に
産婦人科の三大漢方薬のひとつで、「瘀血」を取り除いたり、「気(き・生命エネルギー)」の巡りをよくしてくれます。
このような効果が認められている漢方薬でも、その人に合っているか否かが重要なポイントです。合わないものを服用すると、効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。服用前に、漢方に詳しい医師や薬剤師等に相談するようにしましょう。
最近では、症状と体質に合った漢方薬を漢方に精通した薬剤師に選んでもらえる「あんしん漢方(オンラインAI漢方)」という、AIを活用したオンライン相談サービスも登場しているので、利用してみるのもいいでしょう。
スマホから、専門家への個別相談を気軽に申し込むことができますよ。
食事を上手に楽しみながらPMSを乗り切りましょう
PMSは、毎月憂うつな気分になる、つらい症状です。とくにPMSが原因で起こる過食は、我慢をするとイライラにつながることもあります。そのため、我慢しすぎずに、高たんぱくで低糖質な食材で満腹感を得るなどして、上手に対処することが大切です。
さらに、バランスのよい食事を心がけたり、食べ方を工夫したりして、食生活全体を整えると、PMSの諸症状の改善につながります。専門家に相談して漢方薬を取り入れて、体質から根本的な改善を目指すのもいいでしょう。
食事を上手に楽しみながら、PMSを乗り切っていきましょう。
教えてくれたのは……あんしん漢方 木村 眞樹子
【Profile】
医師
医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事。
妊娠、出産を経て、産業医としても活動するなかで、病気にならないからだをつくること、予防医学、未病に関心がうまれ、東洋医学の勉強を始める。
臨床の場でも東洋医学を取り入れることで、治療の幅が広がることを感じ、西洋薬のメリットをいかしつつ漢方の処方も行う。
また、医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。
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