ホルモン補充療法と漢方を知ろう/ホルモン補充療法
近年盛り上がりを見せているフェムテックやフェムケア。女性が抱える健康課題は、『大人のおしゃれ手帖』世代の更年期も当てはまります。 今回は、更年期の代表的な治療法のホルモン補充療法について、産婦人科医の高尾美穂先生にお聞きしました。
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症状に見合った治療が更年期後も健やかに過ごす鍵
「女性は、ホルモンの大きな波の影響を生涯受け続けます。特に更年期(閉経前後の10年間)は体が激変し、さまざまな不調が現れます。歳のせいとやり過ごさず、婦人科に相談を」と産婦人科医の高尾先生。婦人科では主に、ホルモン補充療法(HRT)と漢方治療を提案することが多いそう。
「ホルモン補充療法とは、減少した女性ホルモン(エストロゲン)を補い、異常発汗や動悸などの症状を和らげる、即効性のある治療法。更年期症状の緩和だけでなく、美肌効果や健康維持にも大いに役立ちます。日本ではまだまだ認知度が低いからか治療を受ける人は少数ですが、産婦人科学会で認められている確かな治療法なんです。
一方、私たちにも身近な漢方治療は、体質に合わせて穏やかに改善する治療法。イライラ、疲れやすさ、めまい、不眠、うつといったメンタル症状に効果を発揮します。
今まさに悩んでいる人も症状にあった治療法がきっと見つかるはず。そのためにも、まずは専門家に相談するのがベストです。人生100年時代、更年期の適切な対策を講じることができれば、先の人生まで健やかに過ごすことにもつながりますよ」
更年期症状の治療チャート
【START】
更年期症状がある人
↓
【閉経している】→ホルモン補充療法
【月経がある】→血液検査
↓
【女性ホルモンが正常値】→漢方治療
【卵巣機能が低下気味】→ホルモン補充療法
改善される症状
急激な暑さやめまいが襲う ホットフラッシュ
のぼせやほてり、異常発汗など、俗にいうホットフラッシュは、エストロゲンの減少により、体温を調節している自律神経が乱れることで起こります。HRTを2か月程度継続すると、およそ9割の人が改善傾向に。
潤わせることでトラブルを改善 膣委縮や性交痛
閉経後は、膣の内壁が乾燥しやすくなり、粘膜も弱くなります。膣剤でエストロゲンを補うと膣の粘膜に潤いを取り戻すことができ、萎縮性膣炎や萎縮外陰炎などの予防につながります。性交痛の緩和にも効果的です。
骨密度をキープし骨折を防ぐ 骨粗しょう症予防
閉経を境に骨量は減少の一途。骨密度も急激に低下し、骨はどんどんもろくなります。エストロゲンを補うことで骨量を維持することが可能に。また、関節の軟骨のすりへりや骨の変形、手指の痛みや腫れ、動かしにくさなどを伴う変形性関節症の改善にもつながります。
骨密度の変化
月経周期が乱れてきたらホルモン補充療法の始め時
30代後半から分泌量が減り、更年期に入ると急激に減少するエストロゲン。閉経直前は乱高下し、閉経後にはなんと男性よりも低い値になるという報告も。
「更年期の不調の多くは、卵巣でエストロゲンを作れなくなることが原因で起こります。そんな足りなくなったエストロゲンを物理的に補おうというのがホルモン補充療法(HRT)の考え方。ごくわずかなホルモン剤を経口薬や経皮薬などで補う治療で、ホットフラッシュや骨粗しょう症といったエストロゲン値の低下で引き起こされる症状に効果を発揮します」
ホルモン補充療法を開始するタイミングは、閉経前か閉経後早期がベストだそう。
「まだ閉経していなくても、月経周期が乱れ始め、『これって更年期かも』と感じる症状を自覚したら、婦人科に行くタイミングと捉えましょう。ホルモン補充療法を受けるにあたって注意が必要な人もいますが、健康であればほとんどの女性が受けられます。また、閉経後にかかりやすい生活習慣病の予防にもつながるので、健康維持のために治療を続けていくのもありです」
ほかにもこんな作用が!
肌のハリ感
エストロゲンは皮膚の潤いや弾力を保つコラーゲンの産生を促進。HRTで補うことで、コラーゲンの産生を助け、みずみずしくハリのある肌をキープする。
快適な眠り
体のリズムを整え、安眠に導く脳の神経伝達物質・セロトニンの分泌量は、エストロゲンの分泌量と連動。HRTによって眠りの質の向上につながる。
メンタルの安定
抗うつ作用のあるエストロゲンが充分に分泌されていると、自律神経が安定し、副交感神経が優位に。気持ちが落ちつくだけでなく、集中力の回復にも。
生活習慣病予防
血管の柔軟性、血圧の安定、血糖値の改善により動脈硬化の予防に。唾液の分泌量が増えることで口腔内が潤い、歯周病の予防など、生活習慣病を未然に防ぐ。
選べる処方薬
ホルモン補充療法の主体は、処方されたホルモン剤を自分で使う方法。ライフスタイルや目的に合わせて処方薬を選びます。
1:貼るタイプ
貼り薬(パッチ)を貼ると、皮膚から直接血管に吸収される。2〜3日に一度貼り替えるだけの手軽さが魅力。経口薬に比べて胃腸や肝臓への負担が少ない。
2:飲むタイプ
1日1回程度錠剤を服用。胃から腸へと移行した後、肝臓に到達してから血中へと取り込まれる。薬の増量や減量が簡単。胃腸や肝臓の弱い人には不向き。
3:塗るタイプ
1日1回程度、ジェルまたはクリーム状の薬を体に塗り、皮膚から血管に吸収させる。貼り薬と同様、胃腸や肝臓への負担が少ないのがポイント。
4:入れるタイプ
外陰部のかゆみや乾燥感、性交痛など、陰部の症状が強い場合に膣剤を用いる。ピンポイントにアプローチできるので効果が高く、効き目がわかりやすい。
《Caution!》注意が必要な人もいます!
□乳がん、子宮がん、卵巣がんにかかっている。またはその疑いがある、既往歴がある。
□子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症にかかっている。または既往歴がある。
□性器から不正出血がある。
□血栓性の疾患にかかっている。または既往歴がある。
□肝障害や腎障害がある。
□狭心症、心筋梗塞、脳卒中にかかっている。または既往歴がある。
□高血圧、糖尿病である。
□乳腺症がある。
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教えてくれたのは……産婦人科医 高尾美穂先生
【PROFILE】
女性のための統合ヘルスクリニック「イーク表参道」副院長。医療・ヨガ・スポーツの活動を通じ、専門知識をわかりやすく伝える啓発活動に取り組む。
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illustration:River Rie(Softdesign)
text:Maki Nagai
(大人のおしゃれ手帖 2022年6月号)
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