2019年6月に金融庁から出された報告書がマスコミや国会で取り上げられ、話題になった「老後2000万円問題」。「老後に2000万円必要」とした、その報告書って、どんなことが書いてあったの? お金のプロである井戸美枝さんと藤川太さんにざっくり解説してもらいました。
「老後2000万円問題」ってどういうことだったの!?
話題になった金融庁の報告書は、「人生100年時代」に人生設計が大きく変わることが大前提で、これまでは老後を80歳まで考えればよかったのが、90歳、100歳までになったときに出てくる問題を扱っています。
「老後資金に2000万円必要」といっても、それで足りる人もいれば、足りない人もいますよね。仮に2000万円を準備するとしても、貯蓄や退職金も含めれば、そんなに無理な金額ではないです。
この報告書の注目すべき点は、長く働くとか、支出の削減とか、ライフプランの見直しをしましょう、と書いてある点です。金融庁が「長く働いたほうがいい」というのは、画期的なこと。確かに、働くことで老後のかなりの部分が解決できると思います。
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老後のお金の解決策
老後のお金の解決策は大きく分けると、①長く働くこと、②収入を増やし支出を減らして収支のバランスを取ることの2つです。①は、われわれがマネープランのシミュレーションをいくつもしてみて、効果が間違いないもの。②は、家計管理の基本中のキホンです。報告書には、できれば現役期から支出を見直して、バランスの取れた家計にしていこうということも書いてあります。
家計の収支バランスは大事ですが、それ以前に収入が増えていないという問題があります。税金や社会保険料の負担も増えていますからね。
収入が減るとそれに合わせて支出が減るのが一般的です。若い人はこの20年くらいずっと支出を絞ってきています。しかし、高齢者は同じように収入が下がっても支出は横ばいなのです。これはなぜかというと、若い人の家計の見直しは、固定費を削ることで達成できますが、高齢期になると、住宅ローンや教育費が終わっていて、通信費ももともとそれほどかかっていないので、削れる固定費がないのです。生活レベルに直結するやりくり費は見直しがたいへんなため、高齢期の家計の見直しは難しいのです。
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運用で得る利益より、働いた給料のほうが確実
健康寿命が伸びて、元気な時期も長くなるから、やはり働けるうちは働いたほうがいいです。お父さんたちは定年後に家にこもっているより、外に出たほうが精神的にも健康にもいいかもしれません。しかし、現役期のようにプレッシャーを感じて働く必要はありません。マイペースで続けられるくらいでOKです。
高齢期は公的年金が入ってくるため、収入がゼロにはなりません。65~70歳まで、不足する月額5万円、年間60万円分働けると、貯蓄を取り崩す時期を遅らせられます。働き方も体力や気力に合わせて変えながら続けて、心地いいところで働きましょう。何か周りの人から頼まれるようなことを作っておくと強みになりますね。運用も大事ですが、決まって利益が入ってくるわけではないので、給料のほうが確実です。
運用で増えるのはプラスαの部分で、運用だけで2000万円が貯まるわけではありません。収支のバランスを取って、家計が赤字にならないようにしながら、働いた給料の一部を積み立てることがメインです。その一部を運用に回すことで、2000万円まで到達するスピードが早くなるとか、その程度です。
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このコンテンツの監修者は……
井戸美枝さん
【Profile】
ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士、経済エッセイスト。講演や執筆、メディア出演などで、年金やライフプラン、資産運用などについての情報を発信している。『100歳までお金に苦労しない 定年夫婦になる!』(集英社)など。
藤川 太さん
【Profile】
生活デザイン株式会社代表取締役、ファイナンシャルプランナー。「家計の見直し相談センター」での相談業務、講師、メディアへの出演などで活躍。著書に『年収が上がらなくてもお金が増える生き方』(プレジデント社)など。
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(抜粋)
TJ MOOK『これで安心! 老後の2000万円を貯める本』
監修:藤川 太
企画協力:生島典子
編集協力:恩田康信(ブルーラグーン)、中山壮太(ブルーラグーン)
執筆協力:生島典子、坂本君子、高橋晴美、タケイ啓子、長尾義弘、畠山憲一、馬養雅子、森谷健一
写真提供:ピクスタ
表紙イラスト:Inspring / Shutterstock.com
WEB編集:FASHION BOX
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