近年、時計価格の高騰が原因で時計愛好家が育たないといわれる。だがしっかり探すと優れた機能を持ちつつリーズナブルなメーカーもジワジワ増加中。今回は、そんな良心ブランドのコレクションからコストパフォーマンスに優れるモデルをピックアップ。時計ジャーナリストの名畑政治さんと渋谷ヤスヒトさんが注目する、価格を超える価値あるモデルとは?
≪目次≫
●ルックスも機能も満足できるハイ・コストパフォーマンスな一本を
●名畑政治が選ぶU50万円注目の3本 01.「誰にでもオススメできる圧倒的なコスパ!」
●名畑政治が選ぶU50万円注目の3本 02.「冒険心をかきたてるタフさを極めたモデル」
●名畑政治が選ぶU50万円注目の3本 03.「新進ブランドながら機能と安定性はピカイチ」
●渋谷ヤスヒトが選ぶU50万円注目の3本 01.「名門の伝統と風格が漂う、定番デザイン」
●渋谷ヤスヒトが選ぶU50万円注目の3本 02.「ブラック&イタリアンカラーの色合わせが新鮮」
●渋谷ヤスヒトが選ぶU50万円注目の3本 03.「イタリアが誇る本格クロノグラフ」
●教えてくれたのは……
ルックスも機能も満足できるハイ・コストパフォーマンスな一本を
渋谷ヤスヒト(以下、渋谷) トレンドの復刻モデル以外にも、今年ぜひ注目したいのが「このスペックで本当にこの価格!?」と驚かずにはいられない“価格を超えた価値がある”クロノグラフです。
名畑政治(以下、名畑) 1990年代から時計の製品価格は高くなる一方。クロノグラフでもお手頃価格というと、クォーツムーブメントのものしかなかった。
渋谷 でもここ数年、世界的な時計ブームが落ち着いたこともあって、アンダー50万円でも、機械式のクロノグラフが続々と出ています。これはかなり画期的なことですよね。
名畑 お手頃価格だけに、搭載ムーブメントはマニュファクチュール・キャリバーではなくて、汎用ムーブメント。でも汎用ムーブメントだからダメ、ということはない。
渋谷 長年作り続けられ使われてきて、問題点も解決されていますから、トラブル、つまり故障も少ない。
名畑 だから安心してオススメできる。
渋谷 こうした価格でも、シースルーバックのケース裏から見えるムーブメントの仕上げを見ても、自動巻きローターを独自のスタイルに仕上げているモデルも珍しくありません。
名畑 文字盤やケース、ブレスレットなどのディテールの仕上げも、価格を超えた良心的なものも。たとえばイエマの『スピードグラフ』。
渋谷 イエマって、フランスを代表するスポーツウォッチブランドでした。一時消えてしまいましたが、2005年に復活していたんですね。搭載ムーブメントは日本製! ディテールも見事な仕上がりです。
名畑 放射性のトリチウムを封入した自発光性の「マイクロ・ガスライト」を針やインデックスに使って、本当の暗闇でも時刻がハッキリ読めるボールウォッチのこのモデルも、とてもこの価格とは思えない完成度でオススメ。
渋谷 時計製造を家業にする一家に生まれ、時計ブランドで実績を積んだ人物が独立起業して生まれたノルケインのクロノグラフも、とても40万円台とは思えないですね。
名畑 ロンジンは復刻モデルブームをリードするブランドで、復刻版のクロノグラフの新作もいいけれど、このクラシックスタイルの「マスターコレクション」も価格を超えた驚きの完成度。
渋谷 ムーブメントも同じグループで、最も歴史と実績のある汎用ムーブメント会社ETA社製だから安心です。
名畑 セイコーの『プレザージュ』はムーブメントはシンプルだけれどこの価格で自社製、つまりマニュファクチュール・キャリバーだというのも魅力。
渋谷 イタリアのロックマンのこのクロノグラフも、実際にイタリア・エルバ島の海に面した本社工場で見ましたが、自社内で組み上げた自社製ムーブメントを使っていて、この価格です。
名畑 どれも、初のクロノグラフをという人はもちろん、誰にでもオススメできる。どんなシーンで使うかを考えて選んでもらえれば、と思います。
2020年“買い”のクロノグラフはこれ! 時計ジャーナリストが今年注目の新作ウォッチを大公開
名畑政治が選ぶU50万円注目の3本
01.「誰にでもオススメできる圧倒的なコスパ!」
フランスの伝統的時計ブランド「イエマ」の名を継承し、1960年代に製造された古典的クロノグラフにインスパイアされて生まれたモデル。リーズナブルながら仕上げもよく、何より60年代そのままのクラシックさが抜群。ラリースタイルの穴あきストラップもピタリと決まっている。
YEMA(イエマ)
スピードグラフ
¥209,000
問い合わせ先:イエマジャパン 03-5875-8810
SPEC:ケース径39mm、10気圧防水、自動巻き、パワーリザーブ45時間、SSケース、ラリーレーシングスタイル・ヴィンテージストラップ
<60年代テイストを見事再現>
ブラックのベースにホワイトのインダイヤルを配置したハイ・コントラストなダイヤル。針のスタイルもまさに60年代。
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名畑政治が選ぶU50万円注目の3本
02.「冒険心をかきたてるタフさを極めたモデル」
ツーインダイヤルは普通、ヴィンテージ系だが、マイクロ・ガスライトを封入した高輝度インデックスや気密性を高めるセーフティロック・クラウンシステムなどで、古典と現代性を絶妙に融合。しかもスペックを考えると破格とも思えるプライスだ。
BALL WATCH(ボールウォッチ)
レーサー クロノグラフ
¥350,000
問い合わせ先:ボール ウォッチ ジャパン 03-3221-7807
SPEC:ケース径42mm、10気圧防水、自動巻き、パワーリザーブ約38時間、SSケース、SSブレスレット
<防水性を確保する独自機構>
リューズにはセーフティロック・クラウンシステムを採用。これによって気密性を高め10気圧防水を確保する。
名畑政治が選ぶU50万円注目の3本
03.「新進ブランドながら機能と安定性はピカイチ」
2018年に誕生したスイスの気鋭ブランド・ノルケイン。「アドベンチャー」と命名されたコレクションの特徴はスポーティさとタフネス。ダイヤルにはノルケインのロゴ・パターンを刻み、視認性を向上。ケース側面のプレートに刻印することもできる。
NORQAIN(ノルケイン)
アドベンチャー スポーツ クロノ オート
¥418,000
問い合わせ先:ノルケイン・ジャパン 03-6864-3876
SPEC:ケース径44mm、10気圧防水、自動巻き、パワーリザーブ48時間、SSケース、ラバーストラップ
<10気圧防水+シースルー仕様>
搭載されるムーブメントはノルケインキャリバーNN18(ETA7753)。独立した日付早送りボタンを備えている。
渋谷ヤスヒトが選ぶU50万円注目の3本
01.「名門の伝統と風格が漂う、定番デザイン」
スイスで初めて近代的な時計の生産体制を確立。アンティークの世界では「クロノグラフの名門」として知られ、現在は、過去の名作を現代の技術でリーズナブルな価格で実現した復刻モデルで人気のロンジン。このクラシックな新作はそのセンスが遺憾なく発揮された1本。
LONGINES(ロンジン)
マスターコレクション
¥343,000
問い合わせ先:ロンジン 03-6254-7351
SPEC:ケース径42mm、3気圧防水、自動巻き、パワーリザーブ約54時間、SSケース、アリゲーターストラップ
<美しいサンレイブルー文字盤>
ダイヤルカラーは定番のブルーでサンレイ仕上げ。インデックスはシンプルなバータイプでスーツとの相性も完璧。
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渋谷ヤスヒトが選ぶU50万円注目の3本
02.「ブラック&イタリアンカラーの色合わせが新鮮」
1992年に公開された宮崎駿監督の傑作アニメ映画『紅の豚』の世界を表現した限定モデル。文字盤はホーロー製で、主人公の愛機「サボイアS-21」の尾翼のイタリアンカラーやプロペラの形が3時位置のスモールセコンドに。
SEIKO(セイコー)
プレザージュ スタジオジブリ 紅の豚 コラボレーションモデル
¥400,000 世界限定600本
問い合わせ先:セイコーウオッチ お客様相談室 0120-061-012
SPEC:ケース径42mm、10気圧防水、自動巻き、パワーリザーブ約45時間、SSケース、クロコダイルストラップ、交換用ストラップ&BOX付き
<自社製ムーブを搭載!>
マニュファクチュール・ムーブメント「キャリバー8R48」を搭載。裏蓋には主人公ポルコ・ロッソの顔が。
渋谷ヤスヒトが選ぶU50万円注目の3本
03.「イタリアが誇る本格クロノグラフ」
地中海のリゾート・エルバ島に本拠を置くイタリア唯一とも言える本格時計ブランドの本格クロノグラフは、独自のスポーティなスタイルのケースに、海辺のファクトリーで作るマニュファクチュール・ムーブメントを搭載。
LOCMAN(ロックマン)
モンテクリスト クロノグラフ オートマチック デイト
¥259,000
問い合わせ先:ロックマン ジャパン 03-6264-5552
SPEC:ケース径44mm、100m防水、自動巻き、パワーリザーブ約40時間、SS&チタンケース、レザーストラップ
<貴重なイタリア製ムーブ>
搭載されるムーブメントは名機ビーナスを参考に自社開発したもの。イタリア製の自社製ムーブは貴重な存在だ。
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教えてくれたのは……
名畑政治さん
【Profile】
1959年、東京都生まれ。1980年代半ばからライターとして活動開始。アウトドア、カメラ、ファッション、時計などの分野で豊富なコレクションをソースとして取材・執筆。1994年からスイス時計見本市の取材を欠かさず継続。
渋谷ヤスヒトさん
【Profile】
1962年、埼玉県生まれ。徳間書店で文芸編集者を経て月刊モノ情報誌『GoodsPress』編集部。副編集長を経て退社後、『エスクァイア日本版』編集部を経て独立。1995年からスイス時計見本市の取材を現在も継続中。
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文/名畑政治、渋谷ヤスヒト
撮影/木村武司
(MonoMaster 2020年8月号)
WEB編集/FASHION BOX
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