物事に対して人より敏感で、細やかな感性を持っている「繊細な人」。それゆえに「自分はなぜみんなと違うんだろう?」 と子どもの頃から悩んできた人も多いでしょう。しかし、その繊細さは自然界において必要なパワーなのです。
「繊細」なパワーの必要性をきちんと理解することで、 欠点は美点に変わります。自分の特性の悪い面ばかりを気にするのではなく、ポジティブに捉えることが大切です。
≪目次≫●人間や動物の世界では、生き抜くために「繊細」なパワーが必要だった
●「繊細な人」は世界の総人口の20%の割合で常に存在している!
●欠点だと思っていたことはすべて長所の裏返し
●教えてくれたのは……
人間や動物の世界では、生き抜くために「繊細」なパワーが必要だった
自然界では、危険を敏感に感じ取る役割を担う存在が必要とされているため、霊長類をはじめ、犬、猫、コバエに至るまで、100種類以上の生き物にHSPの気質を持つ個体がいます。
「繊細な人」は世界の総人口の20%の割合で常に存在している!
これまで自分と同じような人が周りにいなくて悩んでいたかもしれませんが、実は繊細な気質を持った人は世界の総人口の20%も存在しています。これは5人に1人もの割合。自分と同じような悩みを持つ人が、もしかしたらあなたのすぐ隣にいるかもしれません。
繊細な能力は生まれながらに備わった生きるために必要な特別な力
人類には約20%の割合で、生まれながらに刺激に敏感でとても繊細な気質を持つ人たちがいます。これは1990年代の初頭にアメリカの臨床深層心理学博士、エレイン・アーロン氏の研究により明らかにされました。彼女はこのような繊細な特性を持つ人を「Highly Sensitive Person」(人一倍繊細な人)と呼び、その頭文字をとって「HSP」と名づけました。
HSPという名前を聞くと病名のように感じてしまうかもしれませんが、これは病気ではなく生まれつきの気質。人間特有のものではなく生物の生き残り戦略の一つとして、あらゆる生物に備わっています。野生の世界では、繊細な能力を持った個体が危険を察知し、行動を起こす前に慎重になったり、群れを守るために重要な役割を果たしています。人間の世界では、その繊細な能力はストレスのもととなる場合が多く、足枷(あしかせ)のように感じますが、実はとてもすばらしい能力なのです。
欠点だと思っていたことはすべて長所の裏返し
繊細な人の特性は、すべて良くも悪くも社会生活に影響します。
だからこそ、この特性を上手に生かせば、いいとこ取りも可能なのです。
考えすぎる/思慮深い
考えすぎて行動に移せないデメリットもありますが、物事をいったん自分の中に受け止めて、深く考察して答えを出すことができます。早合点などの間違いも防げます。
傷つきやすい/感受性豊か
相手の何気ない言葉にすぐに傷ついてしまったとしても、うれしいことやよかったことに対しても、同じく心が大きく動かされます。人間的で情緒的な特性です。
八方美人/バランサー
空気を読んで周囲のニーズに対応できるので、八方美人と陰口を叩かれることも。しかし、空気を読んで気を配るという長所でもあるので、チームのいい潤滑油にもなれます。
神経質/心遣いがこまやか
細部まで気がつくため、神経質だと思われることもあります。しかし、自分自身もそう感じているかもしれませんが、裏を返せば気配り上手ということ。周りにこまやかな配慮ができます。
内気/性格が穏やか
引っ込み思案で人前でハキハキしゃべるのは苦手なのですが、温和で穏やかな印象を与えることができます。話しすぎないのも相手に信頼感を与えます。
臆病(おくびょう)/リスク管理力が高い
怖がりで新しいことにチャレンジするのは苦手でも、何かをするときは慎重に物事を運ぶことができます。失敗やミスが少なく、リスクを回避するのが得意です。
見方を変えるだけで欠点は美点に様変わりする
現代社会では、繊細な人は生まれた瞬間から、その特性のために悩みを抱えています。その繊細な特性にも強弱があるため、抱えている悩みの深さも人それぞれ。自分なりに工夫するだけで社会生活に影響のない人もいれば、繊細な特性が強く社会になじめない人もいます。いろいろな刺激に敏感すぎて神経質と言われたり、同時にこなさなければならない仕事に圧倒されてパニックを起こしたり、繊細ではない人が経験したことがないような困難な状況に立ち向かわねばなりません。そして、悩みが深ければ深いほど、繊細な特性を欠点だと思い込み、「自分は普通ではない。治したい」と感じているのではないでしょうか。
しかし、そう感じてしまうのは、自分自身がその特性を十分に理解していないからです。長所と短所は表裏一体というように、見方を変えるだけで欠点は美点にガラリと様変わりします。
見方を変えるためには、自分の繊細な能力について知ることが大切です。HSPは病気ではないため治療法はありませんが、生きづらさや悩みを克服する手段があるとすれば、自分の特性を知り、悩みをどんどん薄めていくこと。すると、欠点を修正することなく、繊細な自分のままで楽に生きられるようになるのです。
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教えてくれたのは……
新宿ストレスクリニック 名古屋院院長
本 将昂(もと・まさたか)先生
【Profile】
精神保健指定医。日本精神神経学会認定精神科専門医。
2011年、京都大学医学部卒業。京都大学医学部附属病院精神神経科、大阪赤十字病院精神神経科、関西青少年サナトリューム、新宿ストレスクリニック 梅田院勤務を経て、2018年8月より新宿ストレスクリニック 名古屋院院長に就任。患者一人一人の悩みと向き合うていねいなカウンセリングと診療に定評がある。
新宿ストレスクリニック
新宿ストレスクリニック 名古屋院
(抜粋)
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監修:本 将昂
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構成・文 大橋美貴子
イラスト モリナオミ
編集 入江弘子
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