トヨタにメカニックとして入社し、現場を経験するなかで数々の「トヨタイズム」を叩きこまれた、原マサヒコさん。『トヨタで学んだ自分を変えるすごい時短術』(かんき出版)などを著書にもつ同氏が、日本トップ自動車メーカーのトヨタが有するノウハウを、ビジネスではなく部屋作りに応用。成功を手に入れるための生活空間の作り方について解説します。
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世界中の成功者が夢中なトヨタのノウハウ
世界的に飛躍を続ける自動車メーカーのトヨタ。そのノウハウは、楽天やヤフーなどの国内トップ企業にとどまらず、アマゾン、マイクロソフトなど海外のトップ企業もお手本にしているほどです。
トヨタで何よりも重視されているのは「動線」。動線を合理的に整えることで、ムダな時間を徹底排除しています。このトヨタの“動線思考”には、ビジネスはもちろん、部屋作りにも応用できるポイントが多々ありました。
運もツキも迎え入れられる体制を作る
元トヨタ自動車工業の社長・会長・相談役で、戦後のトヨタ自動車の建て直しをし「トヨタ中興の祖」と呼ばれていた石田退三氏の言葉に、「運もツキも、迎え入れられる体制が整えられているかが大事だ」というものがあります。多くの人は一日を「目の前の仕事をこなすこと」に費やしています。しかし、一日に15分でも30分でもいいから「未来のために時間を使う時間」を作ることこそが“入念な準備”につながります。部屋作りを見直すことでムダな時間を省き、未来のための時間を捻出しましょう。
成功に近づくための掟、トヨタ式「5S+3定」
トヨタの成功の基本「5S」
整理……不要なものを見極め、捨てること
整頓……動線を考えながら並べ、収納すること
躾(しつけ)……整った環境を保てるよう、習慣化すること
清潔……きれいな状態をキープすること
清掃……汚れを取りながら、現状を点検すること
トヨタのモノの配置の大原則「3定」
定位置……決まった場所に
モノの置き場所を決めておきます。探す必要がなく、迷わず手に取れる場所に置き、使い終わったら必ずそこに戻します。
定品……決まったモノを
「この場所にはこれを置く」と、場所とモノを連動させます。他のモノが置かれているのはご法度!
定量……決まった量
モノの量は、一定の量を超えないようにします。新しいモノが加われば古いモノは捨て、循環させます。
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トヨタのノウハウを応用! 「成功するための部屋作りの法則」
法則1:まず初めに作業時間を測りなさい
どこにどれだけ時間がかかっているのか、まずは現状把握。トヨタでは、定期的に従業員の作業時間を細かく計測します。もちろんこれは、「遅いからこの人はダメ」と判断するためのものではありません。ひとつの作業にかかっている時間を調べ、それをいかに減らしていくかを考えるための材料にするのです。これはトヨタだけでなく、ソフトバンクなど、製造業ではない大企業も採用しています。
家の中でも応用可能です。作業時間を減らせれば、自分のための時間が増えます。家事にかかる時間を計測するなんて! と思う人もいるかもしれませんが、基準がなければ短縮できたかどうかもわからないもの。まずは現状を把握しましょう。
部屋作りに応用→玄関に入って一段落するまでの時間を測る
家に帰ってきて鍵を置き、荷物を置いて上着を脱ぎ、手洗い・うがいを済ませて一段落するまでの時間を測り、そこを短縮できるよう動線を見直してみましょう。
法則2:「なぜ」をぶつけて問題を掘り下げなさい
「なぜ」という問いかけを繰り返す、トヨタの「なぜなぜ分析」。「なぜ」を掘り下げていくことで、根本的な問題を明らかにします。実は、Amazon創業者のジェフ・ベゾスもこの「なぜなぜ分析」を実践していた成功者のひとりです。物流倉庫に足を運んでは、従業員たちに「なぜ」をぶつけ、常に現場の改善に努めていたのです。
家の中で感じる非効率性や居心地の悪さにも、必ず理由があるはずです。1回の「なぜ」では本質にたどりつけないので、何度も繰り返して掘り下げていくことがポイントになります。
部屋作りに応用→「なぜ散らかるのか」を考えてみる
机やキッチンなど、どこでもOKなので、なぜ散らかるのかを考えてみます。なぜ散らかるのか→モノの上にモノを置いてしまうから→なぜモノの上にモノを置いてしまうのか→置くスペースがないから→なぜ置くスペースがないのか→古い書類が置いてあるから、のように掘り下げると、古い書類を捨てるべきということが見えてきます。
法則3:要るモノをわかりやすく収納しなさい
「探す」という行為を極限まで減らすのが目標。整理整頓という言葉がありますが、整理と整頓は並列の関係ではありません。モノを捨てるのは整理。これが終わってからでないと整頓はできません。
使わないモノ、使えないモノを捨てて、必要なモノだけを残せたら、それを収納していきます。このとき、きれいに並べるだけではダメです。どこに何があるかが一目でわかるように収納していくことが重要になります。これが「整頓」です。
ファイルケースなどの収納用品を使う際にはラベルを貼って、外からでも中身がわかるようにします。3割ほどの余白を残して、モノの向きを揃えるのもおすすめです。これで一気に検索性がアップします。
部屋作りに応用→本棚を流動的に管理
本棚に本を並べるときは、なんとなく詰め込むのではなく、今読んでいる本、次に読む本などの基準で並べると使いやすくなります。常に入れ替え、すぐに必要な本を取り出せるようにしておきます。
法則4:目的と関係ないモノは視界から外しなさい
作業に集中するための環境を作ります。同じスキルを持っている人が、同じ仕事をしたときに、差が出る大きな要因は「集中力」。集中力は、その人の性質ももちろんありますが、環境を変えることで向上させることができます。
今おこなっている作業と関係ないモノが視界に入ると、意識の一部が関係ないモノに向いてしまいます。つまり、100%集中できていない状態が生まれるのです。視界には今やっていることに関連するモノだけを置くようにしましょう。
これはパソコンの中身でも同じです。現在の作業に関係ないソフトは閉じて、現在の作業を全画面で表示することで集中力が上がります。
部屋作りに応用→仕事部屋にテレビを置かない
仕事部屋にテレビがあると、ついつい観たくなってしまいます。オフにしていても意識の片隅にテレビの存在があるため、視界から外すことが大切です。
法則5:机の上だけでなく引き出しの中もきれいに保ちなさい
机の上はきれいにしていても、実は引き出しの中はぐちゃぐちゃという人は多いのはないでしょうか。引き出しなどの外から見えない部分にはモノがたまりやすく、使わないモノが蓄積しやすいので注意が必要です。
引き出しの中身を整理するために、まず「定量」を決めましょう。引き出しに入れていいモノの個数を決めてしまうのです。仕切りなどを使って物理的に定量を超えられないようにするのがおすすめです。
部屋作りに応用→カトラリーは仕切りで分ける
カトラリーは知らぬ間に増えてしまいがち。家族の人数分など「定量」を決めたうえで、それぞれを仕切りで分けてしまいましょう。仕切りつきのトレーは100円ショップなどで買えます。
法則6:壁にひとりひとりの一日のスケジュールを貼り出しなさい
やることを「見える化」し、全員で把握します。トヨタの現場では、メカニックひとりひとりの一日のタスクが「見える化」されていました。壁にあるパネルに時間表があり、毎朝そこを見て「今日は何時から何をするか」を確認するのです。抜け漏れがないようにするのはもちろん、終了時間も書いてあるため「締め切り」を意識することができるのです。
また、全員が見えるようになっているため、周囲からもチェックできてしまいます。つまりサボっていたり、作業が遅いとすぐにバレてしまいます。これによってひとりひとりが責任をもって仕事をこなし、全体のパフォーマンスが高まります。
部屋作りに応用→家族の「やることボード」を作る
家族それぞれのやることを書き出して貼り出す場所を作り、終わったらチェックをつけます。たとえば子どもの学校や習い事の宿題や日課などです。家族で進み具合を共有できるうえに、チェックをつけていくことがモチベーションにもつながります。
法則7:「一筆書き」で移動できるよう配置しなさい
ジグザグに歩くのは時間のムダ使い。「なんでそっちに歩くんだ!」これは僕がトヨタのメカニック時代に先輩たちから言われたことです。トヨタの現場では、「動線」が何よりも重要視されており、一歩でも歩く距離を縮め、移動時間を減らすことが求められていました。
動線を整えるためにはモノの配置に気を遣う必要があります。たとえば「自分がジグザグに動かないといけない配置」「しゃがんだり立ったり、大きな動きが必要な配置」などはNG! 家の中でもこのような場所は探せばあるはず。避けて進むことが習慣化していることもあるので、改めて見直してみましょう。
部屋作りに応用→廊下にモノを置かないようにする
廊下というのはそもそも広くない場所。廊下にモノを置いてしまうと、それを避けて歩く必要があり、時間のムダが生じます。「定位置」にしまうか処分しましょう。
法則8:一日の終わりにもとの位置に戻しなさい
毎日のリセットを習慣化します。トヨタでは、今使うもの以外は机の上に置かないのがルール。一日の終わりには、必ず机の上を片付けます。机の上に何ものっていない状態にして帰ることで、翌日に出社したらすぐに作業に取りかかることができるのです。大がかりな掃除をする必要はなく、3分間くらいの簡単な片付けでOK。
最初は面倒でも、慣れてくるとこれが習慣化してきて、自然とできるようになります。きれいな状態を常にキープできるだけでなく、「少しモノが増えたから何を捨てるか決めよう」など、カイゼンポイントを見つけることにもつながります。
部屋作りに応用→キッチンカウンターには何もない状態に
一日の終わりにキッチンの上を無の状態にしてから寝るようにします。これを習慣にするとモノが出ていると気になるようになり、きれいを保つことができます。
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成功者の部屋にある共通点とは? 富裕層に仕えた執事が明かす!
教えてくれたのは……原マサヒコ(はら・まさひこ)さん
【PROFILE】
1996年、神奈川トヨタ自動車株式会社にメカニックとして入社。現場で数々の「トヨタイズム」を叩き込まれ、技術力を競う「技能オリンピック」で最年少優勝、カイゼンのアイデアを競う「アイデアツールコンテスト」でも2年連続全国大会出場を果たすなど活躍。現在はプラスドライブ株式会社代表取締役として、多くのクライアントに対してWEBマーケティング施策を提供している。著書に『トヨタ流「5S」 最強のルール』(大和書房)、『トヨタで学んだ自分を変えるすごい時短術』(かんき出版)、『Action!トヨタの現場の「やりきる力」』(プレジデント社)など多数。
(抜粋)
TJ MOOK『成功している人の部屋はなぜきれいなのか?』
監修:八木龍平
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編集・文:mao
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WEB編集/FASHION BOX、株式会社エクスライト