美味しいお酒でストレス撃退!
ストレスを癒やすのはおいしい食事と栄養です。おいしいものを食べたり飲んだりすると、抗ストレス物質のセロトニンが不安をやわらげてくれます。セロトニン以外にも抗ストレス物質はいくつもあり、食べ物やお酒などに含まれている栄養素には、抗ストレス物質の材料になったり分泌を促すはたらきを持つものがいくつも見つかっています。食べることやお酒の飲み方を見直して、ストレスに強い体を作りましょう。
レモンサワー人気はリモネンのストレス解消効果?
レモンに含まれる香気成分リモネンには交感神経を活性化させ、ストレス耐性を高めるはたらきがあります。グレープフルーツの香りでやせるといわれるのもリモネンのはたらきです。交感神経が活発化すると食欲が抑えられるので、やせられるという仕組みです。
東京農業大学の井上なつか他がリモネンを嗅いだ場合と嗅がない場合の作業効率の違いを調べたところ、約1割の向上がみられました。匂いがよくわからないといっていた被験者もスコアは上がったそうなので、とりあえず嗅ぐのがよいと思われます。
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ヤケ酒のストレスはしじみ汁のオルニチンが癒やす
二日酔いのつらさを早く治してスッキリさせるには、肝臓の働きを助ける栄養を摂るのもひとつ。二日酔いにしじみ汁というのは、しじみに含まれるオルニチンが血中のアンモニア(人体には有毒である)を肝臓が代謝する機能を活性化させるからです。疲労や二日酔いの時、血中アンモニア濃度が上がるので、オルニチンで分解を助けるわけです。オルニチンを摂ると、ストレスがかかると分泌される抗ストレスホルモンのコルチゾール濃度が低くなるので、オルニチンは疲労を回復させ、ストレスを減らすのです。
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ストレス発散には赤ワインがベスト
お酒を飲んでストレス発散といっても、アルコールが体に悪いのは周知のこと。多少でも体にいいお酒を飲みたいものです。イギリス・キングスカレッジの研究チームが飲酒する英国女性916人を対象に、酒の種類と腸内細菌の関係を調べたところ、赤ワインを飲むグループの腸内細菌フローラ(腸内細菌が作るコロニー)には多様性があることがわかりました。腸内細菌フローラの種類が多いと対応できる免疫系のバリエーションが増え、ストレスに強い体になります。そしてもちろん健康になります。
赤ワインが心臓病を予防するといわれ、中高年が一斉にビールをやめて赤ワインを飲み始めたことがありました。心臓病の原因となる乳脂肪の塊のようなチーズを大量に食べるフランス人になぜか心臓病が少ないフレンチパラドックス、その理由は赤ワインにあったというものです。結局、フランス人の食事に多いビタミンEの作用で心臓病が抑えられているらしいといわれ始め、赤ワインの健康ブームは終わりました。しかし実際に赤ワインには健康増進に役立つ効果があることがわかったのです。
研究チームによれば、腸内細菌フローラのためには3日に1杯の赤ワインで十分とのこと。何を飲むにしろ飲み過ぎはよくないようです。
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酒で忘れたい夜、つまみはナッツで
お酒でいい気分になっている時、おすすめのつまみはナッツ類。特にクルミは抗ストレス効果が高いのです。アメリカ・アンドリュース大学で学生64名を対象に、クルミ入りのパンを食べるグループとプラセボ(食感を似せるためにバナナ入り)のグループに分け、それぞれ8週間食べた後で、健康状態を調べました。すると男子学生のみ、緊張や不安、怒りなどネガティブな感情が抑えられることがわかりました。若い男性だけですが、クルミを食べるとおおらかになるらしいのです。
クルミに限らず、ナッツ類にはマグネシウムなどのミネラルや抗酸化物質のビタミンE、熱産出に欠かせないビタミンBなど抗ストレスに役立つ物質がたくさん含まれています。ヤケ酒でうつになる前に、気持ちよく飲めるようにナッツもいっしょに食べましょう。
酒でストレス発散の注意点
むしゃくしゃしたら酒を飲む! アルコールを飲むとストレス発散できるのは本当ですが、タイミングが大事です。アメリカ国立老化研究所のジュリアン・セイヤーらが飲酒と抗ストレスホルモンのコルチゾールの関係を調べたところ、興味深いことがわかりました。
ストレスを受けるとコルチゾールが分泌され、ストレスに対抗しようとします。その時にお酒を飲むとアルコールの抗ストレス作用でコルチゾールの分泌が抑えられます。コルチゾールが出ないと体は緊張状態が続くので、アルコールが抜けた後にストレス状態がぶり返すのです。そのため、コルチゾールが長い間作られることになり、ストレスがないのに体は抗ストレス反応、つまり緊張状態が続いてしまいます。
これが悪化すると、お酒を飲んでいる時にしかリラックスできなくなります。いわゆるアルコール中毒です。ストレスは溜まる前に早めに発散を。
寝酒は禁止、不眠症の原因になる
寝る前にお酒を飲む、いわゆる寝酒をしないと眠れないという人がいるかと思いますが、寝酒をすると交感神経が興奮し、体が緊張状態になることがわかりました。
秋田大学医学部神経精神科の佐川陽平医学博士らは、アルコールを飲んで寝た時の心拍数や脳波の変化を調べました。それによると眠る時に優位にはたらく副交感神経の活動が抑えられ、交感神経が活発にはたらくことがわかりました。お酒の量が増えるにつれてその度合いは高まるため、お酒を飲んで寝ることが続くと不眠症になる可能性があります。
睡眠を専門にする医師によると、寝酒は「麻酔を打つようなもの」だそうです。酒を飲んで眠るのは、眠るというよりは気絶に近く、睡眠の質はとても悪いそうなので、お気をつけて。
教えてくれたのは……
サイエンスライター 川口友万(かわぐち・ともかず)
【Profile】
富山大学理学部物理学科卒。パソコン誌編集者を経てフリーに。ラーメンから都市伝説までなんでも科学で読み解くことを得意とする。科学関連のテレビ出演多数。「サイエンスにもっと笑いを」がモットー。ストレス解消法は酒と風呂とマンガ。
フェイスブック https://www.facebook.com/tomokazu.kawaguchi.73
【著書・監修本】
『ラーメンを科学する』(カンゼン)
『なんでも未来ずかん』(講談社)監修
『みんなのための「ストレスチェック制度」明解ハンドブック』(双葉社)
『オーラ!? 不思議なキルリアン写真の世界』(双葉社)
『ホントにすごい! 日本の科学技術図鑑』(双葉社)監修
『ビタミンCは人類を救う!!』(学研プラス)
『大人の怪しい実験室』(データハウス)
『あぶない科学実験』(彩図社)
『媚薬の検証』(データハウス)
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編集:光元志佳、中澤雄介(オフィスJ.B)
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