皆さんは性教育を受けた記憶がありますか? それは、いつ頃でしたか? 「小学生の頃に保健の授業で」と答える方もいれば、「ほとんど受けた記憶がない」という方もいるでしょう。今まで日本で性教育は「寝た子を起こす」と、タブー視されていた歴史があります。一方世界のスタンダードとして「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では、5歳から性教育を始めるよう推奨されています。フェムテック・ウェルネスメディア『WOMB LABO』ディレクターの岡本佳央理さんに「今、変わりつつある性教育」をテーマに、お話伺いました。
自分の体に興味を持つこと、これが性教育の第一歩
岡本さん 女の子も男の子も、3歳くらいから自分の性器を触りますよね。これは自分の体の仕組みに興味を持っている証なので、その気持ちを大切にしてあげることがまずは一番です。年齢に合わせて、「女の子の体は、気持ちいいと感じるようになっているんだよ。でもそれはあなたの秘密だから、外でやることではないんだよ」と、教えてあげられるといいですね。伝え方としては、「気持ちいいんだね」という同意の気持ちと、「外や人の前でやることではないんだよ」ということの二つを、伝えてあげてください。「フェムテック」のイベントでお会いした女性たちとお話していて驚くのは、自分のデリケートゾーンを一度も触ったことがない人がとても多いこと。ひもといていくと、小さい頃に親から「汚い場所だから触っちゃいけない」と言われた言葉が、大人になっても深く心に残っているようです。「ダメなこと」「汚いところ」という言葉は、子どもの心に潜在的に残ってしまうので、最も避けた方がいいでしょう。
まずは大人が性教育を学んでみよう
岡本さん さまざまな場所で女性のオーガズムの仕組みをお話しすると、男性たちから「全く知らなかった」「勉強になった」と言われることが意外と多いんです。みんなアダルト先行の情報しか得ていないので、女性の体の中で科学的にどういうことが起こっているのかは知らない。また逆に女性たちに「SEX中にオーガズムをフェイクでやったことがありますか?」と質問すると、約8割の方がイエスと答えます。私たち親の世代はきちんと性について学ぶ機会が多くなかったので、まずは大人も性教育の本を読んでみるといいかもしれません。「性教育=SEXについて」ではないことも、知るきっかけになると思います。
性教育を「特別なこと」とせず日常に組み込んでいく
岡本さん 家庭での性教育の方法としては、幼い頃からの読み聞かせの絵本の一つとして取り入れていくといいと思います。「水着を着たときに隠れるところは、ほかの人に見せたり触らせたりしない自分の大切な場所だよ」ということも、幼いころから伝えてあげられるといいでしょう。また、女の子はデリケートゾーンを専用のもので洗うことも教えてあげてほしいです。「体はこれ、頭はこれ、デリケートゾーンはこれ」というようにルーティンにすると、大切な部分なんだとすんなり受け入れられます。
性教育は、人権教育にもつながる大切なこと
岡本さん 今は、どこでも情報がすぐに手に入る世の中。子どもたちは、この先の人生のどこかでアダルトコンテンツに出合うとは思うけど、性についての正しい知識が軸としてあれば、それをひとつのエンターテインメントとして見られるようになるでしょう。私たちの世代からリセットして、子供たちにはもっとフラットに伝えていくことが願いです。また、性教育の中にはジェンダー問題も含まれます。性を学ぶことで、多様性やジェンダー平等など、幅広い意味で人権を学ぶことになるのです。
岡本さんがおすすめする性教育の本
『性の絵本 みんながもってるたからものってなーんだ?』
3歳から読める性教育を目的とした絵本。男性と女性の体の違いから、赤ちゃんができるまで。さらに犯罪者から身を守るためのコツが一冊で伝えられる。
『子どもと性の話、はじめませんか?』
妊娠や避妊、性交だけでなく、自分の体は自分のものという認識、防犯の知識(プライベートゾーン)、男女の体の違い、性的同意、急増している自画撮り被害、性の多様性・ジェンダー、ネットリテラシーのことまで網羅。
『おうち性教育はじめます』
「うちにも赤ちゃんはくる?」といった素朴な質問への答え方から、性犯罪の被害者・加害者にならないための日々の言葉かけなどを、マンガで学べる。
教えてくれたのは……『WOMB LABO』ディレクター 岡本佳央理さん
植物療法士・森田敦子さんと共に、デリケートゾーンケアブランド『アンティーム オーガニック』の開発・ローンチに10年以上携わった後、生理痛、更年期障害、セックスレスといった悩みに応えるメディア『WOMB LABO』(https://womblabo.com/)のディレクターに就任。プライベートでは3児の母であり、子世代にも伝わるフェムケア・性教育の啓蒙を行っている。
宝島社では女性誌11誌男性誌2誌、計13誌合同によるフェムテック・フェムケア啓発プロジェクト「もっと話そう! Hello femtech」を2021年12月25日より始動しました。
フェムテックの認知度向上を通じて、女性の健康問題に係わる具体的な話題を話す機会を増やすことで、女性がより活躍できる社会に繋げ、ひいては男女関係なくヒトが生きやすい社会を目指すための活動です。
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取材・文=吉田彰子