60代に乳がんが増えている? 早期発見のためのガイドブック
ふたりにひとりががんにかかる時代。なかでも日本女性の乳がんは、増え続けています。乳がんは触って見つけることができるがん。60代向けの早期発見のための方法をお伝えします。ピンクリボンブレストケアクリニック表参道院長の島田菜穂子先生にお話をお聞きしました。
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60代に乳がんが増えているって本当!?
閉経したらもう乳がんにかからないのでは、と油断していませんか? いま、60代がもっとも乳がんにかかりやすい年代になっているのです。
しこりを見つける前に乳がん検診を受けて
いま、日本女性の9人にひとりが乳がんにかかるといわれています。乳がんは、日本女性がかかるがんのなかで、いちばん多いがんです。
そして、もっともかかりやすい年代が60代!ということをご存じでしょうか? 40代、50代に多いというのが乳がんの印象でしたが、最新の数字では、60代が最も乳がんにかかりやすい年代になっているのです。しかも、乳がんにかかる人は年々増加していて、それにともなって、死亡率も増え続けています。
「うちのクリニックで乳がん検診を受けに来るメインの年代は、40〜50代。それより上の年代は、お嬢さんがお母さんを連れて一緒に受診することも少なくないですね」と島田菜穂子先生。
60代女性は、どうですか?
「60代の方は、検診ではなく、乳房にしこりなどの症状を感じて来る方が圧倒的に多いです。70代、80代の方もそうですね。年齢の高い方は、閉経したらもう乳がんにかからないのでは、と油断している印象を受けます」(島田先生)。60代は、お風呂で偶然、しこりに触って驚いて来院する人が多く、自分で乳がんの情報を調べて、無症状のときに乳がん検診を受けに来る人は少ないそう。
「しこりなどの症状を偶然、感じてから見つかる乳がんより、無症状のときに乳がん検診を受けて見つかる乳がんのほうが、早期である確率は高いです」と島田先生。症状がないときこそ、乳がん検診を受診することが大事です。しかし、乳がんは、体の奥にできる子宮がんや大腸がん、胃がん、肺がんなどと違って、手で触ることができるがんです。セルフチェックも併せて行って乳房に関心を持つことも、早期発見には大切です。「乳がんは、早期発見すれば、乳房も失わず、命も助かります。早期治療なら、体への負担も圧倒的に少なくて済みます。ぜひご自分の乳房に関心を持ち続けてください」(島田先生)
データで見る年齢別乳がん罹患率
もっとも乳がん罹患率が高いのが65~69歳。40代、50代より、60代、70代の罹患率が高いことに驚きます。
自分の体に関心を持つことが大切 ブレスト・アウェアネスという考え方
乳房に興味を持ち鏡で見ていますか?
いま、乳がんを啓発するピンクリボン運動でも話題になっている「ブレスト・アウェアネス」という言葉を知っていますか?
ひと言でいうと、自分の乳房を意識する生活習慣のことです。
もしかしたら乳房に触ったときに、「私の胸は小さいから乳がんじゃない」「しこりがやわらかいから大丈夫」「がんのしこりは痛いというから、これは違う」「わきの下にコリコリがあるけど、これはがんじゃない」などと自己判断していませんか?
「これまで使われてきた自己検診という言葉は、乳がんを自分で触って探して、自分で診断するというイメージを持つ方が多かったのですが、本来の自己検診の目的は病気を見つけ診断することではありません。自分の乳房のいつものコンディションを知っておいて、いつもとの違いに気づけるようにすることです。そして自分に関心を持って正しく行動すること。この目的を正しく伝えるために工夫が必要と考えられてブレスト・アウェアネスという言葉が紹介されるようになりました」と島田先生。
ブレスト・アウェアネスは、「【1】自分の乳房のコンディションを知る、【2】乳房の変化に気をつける、【3】変化に気づいたらすぐ受診する、【4】40歳から2年に1回乳がん検診を受ける」がポイントです。早期発見には、セルフチェックと検診のどちらも大事ということです。
「乳がん検診を定期的に受けていても、進行が早くて急速に大きくなる乳がんも、なかにはあります。検診と検診の間に急速に起こる乳がんのことを“中間期がん”と言います。セルフチェックで、このような悪性度の高い、増大の早い乳がんに早期に気づくことができるのです」(島田先生)
セルフチェックでは、着替えや入浴などのときに、乳房を鏡で見て、触ってみてください。なにより自分の乳房に興味を持つことが大切です。
早期の乳がんには自覚症状はほとんどありません。こんな症状に気づいたら?
症状は自己判断せず“いつもと違う”がサイン
「セルフチェックで大事なのは、いままでなかったものがあるかどうか。それがしこりかどうか、自己判断は禁物。いつもと違うと気づいたらすぐ受診です」と島田先生。ほかにも、乳首からの分泌物、乳首や乳輪のただれ、乳房のえくぼ、乳首の変化、皮膚の変化、わきの下の腫れやしこりなども、乳がんで起こることのある症状です。
「鏡に映して観察するのも大切です。乳房のえくぼや乳首の高さや向きの左右差や、上から見ているだけでは分かりにくく、また乳房の下の方は鏡に映さないと、自分では見えないですよね。オレンジの皮のように毛穴が目立つような皮膚の変化が起きることもあります。触るだけでなくしっかり見て観察することも大切ですね。ちなみに最近よくあるのが、コロナワクチン接種後は長い方だと2か月程度接種側の脇の下のリンパ節が腫れることがあり、その時期に乳がん検診を受けると異常と判断されてしまうこともあります。特に自覚症状がなく検診を受けるのであれば接種後2か月くらいは避けた方が良いでしょう。ただししこりを感じるなど症状に気づいたときは、ワクチン接種直後でも受診を待機する必要はありません。適切な診察と画像診断をすればがんの転移リンパ節かワクチン接種後のリンパ節の腫れかは区別ができるので、早く受診する方が重要です。いずれの症状も自己判断せず、“いつもと違う”をサインにぜひ受診してください」(島田先生)
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教えてくれたのは……ピンクリボンブレストケアクリニック表参道院長 島田菜穂子先生
【PROFILE】
乳腺科・乳腺放射線診断科医。筑波大学医学専門学群卒業。NPO法人乳房健康研究会副理事長。編著に『改訂版 ピンクリボンと乳がんまなびBOOK』(主婦の友社)ほか多数。
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(素敵なあの人 2022年4月号)
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WEB編集/FASHION BOX