（2020年1月24日 更新）
鉄は、人間の生命活動を維持するために必須とされる16種類のミネラルの1つです。これらのミネラルは、人間の体内で合成することができないため、食事などで安定的に摂取しなければなりません。不足した状態が長く続くと、心身にさまざまな不調が生じることになると、精神科医の藤川先生は言います。そんな鉄を効率よく摂取する方法を、藤川先生に伺いました。
≪目次≫
教えてくれたのは……
藤川徳美（ふじかわ・とくみ）先生
【Profile】
1960年、広島県生まれ。医学博士。1984年、広島大学医学部卒業。広島大学医学部附属病院（現・広島大学病院）精神神経科、県立広島病院精神神経科、国立病院機構賀茂精神医療センターなどに勤務。
うつ病の薬理・画像研究や、MRIを用いた老年期うつ病研究を行い、老年発症のうつ病には微小脳梗塞が多いことを世界に先駆けて発見する。2008年に「ふじかわ心療内科クリニック」（広島県廿日市市）を開院。気分障害、不安障害、睡眠障害、ストレス性疾患、認知症などに対して多面的な治療法を採用しながら治療にあたっている。著書に『うつ消しごはん』（方丈社）、『薬に頼らずうつを治す方法』（アチーブメント出版）、監修では『食事でよくなる！ 子供の発達障害』（マキノ出版）がある。
【オススメ記事】
味噌汁1杯で貧血予防！ 具の組み合わせで鉄分増強
鉄を効率よく摂るためには植物性より動物性がいい！
同じ鉄でも吸収率に大きな差
食物中に含まれる鉄には、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があります。ヘム鉄は、赤血球中のヘモグロビンに由来する「動物性の鉄」。非ヘム鉄は、野菜、果物、海藻などのなかに存在する「植物性の鉄」です。
ヘム鉄と非ヘム鉄は、由来が違うだけでなく構造や吸収のされ方も異なります。ヘム鉄は、鉄イオンの周囲を有機化合物が取り囲むような構造で、これはもともとヘモグロビンを構成していたときの形であるため、そのまま腸で吸収されます。一方、非ヘム鉄は、鉄イオンがむき出しで、しかもそのままでは吸収されない形であるため、鉄還元酵素で吸収される形につくり直されます。しかし、それでもむき出しのままなので、腸で食物繊維やタンニンに邪魔され、効率的に吸収されないのです。吸収率を比べると、非ヘム鉄はヘム鉄のわずか5分の1ほど。胃腸に負担をかけることなく必要量の鉄を摂るには、動物性たんぱく質をメインにすべきです。
【オススメ記事】
あなたの心の不調の原因は鉄不足かも？ 鉄欠乏性貧血チェックリスト
何から摂るかで鉄をどれだけ吸収できるかが変わる！
＜非ヘム鉄＞
●吸収率は2〜5%
●野菜、果物、海藻など植物由来の鉄
野菜や果物、海藻に多く含まれているのが非ヘム鉄です。ほうれん草、小松菜、プルーン、ひじきなどに多く含まれています。分解・吸収の仕組みがヘム鉄と異なることなどから、吸収率はわずか2～5％程度です。
＜ヘム鉄＞
●吸収率は15〜25%
●肉や赤身の魚など動物由来の鉄
肉、魚、卵などの動物性たんぱく質に多い鉄分。吸収率はおよそ15～25％です。ヘム鉄はレバーや牛肉の赤身部分に多く、ダントツに多いのは豚レバー。魚はマグロやカツオなどの赤身魚に多く含まれています。
【オススメ記事】
これって貧血？ 症状から解決法まで教えます
鉄をどんどん蓄えられる体になる食べ方のコツ
■糖質は控える
糖質を多く摂ると、血糖値を安定させるためのインスリンが大量に必要となり、その合成にたんぱく質や鉄が消費されてしまいます。
■動物性たんぱく質をメインに
吸収率で計算すると、同量の鉄を摂るのに、植物性たんぱく質は動物性たんぱく質の約5倍必要。効率的に蓄えるなら動物性メインに。
■ビタミンCも一緒に摂る
ビタミンCは、食物中から鉄を取り出す酵素を助け、鉄の吸収率を高めます。肉料理に野菜やレモンを添えるのはとても合理的です。
■飲み物はノンカフェインで！
コーヒーや緑茶などに含まれるカフェインは、鉄を吸収されにくい形にします。飲みすぎないよう注意し、食事中は控えましょう。
■よく嚙んで食べる
唾液にたんぱく質分解酵素は含まれていませんが、よく嚙んで食物を細かくすることで、消化効率が上がり「ロス」を減らせます。
【オススメ記事】
“貧血にはレバー”だけじゃない！ 鉄欠乏にオススメの食材まとめ［鉄欠乏にご用心 その4］
海外で進んでいる鉄欠乏対策
じつは、鉄欠乏は日本だけではありません。1人当たりの肉消費量が日本よりはるかに多いにもかかわらず、大々的な対策がとられている国は少なくないのです。たとえば、アメリカ、イギリス、ブラジルなどでは小麦をはじめ多くの食品で鉄が強化されています。今や、鉄欠乏は世界的な健康問題といえるでしょう。
食品に鉄を添加している国も増えています！
【オススメ記事】
貧血女子に！ 鉄分たっぷりサラダ＆トマト煮
（抜粋）
TJ MOOK『精神科医が考えた！ うつも消える！ 心を強くする食事術』
監修／藤川徳美
表紙撮影／高杉 純
編集・ライティング／藤田都美子
ライティング／杉浦美佐緒、宇津井恵子
WEB編集／FASHION BOX
※ 画像・文章の無断転載はご遠慮ください
【よく読まれている記事】
この肩こり、どうにかしたい……寝る前の肩甲骨はがし運動がおすすめ
［掃除のコツ］ダニの死骸が大量発生!? 季節の変わり目には中掃除を
トイレは掃除機をかけてはいけない⁉ 細菌・ウイルスを寄せつけない部屋づくりのポイント
30代以上の女性はほぼ全員発症!? 血管の病気「下肢静脈瘤」とは
春に起こりやすい自然現象を表す漢字クイズ5問
足がつりやすい、むくみやすい人必見！ 血流を滞らせない座り方＆寝方
