血糖値が異常に高くなり、全身の病気が引き起こされる可能性がある糖尿病。血糖値をうまくコントロールできなくなると、さまざまな合併症を引き起こすリスクがあります。吉田俊秀先生が糖尿病に潜む合併症の危険性について教えてくださいました。
このコンテンツの監修者は……
吉田俊秀(よしだとしひで)
医療法人 親友会 島原病院 肥満・糖尿病センター長
医学博士/京都府立医科大学客員教授
【Profile】
京都府立医科大学医学部卒業。アメリカ・カリフォルニア大学、アメリカ・南カリフォルニア大学にて、Bray教授のもとで肥満研究と肥満治療を学ぶ。京都府立医科大学付属病院教授、京都市立病院糖尿病・代謝内科部長を経て、現職。日本肥満学会功労評議員(専門医・指導医)、日本肥満症治療学会評議員、日本糖尿病学会功労評議員(専門医・指導医)、日本内分泌学会功労評議員、日本内科学会近畿地方会評議員(認定内科医)。おもな著書に『糖尿病、あきらめたらアカンで!』(宝島社)、『糖尿病を自力で治す最強療法』(マキノ出版<寄稿>)、『肥満の遺伝子がわかった 最新肥満医学が明らかにした究極のダイエット法』(ごま書房)、『キャベツ 夜だけダイエット』(アスコム)など多数。
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高血糖で起こる怖い合併症
糖尿病になっても生活習慣を改善し、血糖値を上手にコントロールできていれば、健康な人とほとんど変わらない生活を送ることができます。しかし、血糖値がうまくコントロールできなくなると、合併症を引き起こす可能性が高くなってしまいます。
高血糖の状態で、食生活を変えず、運動もしないといった生活をそのまま続けていると動脈硬化が急速に進み、血管がボロボロになるだけでなく、全身の神経も侵されます。全身を結んでいる血管や神経が傷(いた)めつけられるため、体中、あらゆる部位や臓器にさまざまな障害が起こり、合併症として現れてくるのです。
糖尿病による合併症は、太い血管に起こる大血管障害と細い血管に起こる細小血管障害のふたつに分けることができます。大血管障害では、脳梗塞や心筋梗塞などの血管病が起こりやすくなります。細小血管障害は、細い血管が侵されて血流が悪くなり、特に細い血管が集中している神経、目、腎臓にダメージを受けやすく、これらの部位に起こる合併症は、糖尿病の三大合併症ともいわれており、特に気をつけなければなりません。
糖尿病の三大合併症
神経障害
手足のしびれや痛みのほか、立ちくらみ、感覚消失など全身に症状が起こります。重症化すると手先、足先に壊疽(えそ)を起こすことも。
目の疾患
糖尿病によって毛細血管が破裂し、網膜症を発症。眼底出血が進行すると失明することもあります。
腎臓疾患
高血糖の状態が続くと腎臓が持つ血液のろ過機能が働かなくなり、悪化すると腎不全から人工透析に至ることもあります。
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三大合併症を引き起こすとどうなる?
3つのうち、最初に症状が出やすいのは神経です。
神経障害
糖尿病の影響で、末梢(まっしょう)神経や自律神経が直接ダメージを受け、破壊されてしまう神経障害。末梢神経の場合、壊れる過程で神経が徐々に細くなり、しびれを感じるようになります。徐々に進行すると痛みが出始め、完全に切れてしまうと感覚を感じなくなる感覚消失になることも。自律神経に影響が出ると立ちくらみや便秘・下痢などの症状が出ます。
特徴
・糖尿病病発症から5~10年ほどで約30%の人に起こり始める
・最初は左右対称に手足のしびれを感じることが多い
・自律神経にも影響を及ぼし、重症化すると全身に症状が出る
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目の疾患
目にはたくさんの毛細血管が通っています。その毛細血管が破裂するなどして網膜へ酸素や栄養を運ぶことができなくなり、網膜症を引き起こします。進行すると眼底出血を起こし、失明する可能性も出てきます。治療をしないと、20年後には約70%の人が網膜症を発症するので注意が必要です。また、緑内障や白内障のリスクも高くなります。
特徴
・糖尿病発症後、治療しないと20年後に約70%の人が発症
・毛細血管が破裂し、眼底出血を起こす
・網膜症になり、進行すると失明の可能性も
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腎臓疾患
腎臓には、尿細管という小さな穴があります。健康な腎臓なら、この穴は小さすぎてたんぱくは通ることができないのですが、糖尿病の影響で細胞が壊れると穴が大きくなり、たんぱくが尿と一緒に出てしまいます。これが尿たんぱくが出ている状態で、そうなると腎臓の状態はかなり悪化しているということ。進行すると人工透析が必要に。
特徴
・血液のろ過機能が働かなくなり発症
・最初は手足のむくみが出る
・悪化すると人工透析が必要になる
どの合併症でも、発症すればQOL(生活の質)を低下させることになるので、早いうちに糖尿病を改善し、合併症のリスクを軽減させましょう。
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(抜粋)
TJ MOOK『肥満外来専門医が教える! 糖尿病を自分で治す本』
監修:吉田俊秀
構成・文/小山暢子
イラスト/ふじいまさこ
WEB編集/FASHION BOX
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