苦手な上司や同僚がいると仕事がしづらい……とお困りの方も多いのではないでしょうか? 職場での対人関係に誰しも一度は悩んだ経験があるはず。そこで苦手な人と親しくなる方法を、精神科医でありマンガ原作者、ゆうきゆうさんに教えていただきます。人間関係が少しでも良くなることで、職場のストレス軽減につながるかもしれません。
親しくなりたい人とはなるべく一緒にいる機会をつくろう!
何度も接するうちに印象が強くなり、好感度が高まる。これが単純接触の原理と呼ばれる心理です。人はただ「近くにいる」だけで相手に好意を持ちやすくなることが知られています。学校や職場の人間関係を思い出してみても、はじめに親しくなるのは近くの席の人が多いのではないでしょうか。心理学者フェスティンガーが行った調査でも、部屋が近いほど友人関係になりやすいことが証明されています。
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近くにいるだけで親密になる
家が近い、職場で席が近いなど、物理的に近い人とは親しくなりやすいものです。その理由は下記の2つ!
単純接触の原理 その1. 相手を知る機会が増える
近くにいると相手とは単純にコミュニケーションをとる機会が多くなるもの。会話を重ねる機会が増えれば、互いをよく知ることになっていきます。共通点が見つかれば、さらに親密になりやすく、加速度的に親しくなることができます。
単純接触の原理 その2. 見慣れると好意が増す
見知らぬ相手には警戒しがちですが、何度も顔を合わせて見慣れた相手だと警戒心も薄れがちになります。親しみがわき、自然に好意的な感情を持つようになっていきやすくなるのです。
単純接触の原理は、提唱した心理学者のザイアンスからザイアンスの法則とも呼ばれます。ザイアンスは、相手と話すなどのコミュニケーションがなくても、ただ「見る」回数が多いだけでも好意を持ちやすいことを明らかにしました。ザイアンスは12人の男性の写真を大学生にランダムに見せ、好感度を調査するという実験を行っています。そこでは、見る回数が多い写真ほど好感度も高いという結果が出たのです。はじめは興味がないもの(作品、タレントなど)も、何度も接しているうちに好ましく思い、だんだんハマっていった……そんな経験は誰にでもありますよね。
知れば知るほど好きになる——これも心理テクニックです!
単純接触の原理から、親密になりたい人とはできるだけ一緒にいられる状況をつくることが大事、という法則が導き出されます。長い付き合いには内面の相性がカギになりますが、関係の初期では接触回数の多さが親密度を大きく左右するのです。
そして、恋愛では特に「距離」が重要です。距離が離れると心も離れてしまいがち。心理学者スタッフォードが行った調査によると、遠距離恋愛カップルのうち3分の2は破局する傾向にあったそうです。距離が遠く会う機会が少なくなるほど、マメな連絡や会っている時間の充実など、関係を深めようという努力が求められるのです。
コロナ禍でのソーシャルディスタンス維持では接触の機会も少なくなりがちですが、「対象を知れば知るほど好感度が上がっていく」という現象もあります。これがザイアンスの熟知性の原理。本に作者のプロフィールが載っていたり、SNSやオウンドメディアを活用する企業が多いのは、この熟知性の原理をねらったものと言えるでしょう。
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教えてくれたのは……
ゆうき ゆうさん
【Profile】
精神科医・マンガ原作者。ゆうメンタルクリニック・ゆうスキンクリニックグループ総院長。東京大学医学部医学科を卒業。医師業のかたわら心理学系サイトの運営、マンガ原作、書籍執筆なども手がける。軽快な語り口とわかりやすい説明で、幅広い層から支持を集めている。『マンガ版 ちょっとだけ・こっそり・素早く「言い返す」技術』(三笠書房)、『マンガでわかる! 心理学超入門』(西東社)など著書、監修書多数。
ゆうスキンクリニック:https://yubt.net
ゆうきゆう Twitter:@sinrinet
(抜粋)
TJ MOOK『マンガ 自分を5割増しで見せる心理学』
監修:ゆうき ゆう
編集・構成:佐々木正孝(キッズファクトリー)
ライティング:高梨 南
イラスト:小沢 聖
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WEB編集:FASHION BOX、株式会社エクスライト