なんだか疲れやすい、集中力が続かない……といった「なんとなく不調」な状態。体質だから、とあきらめてはいませんか? もしかすると、それは「過多月経」のせいかもしれません。自分の経血量が適切かどうか、チェックリストで確認してみましょう。
自分の経血量は多い? 少ない?
毎月女性の体に訪れる生理。
生理はストレスがかかると周期が乱れるなど、体調の影響を受けやすく、「健康のバロメーター」ともいわれています。そのため体調管理の一環で、生理周期を手帳やアプリに記録し、きちんと把握するようにしているという人も多いのではないでしょうか。
「体からのサインを見逃さないために、把握しておきたいポイントは生理周期だけではありません。経血量にも意識を向けてみてほしい」と話すのは、医療法人財団 荻窪病院血液凝固科に勤める長尾 梓先生。経血量が多い場合は、思わぬ病気が潜んでいる可能性もあると訴えます。
見逃されやすい過多月経
経血量が異常に多い状態は「過多月経」といい、初経を迎える10代から閉経が近づく40代以降まで、あらゆる世代に見られる病気です。
しかし、経血量が多くてもそれを「普通」と思って過ごしているケースがほとんどで、自覚のない人が多いそう。なんと、全国に600万人(*1)もの潜在的な患者がいると考えられています。「もしかして私も……」と不安に思った方は、まずはチェックリストを使って経血量が人より多いか、少ないかを確認してみましょう。
【経血量チェックリスト】
① 生理で100円玉より大きい血の塊が出ることがある
② 生理で多い日にはナプキンを2~3時間に1回の頻度で取り換える必要がある
③ 生理が7日以上続く
④ 夜用・多い日用ナプキンを3日以上使っていたことがある
「こちらのチェックリストに1つでも当てはまった方は、過多月経である可能性がありますので、ぜひ一度婦人科の受診を」と長尾先生。ではもし過多月経だった場合、どんなリスクがあるのでしょうか?
過多月経に潜む病気のリスクとは?
過多月経が続くと、貧血になる場合があります。貧血は動悸や息切れなどの症状に加え、倦怠感、集中力低下などを招き、仕事や勉強など生活に悪影響を及ぼすことも。慢性的に「疲れやすい」「やる気が出ない」と感じている方は、もしかすると過多月経からくる貧血が原因かもしれません。さらに、酷くなると心臓に負担がかかり、心不全に至るリスクもあるのだとか。
「経血量は薬である程度コントロールすることも可能なので、まずは婦人科に相談を。ただ一部で原因が婦人科疾患ではなく血液疾患であるケースも報告されているので、婦人科の治療で改善されない場合は注意が必要です」
過多月経は血液疾患に原因がある場合も
過多月経の場合、婦人科ではまず子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどを疑い検査や治療が行われます。しかし、それでも過多月経が改善されない場合は、血が止まりにくくなる「血液凝固異常症」などの血液疾患が原因である可能性も。症状の一つに過多月経が見られる血液疾患は、血友病特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、などがあります。
「まずはご自身の経血量の多さに気づくこと。生理への意識を高めることで、病気のリスク回避、早期発見、生理の悩みの軽減にもつながっていくでしょう」
次回は、引き続き長尾先生に監修していただき、女性に多い血液疾患で過多月経を招くフォン・ヴィレブランド病について詳しく取り上げます。
監修:長尾 梓先生(医療法人財団 荻窪病院血液凝固科)
熊本大学理学部大学院卒。熊本大学エイズ研究センターで研究に従事した後、信州大学医学部に編入。2009年卒業後に荻窪病院に入職し現職。専門は血友病、フォン・ヴィレブランド病をはじめとする血液凝固異常症、HIV感染症。
出典:
*1島根大学医学部産科婦人科『マイクロ波による過多月経の治療法 http://www.shimane-u-obgyn.jp/patient/patient-other/133/140/143/139
*2 von Willebrand 病の診療ガイドライン 2021 年版を基に、日本の総人口(総務省統計局/2021年8月)より推計
フォンヴィレブランド病.jp https://vonwillebrand.jp/
取材・文=リンネル編集部