キッズ向け性教育で大人が整ってしまった話

「フェムテック」ってご存知ですか?
フェムテックとは<女性が抱える健康の課題を現代の知恵や技術で解決するために生まれたサービスや事業の総称>で、一般的には、生理日を管理するアプリや最新鋭のピルなど、女性の身体のためにテクノロジーを駆使しているものが「フェムテック」とされています。

ここでは、テクノロジーの側面だけでなく、女性の心地よい暮らしを実現するためのツールとして、身体や心を整える習慣やムーブメント、生き方なども含めて、「フェムテック」としてご紹介していけたらと思います。

日本における性別の枠組みと性教育のこと

現在、ジェンダーギャップ指数(男女の違いで生じている格差や不平等)が156か国中120位の日本に暮らす私たち。日常の色々な場面で男女の差を感じる方も多いのではないでしょうか?

しかし、決して日本人男性も悪気があるわけではなく、そもそも私たち日本人は、丁寧な性教育を受けていないことがわかったのです。


(2013年日本性教育協会調べ)


(2007年内閣府調べ)

一般的に、学校の授業で男女の生物的な身体の違いについて学ぶ機会はありますが、家庭内ではほとんど積極的な性教育が行われていないことがわかります。
正しい情報に接していないだけでなく、下手をすればメディアやアダルト商品の偏った性知識のみで大人になってしまう場合もあり、ジェンダー・ギャップが生じている現状も当たり前といえます。

子どもの性教育と向き合ってみる

編集部にはママエディターが多く、お年頃な13歳男子のお母さんもいます。まだ幼さは残っていますが、思春期真っ最中、色々な心配があるそう。

ここで多くの親御さんが経験するのが<寝た子を起こすなビッグウェーブ>。
いま変に子どもを刺激して、性への興味を目覚めさせてしまうのでは……?
詳しい性教育はもう少し後でもいいんじゃない……?といった気持ちです。
子どもも思春期に入ると親との時間が少なくなり、どんどん性についての会話を先送りにしてしまいます。

しかし、
『性教育は今日より明日、明日より明後日話しづらくなります!』
と、力強く教えてくれたのはリンネル3月号(2022年1月19日発売)のフェムテック企画に登場してくれたタレントのSHELLYさん。

日本では、性教育=セックス教育とつい思われがちですが、本当の「性」教育とは、持って生まれた個性(=性別)を正しく理解し、必要なジェンダーの知識を得ることとSHELLYさん。SHELLYさんは我が子が1歳の頃から性教育をしているといいます。

そこで、勇気を出して最初の一步を踏み出し、性について話してみると……。

親「子どもの作り方って習った?」
息子「知ってるよ、小学校で習った!」
親「じゃあ性的同意って知ってる?」
息子「なにそれ?」

2021年現在、文部科学省の学習指導要領によると小学校5年生の理科では「受精に至る過程は取り扱わない」とのこと。つまり、生物学上の受精は教えるけれど、性行為に至るまでの過程(恋愛、人権や権利について)はノータッチ。
中学校では避妊具の存在は教えられますが(市町村、学校単位で時差はある)「なぜ避妊が必要なのか」についての議論はされていないとのこと。性行為の本質が語られない性教育が令和の現在も続いています。

編集部が選ぶ、おすすめツールたち

そこで、編集部がおすすめしたいジェンダー教育のための書籍をご紹介します。
まず『女の子だから、男の子だからをなくす本』は、「女らしい」「男らしい」というジェンダーの固定観念をシフトチェンジする絵本です。


『女の子だから、男の子だからをなくす本』(エトセトラブックス刊)

「女の子たちへ」の章は「あなたの体をありのまま好きになろう」「手をあげよう」など、女性なら誰しもドキリとするメッセージが丁寧に説明されています。この世界で漠然と感じる生きづらさの正体は「女らしい」という呪いなのかもしれません。

さらに、目からウロコが落ちたのは「男の子たちへ」の章。

「やさしい子になろう」「わんわん泣いてもいい」「小さい夢を持っていい」……。

女性だけでなく男性も、誰が決めたのかわからない「男らしい」という基準で、性別の枠組みをつくって行動を決めつけられていたのです。

この本は、はっと気付きになるやさしさがあって、子どもはもちろん大人にもおすすめです。

また文部科学省では、今年度より子供たちが性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないよう、全国の学校において「生命(いのち)の安全教育」を推進することになり、教材がHPからダウンロードできます。


文部科学省の教材。とてもよくできています。

性教育で触れたことにより、男子に対して「女の子を大切にする男の子になってほしい」ではなく「困っている一個人に気持ちを寄せられる大人になってほしい」という気持ちになりました。

フェムテックは、女性の身体の課題を解決するためのものですが、性別の枠組みから自由になってお互いを理解し、人同士が生かし合うマインドを育んでいくことが一番の目標ではないかと思いました。

女性だけじゃなく男性も一緒に考えられたら知恵も2倍。
まずは身近な人と対話してみてはいかがでしょう?

今回、性教育でジェンダー認識を新たにしたことで、私たちもだいぶ心が整いました。大人にも性教育、おすすめです。

photography&text_リンネル編集部

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