短鎖脂肪酸

更年期世代は太りやすい! 対策のカギは「短鎖脂肪酸」

閉経前後の更年期世代。油断すると体重が増加していることがありませんか?
食生活がそれほど変わらないのに太る理由は、女性ホルモン分泌の低下と共に、基礎代謝&筋肉量が低下するから。さらには加齢により腸内環境のバランスが崩れがちになることも、太りやすい原因だそう。
更年期の間に食生活の見直しをしなくては、どんどん脂肪が蓄積されることになってしまいます。

話題の短鎖脂肪酸とは?

最近、ちらほらと美容・健康業界で耳にする「短鎖脂肪酸ダイエット」。
短鎖脂肪酸とは何なのでしょうか? 慶応義塾大学先端生命科学研究所特任教授の福田真嗣先生に伺いました。

「腸内には約1,000種類、約40兆個の腸内細菌が生息しています。体の免疫細胞の約7割が腸にあるといわれており、腸内環境が肌質改善などの美容や、病気・アレルギーなど私たちの心身の状態に密接に関わっていることが次々と明らかになってきました。中でも、特に注目されているのが『短鎖脂肪酸』です。これは、大腸内でビフィズス菌などの腸内細菌が、水溶性食物繊維やオリゴ糖などをエサにして作り出す酸(有機酸)の一種です」

短鎖脂肪酸

短鎖脂肪酸を作り出す元の腸内細菌はそれぞれ異なっていて、それぞれが直接的あるいは受容体などを介していろいろな機能を発揮するそうです。

短鎖脂肪酸

「短鎖脂肪酸には、炎症抑制効果、免疫機能や腸管バリア機能を高めたりすることに加え、O-157感染症の予防効果や、持久力を高める効果などが最近の研究でわかってきています」

ダイエットと短鎖脂肪酸の関係

そして、気になるダイエットと短鎖脂肪酸の関係ですが、「短鎖脂肪酸には、肥満抑制、血糖値コントロールや便秘解消、基礎代謝の向上といった効果があります」と福田先生。
つまり「太りにくい体質になるには、良好な腸内環境をつくることが不可欠なんです」とのこと。腸活、いろいろな面で大事なんですね。

「良好な腸内環境とは、いろいろな種類の腸内細菌がバランス良く存在していて多様性があり、互いに作用し合うこと。さらには、短鎖脂肪酸をつくる腸内細菌が多いこと。
短鎖脂肪酸は、宿主であるヒトの健康に大きく寄与します。短鎖脂肪酸をたくさん産生できる理想的な腸内フローラ(腸内細菌叢)を目指すためには、短鎖脂肪酸をつくるビフィズス菌や酪酸産生菌など、さまざまな種類の腸内細菌が腸内にいる状態を作ることと、それらのエサになる食物繊維が豊富に含まれる食材や素材を継続的に摂取していくことがカギになります」

短鎖脂肪酸をつくる元となるビフィズス菌などと一緒に、水溶性食物繊維などのエサを合わせて摂取することを習慣にしなくては。

「特に、チコリやごぼうなどに多く含まれるイヌリンや、バナナなどに多く含まれるフラクトオリゴ糖などの水溶性食物繊維やオリゴ糖が、短鎖脂肪酸の産生に有効です」

太りにくい体を目指してメニュー変更!

善は急げ。取り急ぎ、大腸内に短鎖脂肪酸を増やしてくれるメニューを取り入れたいとはいえ、何をどうしたらいいのやら。そこで、管理栄養士の金丸絵里加さんに聞いてみました。

「まずは、短鎖脂肪酸をつくる元となるビフィズス菌が入ったヨーグルトを選ぶことをおすすめします。ビフィズス菌は、有用菌のなかでも最も優勢で中心的な菌で、短鎖脂肪酸ダイエットに欠かせないのですが、加齢やストレス、運動不足などの影響で減少してしまいがち。“ビフィズス菌100g+水溶性食物繊維2g”を毎日摂る習慣をつけるのが、簡単だと思います」

短鎖脂肪酸

「アボカド 1/2 個、オートミール 65g、中くらいのサツマイモ1本、りんご1.5個、にんじん 1.5本、ほうれん草1,5わ 納豆2パックなど、実は意識しないと摂りづらいのが水溶性食物繊維なんです」

短鎖脂肪酸

ビフィズス菌入りヨーグルトを食べる効果的な時間帯は?

「胃酸の影響を考えて食後が理想的です。また、寝ている間に腸内細菌による体内発酵を促したり、体内時計のリセットにつながるので、無糖のものを夜に食べる習慣にするのも有効です」

朝昼は食後のデザート代わりに、本格的ダイエットを目指すなら夜に“ビフィズス菌100g+水溶性食物繊維2g”をメインにするもありですね。
年末年始と美味しいものを食べる機会が増える季節、便秘知らずの太りにくい腸、すっきりボディを目指しませんか?

【監修】
■福田真嗣先生
博士(農学)慶應義塾大学先端生命科学研究所特任教授。世界から注目を集める「腸内環境」の最先端研究を行う。株式会社メタジェン代表取締役社長CEO。明治大学大学院農学研究科を卒業後、理化学研究所基礎科学特別研究員などを経て、現在は慶應義塾大学先端生命科学研究所 特任教授。複数の論文が世界的な学術雑誌「Nature」に掲載される。腸内環境を適切にデザインすることで病気ゼロ社会を実現するため、2015年(株) メタジェン設立。<主な著書> 「改定版 もっとよくわかる! 腸内細菌叢〜“もう1つの臓器”を知り、健康・疾患を制御する!~」(2022年/羊土社)他 。

■金丸絵里加さん
管理栄養士・料理研究家・フードコーディネーター。テレビ出演、雑誌取材、書籍の出版のほか、旅館やレストランのメニューコンサルタントにも従事。毎日食べても飽きずに「おいしい!」と顔がほころぶ、食べてホッとするような「お家ごはん」が得意。書籍、雑誌、テレビなど多数メディアで、栄養価計算(カロリー計算)や栄養指導、ダイエットアドバイスなどを加えながら、健康的な食生活のための料理レシピを提案している。著書に『女子のやせ定食』(光文社)、『365 日のサラダ』(永岡書店)他多数。

 

取材・文/中尾慧里
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