「まだ親が元気だから……」と、つい先送りしたくなる相続の問題。けれど、正しい判断で準備をするためには、親が元気なうちに始めておくことが大切です。無用な争いを避けるために、今から準備を進めておきましょう。
教えてくれたのは……
相続実務士 曽根恵子さん プロフィール
相続コーディネート業務を扱う「夢相続」代表取締役。テレビ、雑誌の取材や講演で活躍。『90分でわかる! はじめての相続』(クロスメディア・パブリッシング)など、著書多数。
相続に関する勘違いQ&A
「法律に従っていればスムーズにいくはず」「専門家にやってもらおう」と思っていても、遺言書がなければすべては相続人の話し合いがベース。まずはよくある勘違いをチェック。
《勘違い1》
Q 困ったら専門家にお任せしちゃえばいいですよね?
A 弁護士に頼むと、かえって利害が対立する可能性が。相続に関する専門家に頼むのがベスト
相続に関する専門家といっても、相続税については税理士、不動産の名義の変更には司法書士など、バラバラに対応するケースが多いのが実情。相続する人がある程度知識をもっていることが大切です。
また、家族間でもめた場合に弁護士を立ててしまうと、直接話をすることができなくなります。結果、調停や裁判となり、家族が絶縁状態になることが多いのです。
専門家でチームを組み、すべての手続きを進めてくれる相続コーディネーターが間に入るのがベストですが、全国的には数が少ないのが現状です。
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《勘違い2》
Q うちは家族全員仲良しだからもめません!
A 過去にかけてもらった教育費などきょうだい格差が火種になることが
誰もが「うちはもめないはず」と思っています。けれども特定のきょうだいだけが大学進学をしている、結婚式用の費用を親が負担していたなどの場合、親が亡くなった途端、ほかのきょうだいが不満を爆発させる場合があります。
争いがお金の問題ではなく、「親からかけてもらった愛情」の格差になると、話がこじれがちに。
仮に財産を長女のみに相続させるという遺言書があったとしても、きょうだいは法定相続分の1/2(配偶者、子ども2人の相続の場合は全体の1/8)の遺留分を請求することができます。
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《勘違い3》
Q 結婚して家を出ているので、実家の財産の相続権はないですよね?
A 結婚しても相続権はあります。義父母と養子縁組することも可能
結婚して別の名字を名乗っていても法的には相続権は変わりません。その家の養子や、他家に養子に行った子ども、被相続人の前の結婚の子ども、非嫡出子(認知された婚外子)もすべて平等です。
結婚している場合、配偶者の親の財産の相続権はありません。相続人になる方法として配偶者の親と養子縁組することができます。相続人が増えると基礎控除が増えるため、節税対策になるのです。その場合、自分の実家の相続権もそのままです。
ただし、夫のきょうだいから反感を買わないよう、事前に養子縁組すること、節税になることなどを伝えておくようにしましょう。
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photograph_Shoko Matsuhashi
illustration_Minae Kato
text_Ema Tanaka
web edit_FASHION BOX, Ayaki Ando[vivace]
(大人のおしゃれ手帖 2019年10月号)
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