どんなときも、健やかな身体と希望を失わなければ。私たちを取り巻く世界のこと、大切な人たちのこと、そしてご自身の夢。俳優・吉田 羊さんの気持ちは常に、「その先」へ向かっています。
《目次》
●季節ごとのお洋服を選べることへの感謝をあらためて感じます
●いまは、自分に向き合うべき時間なのかもしれません
●さらに美しい世界に……そんな期待を、自分の中で大事にしたい
●毎日、何か面白いことを見つけようと奮闘しています
●吉田 羊 プロフィール
季節ごとのお洋服を選べることへの感謝をあらためて感じます
ブラウス¥36,000／ペレック（ペール ジュート）、デニム¥44,000／チマラ、ベルト¥20,000／セヤ（ともにジャーナル スタンダード ラックス 表参道店）、スニーカー／スタイリスト私物
色も素材も軽やかな服が、動くたびに揺れ、光に透けます。吉田 羊さんがいち早く纏った、この夏にふさわしい装い。見ていると湧いてくるのはやはり、早くこれを着て外に出る日が来ればいいのに……という思い。「本当に、そうですね」と、吉田さんも頷きます。
「物理的にお洋服を買いに行くことができなくなったいまこそ、季節ごとのお洋服を選べることへの感謝をあらためて感じますね。そして、それを着て出かける場所があったことも。以前は当たり前だったけれど、失ってみるとそれがいかに貴重な機会だったか……。今日、いま目の前にあるものやことのすべてが、もしかしたら、奇跡の連続だったのかもしれないなぁ、と」
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いまは、自分に向き合うべき時間なのかもしれません
ぽっかり空いた時間を誰もが持て余しがちだった、2020年の春と初夏。しかし、そこでしょげているばかりではいないのが、吉田さんの健やかでタフな天性です。
「こんなに長く次の仕事の準備をしなくていい時間って、思えば、はじめてなんですよね。しかも私は、すべての時間を自分のために使えるわけですから。料理をしたり、掃除をしたり、エクササイズに励んだり、映画の撮影から続けているピアノを練習したり……。仕事にかまけて後回しにしていたことを、これでもか！とばかりにやっています」
以前から少しずつ取り組んでいた“断捨離(R)”にも、腰を据えて取りかかれるいま。しかし、いざものと向き合ったとき、いつもとは違う感覚を抱いたと、吉田さんは言います。
「ずっと家にいると、3日間同じジャージを着ていたって、ぜんぜん問題ないわけですよね。いやいや、これじゃいかん！と思って、慌てて着替えるわけですが（笑）。でも、どんなふうにしていても生きていられるんだと気づくと、じゃあクローゼットにあふれるほどのワードローブは本当に必要だったのか？と……。もしかしたらいまは、本当に必要なものを取捨選択したり、欲しているものを見極めたりしながら、自分に向き合うべき時間なのかもしれません」
一見、すべてが停滞しているように感じられるこの時間にも、きっと何か新しい可能性が潜んでいるにちがいない……吉田さんの中に芽生えたのは、そんな予感です。
「もちろん、感染症の蔓延のせいで不都合なことがたくさん起こっているし、不自由もある。ときには悲しみ、絶望も感じます。それでも私は、この出来事が落ち着いた後に、ちょっといい世界になっていたらいいなぁという希望も持っているんです。というのは、人間が家に留まっていることで、大気汚染が緩和されたり、海や川がきれいになったりと、環境が改善したりもしているわけですよね。これまで、生き物の中で自分たちが至上なんだと人間が勘違いして行動してきた結果、地球に大きな負荷をかけてきたけれど、それが解消されて自然があるべき姿に戻りつつある……。そのためのインターバル期間なのかもしれないな、と」
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さらに美しい世界に……そんな期待を、自分の中で大事にしたい
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あるべき姿に戻ろうとしているのは、人間も同じ。離れているぶん、普段より人に対する思慕があらためて強く、深く感じられるようになったと、吉田さんは言います。
「たとえば、なかなか一緒に時間を過ごすことのできなかった家族が、家で顔を合わせて語り合えたり、離れている相手に『どうしてる？』と気遣うメールを送り合ったり……。地球に優しくなるだけでなく、人も優しくなれているのかな？と。仕事仲間とも、会えないことでまた会う日が楽しみにもなるし、それぞれに大切なものを選びとった同士が、次に会ったときに共鳴して、また新しいものを生み出せれば、さらに美しい世界になっていくんじゃないかと……。そんな期待を、自分の中で大事にしたくて」
だから、後ろ向きにならず、いまできることを。家事やワークアウトなどの日課に加えたのは、「より積極的に映画を観ること」でした。これも、来る日に希望をつなぐための、吉田さんなりのアクションのひとつ。
「自分が映画に対して、まだまだ不勉強だったなという反省があったので、まずはたくさん観ようと思って、今年、すでに50本ほど観ています。いい作品に出会うと、心震えるのと同時に『どうして私がここにいられなかったんだろう！』という気持ちも湧いてくる。そうしたら、素敵な作品を作る方たちといつかご一緒するための道筋をどうつけるか、考えるんです」
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毎日、何か面白いことを見つけようと奮闘しています
前向きに過ごす日々の様子を垣間見られるのが、折々に更新されるインスタグラム。これまでも、自家製パンに挑戦したり、星野 源さんの歌とピアノでセッションしたり、愛読書を紹介したりと、毎回異なる切り口で、私たちをひととき微笑ませてくれます。
「何をアップしようか、実はすごく悩むんですよ。お知らせしたいこと、ちょっとしたユーモア、自分の心が震えた何かをご紹介するもの、の3つが多いんですが、いまは、皆さんにクスッと笑っていただける、ユーモアを込めたものがいいのかな……と。だから毎日、何か面白いことを見つけようと奮闘しているんです」
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吉田 羊 プロフィール
福岡県生まれ。近年の出演作に、ドラマ『まだ結婚できない男』『凪のお暇』、映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』『ハナレイ・ベイ』、舞台『風博士』『恋のヴェネチア狂騒曲』などがある。大好評の主演ドラマシリーズ第3弾『コールドケース3～真実の扉～』が2020年末～2021年春にかけて放送予定。
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photograph_Takashi Noguchi[San Drago]
styling_Atsuko Saeki
hair ＆ make-up_Kyoko Fukuzawa
text_Michiko Otani
（大人のおしゃれ手帖 2020年7月号）
web edit_FASHION BOX, Satoko Ishikawa[vivace]
