ヨシダナギ連載7

[連載(7)ヨシダナギのココだけの話]カメラに興味がないフォトグラファーの撮影方法 ~後編~

(2020年7月30日 更新)

どうも、こんにちは。
前回は、撮影についての薄いこだわりを綴らせていただいたわけなのですが、今回は撮影が始まってからの話を少しさせてもらいます。

※前回のお話は[連載(6)ヨシダナギのココだけの話]カメラに興味がないフォトグラファーの撮影方法 ~前編~ でどうぞ

≪目次≫

※本記事は2017年4月22日に初掲載されました

 

ヨシダナギは撮影中も喋らない

私は撮影中、基本的に言葉を発しないらしい(自覚はない)。過去に「こんなに淡々と撮影してるんっすね」と、何度か驚かれたのだが、世のカメラマンは撮影中にそんなにも喋ることがあるのだろうか。私は器用なタイプではないので、話し掛けることに集中したら恐らく、写真を撮ることを忘れてしまうだろう。

だからと言って、何も喋らないのは撮影に集中している証拠かと言えば、それは「NO」である。私はカメラを構えると不思議と“無”になってしまう(カメラを構える構えないは関係なく、基本的には“無”の精神状態ではあるが……)。画面をひたすら覗いているようだが、視力が悪い私の視界はキレイにボケている。結局のところ、あまり見えていないし、重たいカメラを持っているお陰で思考回路すら停止しているので、画面がイマイチ見えていないことすら気に留めていない。

 

ヨシダ流 モデルへのポーズ指示法

ヨシダナギ連載7

「カメラスキルもないのに、よくそんな状況で写真が撮れるな」と思われた方、ごもっとも。

ココだけの話、私の作品は全て、優れたモデルあってのものなのだ。私は本当に現地のモデルに恵まれているのだと思う。初めて会ったモデルさんであっても、朝と夕の1回ずつ撮影を行えば、それ以降の撮影では言葉はほぼ交わさなくとも、アイコンタクトと軽いボディランゲージのみで意志疎通は図れるようになっている。なので、私が撮影中に言葉を発するのは、モデルの名前を呼ぶ時、もしくは、ポーズを変える時に「少し右」などと発するだけである。

そもそも、私は人と話すことに未だに慣れていない故に声を出すこと自体が苦手である。なので、撮影指示の大半はモデルの名前だけを呼び、自分が指示したいことをその場で体現してモデルに見せる。例えば、アゴを少し上にあげてほしい時はモデルの名前を呼んで、目が合ったら自分がアゴを上にあげてみせるだけだ。腕や足のポーズなんかも、名前を呼んで、私がその場でポーズをやってみせる。

とにかく、私は撮影中もホントに喋らない。彼らがスムーズにポージングをとってくれた時や表情が素晴らしかった際も、親指を立てて「今の最高だ!」と、微笑みながら伝える。我ながら不器用である。

以上が、私の現地での撮影方法なのですが、いかがでしたでしょうか。
とりあえず、この原稿を書きながら「次の撮影は眼鏡をかけて挑んでみようかな」と、ふと思いましたが、きっと次回も眼鏡をかけることを忘れていることでしょう。

それでは、次回は先日の質問募集でも問い合わせが多かった“ヨシダの食”について、お送りします。どうぞお楽しみに。

 

[連載(1)ヨシダナギのココだけの話]フォトグラファー?

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[連載(11)ヨシダナギのココだけの話]「ヨシダ」は実はデュオだった!? ポンコツ式仕事術

 

ヨシダナギ/Profile

ヨシダナギProfile
ヨシダナギ

(nagi yoshida)

1986 年生まれ。フォトグラファー。
2009年より単身アフリカへ。以来、独学で写真を学び、アフリカをはじめとする世界中の少数民族を撮影、発表。
唯一無二の色彩と直感的な生き方が評価され、2017年には日経ビジネス誌で「次代を創る100人」、雑誌『Pen』「Penクリエイター・アワード 2017」へ選出。「講談社出版文化賞」写真賞を受賞。
著書に、写真集『SURI COLLECTION』(いろは出版)、写真集『HEROES ヨシダナギBEST作品集』(ライツ社)、紀行本『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』(扶桑社)、エッセイ『ヨシダナギの拾われる力』(CCCメディアハウス)がある。2020年には世界中のドラァグクイーンを被写体とした作品集『DRAGQUEEN ‐No Light, No Queen‐』を発表。
近年は、阿寒湖イコロシアター「ロストカムイ」キービジュアル撮影、山形県「ものづくり」プロモーションのムービーディレクション、タヒチ航空のプロモーションビジュアル撮影など国内外での撮影やディレクションなどを多く手がける。
公式サイト http://nagi-yoshida.com/

Text:ヨシダナギ
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Web edit:FASHION BOX

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