(2020年7月30日 更新)
どうも、こんにちは。竹馬と一輪車が得意なヨシダです。
写真展などで「カメラは何を使っているのですか?」「写真は加工しているのですか?」という質問が非常に多いので、今回はそのことについて、ちょっとばかし綴ってみようと思う。
※こちらの記事は2017年6月18日に初掲載されました
ヨシダにカメラのことを尋ねるのはナンセンスです
このコラムで何度も書いていることではあるのだが、私はカメラと写真に対しての知識が皆無である。
カメラの専門用語を聞くと脳がフリーズする。よって、私にカメラのことを聞くのはナンセンスであると、ハッキリ言っておく。写真の疑問はちゃんとしたプロカメラマンやその道の専門家に尋ねることを是非お勧めしたい。
が、現在、私が使っているカメラは「Nikon」のD810であることだけは、この場を借りて宣伝しておこう。
※カメラ熱が低い私なんぞに機材提供をしてくれているカメラ界の仏のようなNikonさんに、出来る限り、恩を返したいのだ。
写真の加工についてだが、私の作品を見て一目で分かるように「Lightroom(※1)」と「Photoshop(※2)」を使って“レタッチ加工(※3)”を施している。私の作品の元の画像は、色味の薄いグレーっぽい暗い写真の為、記憶を頼りに絵を描くような感覚で色味を記憶に合わせて(蘇らせて)いく作業をしなくてはならない。※私の場合、撮影時間よりも日本に戻ってきてからの、このレタッチ作業時間の方が圧倒的に長い。
私の作品をよくHDR(ハイダイナミックレンジ合成の略)ではないかと受け取り、HDR加工の手法などを尋ねられることがあるのだが、ハッキリ言ってそれを聞かれても答えることができない。
ココだけの話、HDRの撮り方、そしてその加工の手法なんぞ知らないのだ。もちろん、“HDR写真”というもの自体がどんなものかくらいは認識しているつもりだが、HDR写真の仕上げ方は聞いたこともなければ、勉強したこともないので、私自身はHDRという手法をとったことがない。もしも、私の作品がHDR加工というものに分類されるのならば、それは偶然にして生まれたHDR写真であることは間違いない(寧[むし]ろ、写真のジャンルなんて何でもよいのだ◎)。
これも過去にこのコラムで書いたことだが、私がカメラを手にとるのは海外にいる時の限られた時間のみである。日本では全くカメラに触れない(できれば触れることも避けたい)ので、渡航が重なった時は月に何回か撮影とレタッチをするが、渡航の期間が空くと3~4カ月ぶりに“カメラに触る=レタッチする”なんてことは私の場合、よくある話なのである。それゆえに、毎回、渡航の度に写真の撮り方やカメラの設定方法はもちろんのこと、レタッチのやり方を忘れて「一体、私はどうやってレタッチをしていたのだろう……」と、思い出すまでに数日間苦しむのが、私のルーティーンである。とにかく毎回毎回手探りから始めるのである。
だから、撮影から帰ってきてからは過去の作品をデータから引っ張り出すことから始まり、これまでの作品と色調が合うように「どこを押せば、あーなるんだ?」と過去の自分の作品を見ながら「Photoshop」という魔物と悪戦苦闘を繰り広げているのだ。つまり、すべては自分の作品なのに、毎回、自分の作風に近づけるのが一苦労というバカな話なのだ。そんな私の裏事情はこれまでマネージャーしか知らなかったことなので、「レタッチのやり方を見せてほしい」という仕事の依頼がチラホラ舞い込んでいたのだが、到底、そんな仕事を受けられるはずがない。寧(むし)ろ、私がレタッチの方法を1から誰かに教えてもらいたいくらいだ(そんな都合のよい仕事はないだろうか)。
“人が本当に見たいものは、記録ではなく、記憶”(ヨシダナギ)
今回は皆さんから聞かれるレタッチについて、如何に無知であるかを正直に綴ってみました。
こんな感じですので、どうか今後は出来るだけヨシダにレタッチ加工や写真の技術については聞かないでやってください。間違いなく脳がフリーズしますので。
最後に、かっこよくひと言だけ言わせてほしい。
いろんな人が本当に見たいと思うのは、記録ではなく、記憶であると。
次回は、ヨシダの「日本での仕事と過ごし方」について、慎ましくお送りする予定でございます。
<FASHION BOX編集部 注釈>
※1:アドビ社の代表的な写真編集ソフト「Adobe Photoshop Lightroom」のこと
※2: アドビ社の代表的な写真編集ソフト「Adobe Photoshop」のこと
※3:写真や画像データの色補整や汚れの除去といった修整や、画像の加工作業など(本文では前者の意味合いで使用)
[連載(2)ヨシダナギのココだけの話]アフリカは「恋人」ではなく「古女房」
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[連載(6)ヨシダナギのココだけの話]カメラに興味がないフォトグラファーの撮影方法 ~前編~
[連載(7)ヨシダナギのココだけの話]カメラに興味がないフォトグラファーの撮影方法 ~後編~
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[連載(11)ヨシダナギのココだけの話]「ヨシダ」は実はデュオだった!? ポンコツ式仕事術
ヨシダナギ/Profile
(nagi yoshida)
1986 年生まれ。フォトグラファー。
2009年より単身アフリカへ。以来、独学で写真を学び、アフリカをはじめとする世界中の少数民族を撮影、発表。
唯一無二の色彩と直感的な生き方が評価され、2017年には日経ビジネス誌で「次代を創る100人」、雑誌『Pen』「Penクリエイター・アワード 2017」へ選出。「講談社出版文化賞」写真賞を受賞。
著書に、写真集『SURI COLLECTION』(いろは出版)、写真集『HEROES ヨシダナギBEST作品集』(ライツ社)、紀行本『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』(扶桑社)、エッセイ『ヨシダナギの拾われる力』(CCCメディアハウス)がある。2020年には世界中のドラァグクイーンを被写体とした作品集『DRAGQUEEN ‐No Light, No Queen‐』を発表。
近年は、阿寒湖イコロシアター「ロストカムイ」キービジュアル撮影、山形県「ものづくり」プロモーションのムービーディレクション、タヒチ航空のプロモーションビジュアル撮影など国内外での撮影やディレクションなどを多く手がける。
公式サイト http://nagi-yoshida.com/
Text:ヨシダナギ
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