『大人のおしゃれ手帖』で連載中の南 果歩さんの【I am Here!】。今回のテーマは「マスクと絵本」。マスクの寄付で目の当たりにした医療現場の現状について綴ってくれました。自分ができることを模索してたどり着いた、絵本の読み聞かせで気づいたリモートのよさとは。
《目次》●マスク10万枚を寄付。3台の車で病院を回る
●想像以上にひっ迫する医療現場の現状を知る
●私にできることは何か。絵本の読み聞かせを生配信
●人が繋いでくれたご縁で、外出自粛中も自分らしく
●自分ができることを模索して
●南 果歩 プロフィール
マスク10万枚を寄付。3台の車で病院を回る
コロナ禍で医療従事者のマスク不足のなか、知り合いの伝手(つて)を頼りに、マスクを10万枚輸入し寄付させていただきました。4月の時点で既にマスクの値段が急騰していて、今までの数倍の値がつき、更に日本に入ってからの値上がりが著しかったことがきっかけです。人間やろうと思えば何でもできるものですね。
オーダーから3週間かかって、船便でやっと東京港に着いたマスク10万枚。通関後、港近くの倉庫に取りにいきました。
知り合いの協力を得て、車2台で向かったのですが、フォークリフトで運ばれてきた大きな段ボール箱50箱を見て唖然としました。なにせ初めてのことなので10万枚の量の想像がつかず、あろうことか用意した2台の車には入りきらず、途方に暮れてしまいました。それでももう1台車を確保しなければと、友達に電話をかけてみると、二つ返事で仕事をおいて駆けつけてくれたのです。救世主とはこのことだ!
こうしてダンボールで埋め尽くされた3台の車は、マスクを届けるためにECMO(エクモ)を有する病院を回ったのです。
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想像以上にひっ迫する医療現場の現状を知る
直接お届けしてよかったのは、病院の理事長さんやスタッフの方々から、医療現場の現状を伺えたことでした。
医療現場のひっ迫は私が想像していた以上で、物理的に身を守るマスクや防護服の不足だけでなく、医療従事者の精神的な疲労が著しいということでした。
毎日感染のリスクの高い医療現場に立ち、自身の家族へのリスクも伴うことから自宅に帰ることもままならず、前線で戦い、心身ともに疲労困憊だということ。
せめて万全の態勢で医療現場に立てるように、私達はできることを精一杯サポートしなければと、改めて感じたのです。
マスクの寄付はその後も、知り合いが私の行動に賛同して引き継いでくださり、同じルートを使い更に防護服や医療用マスクの輸入をし、医療機関への寄付を続けることができました。ありがたい連鎖です。
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私にできることは何か。絵本の読み聞かせを生配信
そしてもう一方で、絵本。
東日本大震災後、そして熊本地震後に、絵本を抱えて幼稚園や保育所、小学校、小児科病棟を回ってきました。
このコロナ禍でも心のケアに絵本の持つ力は大きいし、私にできることは何かと考え、読み聞かせをしたいと思ったのです。
息子が生まれてからずっと絵本は身近にあり、息子に読んであげるのが日課でした。好きな絵本を息子が選び、眠る前にベッドで並んで読むのです。いってみればスキンシップの一部だったと思います。息子セレクトのお気に入りの絵本を毎日読んであげても、毎日同じ箇所で大笑いをする。毎回新鮮に受け止めるその心に、読んでいる私のほうが癒されていたのかもしれません。
しかし今のご時世、今までのように直接出向いて読むわけにはいかず、どうしたものかと思っていたところ、マスク寄付の報道を目にした知人から、マクドナルド財団の方を紹介したいと話がありました。Zoomミーティングで話し合うなかで、リモート生配信の読み聞かせに発展していったのです。
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人が繋いでくれたご縁で、外出自粛中も自分らしく
この財団は、全国の小児科病院のそばに入院中の子どもたちの家族が宿泊できる施設、マクドナルド・ハウスを運営しているのです。今回は成育医療センターに入院している子どもたちとご家族のみなさん、そして医療従事者の方々に向けての読み聞かせでしたが、私のインスタでも生配信したので、私のファンの方々にも見ていただけました。
私にとっても初めての試みでしたが、聞いてくれている子どもたちも大人の方々も喜んでくださり、同じ時間を共有している実感もありました。これも怪我の功名、思わぬ鉱脈を見つけた感じです。
直接出向いていくことは、もちろん大事ですが、より多くの方々に聞いていただけるリモートのよさを知りました。
直接会えなくても、人が繋いでくれたいろんなご縁で、外出自粛中も自分らしいことが少しずつやれたかな。
これからもっと、このリモート読み聞かせは広げていきたいと思っています。楽しみです。
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自分ができることを模索して
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わからないながらも、思い切って踏み出したら、いろんなことが動き出しました。
これからもできることを模索していきたいです。
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南 果歩 プロフィール
Kaho Minami/1984年に映画『伽倻子のために』で俳優デビュー。最近の出演作に、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』。映画『MISS OSAKA』『脳天パラダイス』の2本が2020年公開予定。
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photograph_Takashi Noguchi[San Drago]
styling_Kuniko Sakamoto
hair & make-up_Keizo Kuroda[K Three]
文_南 果歩
(大人のおしゃれ手帖 2020年8月号)
web edit_FASHION BOX, Satoko Ishikawa[vivace]