ヨシダナギ連載

[連載(8)ヨシダナギのココだけの話]コウモリも美味かもしれない~“食”への飽くなき探求心~

(2020年7月30日 更新)

どうも、こんにちは。下戸(げこ)のフォトグラファー、ヨシダナギです。

以前、このコラムでヨシダのネタ切れ延命措置として皆さまからの質問を募集させていただいたところ、“食”に関しての質問を数多くいただいたので、今回は私の“食”に関して、ちっとばかし綴ってみたいと思う。

≪目次≫

※本記事は2017年5月7日に初掲載されました

 

ヨシダナギの主張「私は味覚音痴ではない」

某テレビ番組で私が毎回、イモムシやらコウモリやらを頰張っている影響もあってか、「ヨシダさんって食には無頓着なんですか?」といった質問を投げかけられることが非常に多い。最初はこの質問の意味が全く分からなかったのだが、 “ゲテモノも普通に食える=味覚音痴。または、腹が膨れれば味など一切気にしない”といったニュアンスで捉えられているということが分かった時は、ハッキリ言ってショックを受けた。大事なことなので、もう一度言っておく。ヨシダはショックを受けた。

ココだけの話、私の数少ない楽しみの1つが美味しいご飯を食べることである。
私は日本にいる時はできるだけ美味しいものを食べたいと思っているし、同じお金を払うならば美味しいご飯にお金を払いたいと思っているので、暇さえあれば「食べログ」を眺めている(ただ、一人では外食しない為、行きたいお店があっても友達が少ない私はなかなかミッションをコンプリートできていないのが悲しい現実である……)。だから、多分、食への関心は人並み以上には持ち合わせているはずだし、間違ってもバカ舌ではないと思っている(実の父も「食べログ」評価3.56のイタリアンレストランのオーナーシェフだったりする。 ※2017年4月某日現在)。
そんなことを言うと「バカ舌じゃなかったらイモムシやヨダレ味のビールなんか普通に口にできない」という声も聞こえてきそうだが、食への探求心が強いからこそ、何でも口に運べると思ってほしい。

 

ヨシダナギの「食」にまつわる幼少期のおもひで

私がどんなものでも躊躇(ちゅうちょ)なく口に運べるようになったのは、幼少期の母親からの教育の影響だと思われる。
当時のヨシダ家は、決して、裕福ではなかったので、小学生の頃のお小遣いは1週間110円だった(お小遣いは何故か自動販売機基準だったため、自販機でのジュースの販売価格が1本120円に値上がりした時に私のお小遣いも120円になった)。お小遣いが周りの子たちと比べてはるかに少なかったことから、駄菓子屋に行っても皆と同じようなお菓子が買えず、いつもお腹を空かせていたのを覚えている(そもそも算数を諦めていたバカなので、110円しかないのに毎週頭に100円のセーラームーンのカードダスにお金を使って、10円のガムしか買えずにいただけ)。

そんな腹っぺらしの私に対して、当時、母親が口癖のように言っていたのが「人間、基本的には何食っても死なないから何でも食え」という言葉だった。恐らく、その言葉は“好き嫌いせずに出されたモノは何でも食べなさい”という意味だったのではないかと今更気付いたのだが、当時の私はその言葉を真に受けてしまい、「人間は滅多に死なないんだ!それなら、食べられそうなモノは食べちゃえばいいんだ!」と、思ってしまったのだ。我ながら見事なまでの単細胞である。

まず手始めに、私は野良ネコのキャットフードに目をつけた。同じ団地に住むオバちゃんが毎日同じ時間に野良ネコにあげるキャットフードを何カ所かに置いて歩いていたので、私はそれを野良ネコに混じってつまんでいた。
「美味しくないけど、タダで食べられるなら悪くはない」
そんな感じで数日間は野良ネコとエサの争奪戦をしながら空腹を満たしていたのだが、それもあっけなくオバちゃんに見つかってしまい、お説教を食らった上に私もネコもキャットフードを貰えなくなってしまった(野良ネコにはとても悪いことをしたと反省している……)。

それからは、より簡単にお腹を満たしたかったため“簡単に量が手に入るモノ”というシバリで考えた結果、なぜか、アリとダンゴ虫を食べてみるという挑戦に帰結してしまった。
今ならもっと他の案を出せそうな気がしなくもないのだが、当時の小2のヨシダにはアリとダンゴ虫が限界であった。確かに、アリとダンゴ虫は簡単に沢山捕まえられたし、量には困らなかった。が、いかんせん腹が満たされない。アリに関しては、小さすぎて何が何だか分からないし、ダンゴ虫は歯に詰まる。そんな感じで、当時は腹が空けば落ちてるガムだろうと、ミミズだろうと目に入った食べられそうなモノは何でも口に入れる癖がついてしまっていた。

その結果、今の私が形成されてしまったのだ。
ただ、今も昔も虫などを食べる時に「美味しそう」なんて思ったことは一度もない。どう見たってイモムシやダンゴ虫は圧倒的に不味そうなフォルムをしている。一般的には不味そうなフォルムをしていた時点で口に入れないのかもしれないが、私にとっては“一体、コイツはどんな味がするのだろうか。どんな感じで不味いのだろうか”ということが気になってしまうのだ。大半のケースは、“当たり障りのない予想通りの不味さ”という結果で終わるのだが、予想よりもはるかに不味かったケースは「この世にこんなヒドイ味がするモノが存在したとはっ!」と興奮するし、予想よりも不味くなかったらソレはソレで発見だし、万が一、不味そうなものが美味しかったら、それは非常に得した気分である。だって、食べられないものが多いより、少ない方がいいに決まっているし、どうせ食べるなら美味しいと思って食べる方が幸せだと思いませんか?(もし、世界が食料不足になった時、何でも食べられた方が1日でも長く生き延びられる可能性も生まれてくるわけだし……)。

ヨシダナギ連載
出典: FASHION BOX

 

ヨシダの嫌いな食べ物、好きな食べ物

このように間違った(私が勘違いした)母親からの教育のせいで、基本的には何でも口に入れることが可能となった私ではあるが、私にも人並みに好き嫌いがある。私が絶対に食べることができないのが、マシュマロとグミである。これは口に入れるだけでも不愉快であって、噛んで飲み込むなんてもってのほかである。そして、ここ一年は生魚が苦手になってしまった。生魚は食べられなくはないのだが、決して、美味しいと思わないのだ。噛んで、飲み込むまでが非常に苦痛なのである。できることなら食べたくないモノである。

そんな感じで、今回は「何でもかんでも美味いと思って食べてるわけじゃないよ!」「バカ舌なわけじゃないよ!」ということを言いたかっただけの非常に内容の薄いコラムである。 ※通常運行ではあるが

因みに、私の好きな食べ物は“炭水化物”である。ただしく言うならば“極力、噛まないで食べられる炭水化物”である。とろろかけご飯や卵かけご飯なんかは、ほぼ噛まずに飲み込めて、尚且(なおか)つ、米の塊が喉を通る気持ちよさがたまらないのだ。
そんなこんなで、結果、やっぱりバカ舌なんじゃないかという疑惑を呈したところで、今回のコラムは終わりにしたいと思う。

 

次回は恐らく、またヨシダのネタ切れ延命措置として皆さんからの質問コーナーを再度設ける予定なので、皆さん遠慮なく質問してくれたまえ。

 

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ヨシダナギ/Profile

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ヨシダナギ
出典: FASHION BOX

(nagi yoshida)

1986 年生まれ。フォトグラファー。
2009年より単身アフリカへ。以来、独学で写真を学び、アフリカをはじめとする世界中の少数民族を撮影、発表。
唯一無二の色彩と直感的な生き方が評価され、2017年には日経ビジネス誌で「次代を創る100人」、雑誌『Pen』「Penクリエイター・アワード 2017」へ選出。「講談社出版文化賞」写真賞を受賞。
著書に、写真集『SURI COLLECTION』(いろは出版)、写真集『HEROES ヨシダナギBEST作品集』(ライツ社)、紀行本『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』(扶桑社)、エッセイ『ヨシダナギの拾われる力』(CCCメディアハウス)がある。2020年には世界中のドラァグクイーンを被写体とした作品集『DRAGQUEEN ‐No Light, No Queen‐』を発表。
近年は、阿寒湖イコロシアター「ロストカムイ」キービジュアル撮影、山形県「ものづくり」プロモーションのムービーディレクション、タヒチ航空のプロモーションビジュアル撮影など国内外での撮影やディレクションなどを多く手がける。
公式サイト http://nagi-yoshida.com/

Text:ヨシダナギ
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Web edit:FASHION BOX

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