妊娠中、体調が悪いわけでもないのに何となく体がだるくてやる気がでない。食事の準備をしたり掃除をするのもめんどくさい。意味もなく気分が落ち込む……。これってもしかしてマタニティブルー!? そんな妊娠期に起こる原因のない心身の不調ついて産婦人科医の三井真理先生に伺いました。
ホルモンバランスの大きな変化が心身に影響を与える
――そもそもマタニティブルーとは、どんな状態でしょうか?
「具体的な原因はないのに、気持ちが落ち込んだり、もの悲しかったり、やる気がでない、不安になるといった心が不安定になる状態です。程度の差はありますが、これは普段のご自身より心が明らかに弱っているということ。このような状態が1~2週間ぐらい続くようでしたらマタニティブルーになっているかもしれません」(三井先生)
――マタニティブルーになる原因は何でしょうか?
「これは妊娠・出産に伴うホルモンバランスの急激な変化が一因と言われています。妊娠によってエストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンが分泌されることで、体調だけでなく心へも何らかの影響を与えることがあります。ただ、個人差がありますから、すべての妊婦さんがマタニティブルーになるとは限りません。誰にでも起こり得る可能性があります」(三井先生)
マタニティブルーは胎児に影響するの!?
――マタニティブルーは、どういった時期に起こりますか?
「産前・産後に関わらず起こりえますし、マタニティブルーになりやすい妊娠期間(初期・中期・後期)などもありません。ひとりひとりのホルモンバランスの状態によりますね。また、マタニティブルーになると胎児が育ちにくくなるなどの影響はとくにありません」(三井先生)
――具体的な治療法はありますか?
「まず、ひとりで抱え込まないことです。自分の気持ち、今の状態を家族や友だち、かかりつけ医に話してください。投薬よりも日々の行動を変えていくことが大切ですね。誰かに打ち明けることで、気持ちが軽くなり、状況が変化することもあります」(三井先生)
誰にでも起こり得ること。ひとりで考え込まないで
――マタニティブルーを予防する方法はありますか?
「ひとりで不安を抱え込まず、我慢や無理をせず気持ちをラクにして毎日を過ごしましょう。マタニティブルーは誰にでも起こり得ることで、特別なことではありません。少しでも不安を感じたら、ひとりで考えすぎないことが大切です」(三井先生)
妊娠中は日常生活がある程度制限されますし、妊娠前の環境と異なるところがあります。さらにホルモンバランスの変化によって、心身ともに自分ではコントロールできなくなることもあるので、少しでも心や体の変化に気づいたら、まわりにいる人を頼り、相談してくださいね!
教えてくれたのは…国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 不育診療科 診療部長 三井真理先生
【PROFILE】日本大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士。日本周産期・新生児医学会認定 周産期(母体・胎児)専門医・指導医。日本産婦人科学会認定 産婦人科専門医・指導医。
取材・文=夏目 円
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