つらい腹痛や肌荒れ、憂鬱、イライラなど……悩みが尽きない生理事情。ついパートナーに八つ当たりしてしまったり、痛みでデートをドタキャンしたら彼が不機嫌に、なんてことありますよね。生理のことは男性はわからないので、話をしたことはないという人も多いのでは。一番近くにいるパートナーだからこそ、生理について少しでも知ってもらえたら生理の期間の過ごし方が変わるかもしれません。「フェムテック」の盛り上がりとともに、少しずつ語られるようになってきた生理について、産婦人科医の福山千代子先生にお話伺いました。
月経痛とPMSが来院患者の2大悩み
福山先生 今までは生理痛に関するお悩み相談が圧倒的に多かったところ、近年は生理痛と同じくらいPMSに関するお悩みが増えてきています。生理痛のお悩みとしては、お腹だけでなく、頭が痛い、腰が痛い、など痛みも様ざまです。ひどい症状の場合は、救急車で運ばれることもあります。
痛みがひどい、経血量が多い場合、疾患が隠れていることも
福山先生 量があまりにも多い場合は、子宮筋腫・子宮内膜症・子宮腺筋症といった疾患が隠れていることもあるので必ず受診が必要です。診察をしないでピルだけのめばいい、と考えることはとても危険。粘膜下筋腫があった場合、ピルをのむと血が止まらなくなることもあるんです。異常はなくても日常生活を送れないほどの痛みや経血量が多い場合、ピルを処方したりミレーナを挿入したりする治療をします。
━━近年、よく耳にするようになってきたミレーナ。避妊のための器具だと思っていましたが、月経痛や月経過多の治療にも使われているんですね。
知っているようで知らないピルとミレーナ
福山先生 そうなんです。ピルはのみ薬なので、副作用が出た場合全身に出てしまうこともありますが、ミレーナは局所、つまり子宮の内膜にしか効果が出ないので、喫煙していて血栓のリスクが高い人にも使えますし、なるべくピルを勧めていない40代以降の方でも使えます。ただ、子宮の狭い箇所に物を入れるので、未産婦さんだとかなり挿入に痛みを伴うことはあります。また、安定するまでの数ヶ月間は不正出血があることも。とはいえ、ピルと違ってのみ忘れもないので、うまく入ってしまえば高い効果が期待できます。
福山先生 ミレーナとは、T字の縦のところから黄体ホルモンが5年間出続ける仕組みになっています。子宮の内膜を厚くしないので、妊娠しにくく生理の量も少なくなります。ミレーナを装着しても、卵巣は普段通りに働いているので排卵もしますし、PMSも起こります。
フェムテックから考える、生理を女性だけの問題にしない
福山先生 「生理中は神社の鳥居をくぐってはいけない」という言葉を昔聞いたことがありますが、「生理が汚いもの」「穢らわしいもの」という考えが今も残っていてつらい思いをしている人がいるのであれば、性教育をもっと徹底すべきだと個人的には思います。生理があるからこそ生命は誕生するわけなので、生理を女性だけが抱える問題にしておかず、男性も少しずつ寄り添っていけたらいいと思います。少しでも理解があれば、生理期間中はデートプランを変更したり、相手を思い遣った行動ができると思いますよ。
パートナーにメールで体の状況をお知らせ
日本のフェムテックを牽引する「ルナルナ」の有料版では、登録したパートナーに、直接は伝えにくい生理日やPMSが出やすい黄体後期などのお知らせのメールが届く。
教えてくれたのは……福山千代子医師
日本産科婦人科学会専門医。日本産婦人科学会・日本女性心身医学会所属。MET BEAUTY CLINICにて勤務。生理トラブルや更年期障害など、あらゆる世代の女性特有のお悩みに向き合う。
宝島社では女性誌11誌男性誌2誌、計13誌合同によるフェムテック・フェムケア啓発プロジェクト「もっと話そう! Hello femtech」を2021年12月25日(土)より始動しました。
フェムテックの認知度向上を通じて、女性の健康問題に係わる具体的な話題を話す機会を増やすことで、女性がより活躍できる社会に繋げ、ひいては男女関係なくヒトが生きやすい社会を目指すための活動です。
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取材・文=吉田彰子