シブラク

“真打”直前のイケメン落語家・小痴楽を堪能![話題の渋谷らくごレポ] #落語女子

こんにちは。「FASHION BOX」の中の人です。
先日、出勤途中に、古典落語の定番「饅頭こわい」を唱えながら自転車で走り去る小学生男子と出会う、という作り話のような体験をしました。「怖い怖いってぇ饅頭が怖いのかい?」とのこと。可愛かったです。

さて先日、初心者さんにオススメの寄席として渋谷らくご、略して“シブラク”をご紹介しましたが、あのときにちゃっかり取材と称して寄席も聴かせてもらっちゃったんです♡(いや、ちゃんと取材もしたんですけど……)
そこで今回はお邪魔した2019年7月の公演を、拙い言葉ですがレポートしたいと思います!ネタバレしまくり、ご容赦ください。

☆落語初心者にぴったりの寄席“シブラク”のご紹介はコチラ
★落語初心者にオススメの映画・本・漫画まとめ

当日の「渋谷らくご」に出演された噺家さんは、二つ目の柳亭市童(りゅうてい いちどう)さんと立川笑二(たてかわ しょうじ)さん、柳亭小痴楽(りゅうてい こちらく)さん、真打(しんうち)の笑福亭福笑(しょうふくてい ふくしょう)師匠という4名。「二つ目研鑽(けんさん)会 with 福笑師匠!」と銘打った、上方落語すなわち関西からお越しの福笑師匠と若手お三方との競演でした。
私がシブラクに通い始めたのは約2年前なのですが、今まで聴いたどの公演よりも熱がこもっていた気が。4名とも、マクラ(※)はほぼ入れずに噺をスタート。先に登場した柳亭市童さん、立川笑二さんは素晴らしい“間合い”で観客をストーリーに引き込み、後半の笑福亭福笑 師匠、柳亭小痴楽さんはパワフルさで観客を圧倒する。そんな印象の番組でした。
(でも、ユルッとした公演も私は好きですよ。マクラ9 対 落語1みたいなのも、それはそれで和みます)

※落語で本題に入る前の話。導入部。(落語芸術協会HP/落語辞典より引用)

〈目次〉

 

夢の酒/柳亭市童さん

北海道ご出身だという柳亭市童さんが、この日選んだネタは「夢の酒」。旦那が夢の中で美女とお酒を酌み交わしたと聞いて嫉妬した奥さんが、義父(旦那の父親)に「同じ夢を見て、その女に文句をつけてきてください」と頼むというストーリーです。

実は、この「夢の酒」は私のお気に入りの噺。架空の美女に嫉妬して義父に無理難題を押し付ける奥さん(きっと10代~20代でしょうね)も、若い嫁の頼みに抗えない義父も、可愛げがないですか?夢でお酒を飲もうとしたところで起こされ、飲めなかった義父が言い放つ「冷(ひ)やでも良かったのに」というオチも、非常に落語らしいというか……。
そんなわけで聴けて嬉しかったのですが、もしかしたら市童さんは、この日の別の公演で起きたアクシデントに引っ掛けて、このネタを選んだのかな、という気もしました。

さて、この噺を市童さんが演じると、まるで映画を観ているかのように錯覚します。女の子らしい奥さんに、ヤキモチ焼きな奥さんを相手にしない旦那さん、息子に威厳を示そうとしつつも嫁には甘くてお酒好きで、厳格な父になりきれない義父。キャラクターが異なる登場人物3名が、しっかりと演じ分けられています。
特に心に残っているのが、義父が夢から覚めるシーン。スローモーションがかかっているかのような演技は、映像作品さながらでした。お見事!

 

五貫裁き/立川笑二さん

二番手として登場したのは立川流の立川笑二さん。古典落語「五貫裁き」をコミカルに演じました。
「五貫裁き」は名奉行の大岡越前が、八五郎と質屋の間に起きたお金にまつわるイザコザを解決する噺です。
この八五郎は、カタギになって八百屋をやろうと決意しているものの、もともとはヤンチャな人物。立川笑二さんが演じると、振る舞いや口調がどこかチャラくていい感じです(もちろん笑二さんご自身がチャラいと言いたいわけではない)。笑二さんは沖縄ご出身とのことなので、南国特有の明るさが感じられるというか……。まぁ、それは私見ですが、ちょっと現代風の話し方をする八五郎が親しみやすく、ちょっぴり分かりづらいお金勘定にまつわる噺も、すんなりと受け入れられました。“シブラク”キュレーターのサンキュータツオさんが公演前に笑二さんのことを「一席ずつ丁寧に、わかりやすく演じている」と評されていましたが、まさにその通り。複数名の登場人物全員が、いきいきと目に見えるかのようでした。

 

桃太郎/笑福亭福笑 師匠

関西出身の私は、どうやら東京落語のほうに惹かれるきらいがあるようで……。きっと“ないものねだり”というやつだと思うのですが、噺家さんの江戸っ子口調にカッコいいなぁと惚れ惚れしてしまうのです。
しかし、そんな私も福笑師匠にはヤラれました……。“芸歴51年”と聞き、どんな威風堂々とした重鎮が現れるのかと思いきや、高座に上がられたのは「大阪の居酒屋から一杯引っ掛けてきた(かのような)おっちゃん」。落語「桃太郎」を演じられました。
この「桃太郎」、もともとはマクラに使われるほど短い噺のよう(※私調べです。間違っていたらすみません)。眠れない子どもが、父親が語る「桃太郎」に茶々を入れ始めるという物語。
ですが福笑師匠の手にかかれば、ケン坊(子ども)が一大スペクタクルのように「桃太郎」を父親に語ってあげるストーリーに。父親も観客も、ケン坊の迫真の演技にすっかり魅了されてしまうのです(途中で寝入るケン坊を「もう少しやってくれ」と起こす始末)。
頭をカラっぽにして聴けて、いっぱい笑わせていただいた30分間でした。そして「関西の居酒屋に、こういうおっちゃん座ってそうだな~」とも思いました(羽織を置き忘れて(?)舞台を後にされたのも可愛かったです)。

 

宿屋の仇討ち/柳亭小痴楽さん

トリを務めたのは、9月に真打に昇進する柳亭小痴楽さん。
どうやら、この日の公演は“トリの小痴楽さんに、渋谷らくごが激推しする二つ目と大ベテランの爆笑怪物の師匠をぶつける”という狙いもあった模様。もうじき昇進する小痴楽さんへのプレッシャーと熱い想いが込められていたんですって。熱がこもった公演だと感じたのも、さもありなん、ですね。

「宿屋の仇討ち」は、とある宿屋に泊まった侍と、その隣の部屋に泊まった旅行中の3人組の男とのトラブルを描いています。
以前から思っていたのですが、小痴楽さんはちょっとおバカなチャラ男の役が超ハマりますよね。この噺でも、夜更けにどんちゃん騒ぎをする男衆がお上手で……お調子者だけど憎めない、こんな人いるよねぇと思わせてくれます。
そして、相変わらずの心地よい江戸っ子口調で、耳を楽しませてくれました。
また、この3人連れは上方から江戸へ戻る途中という設定なのですが、3人の会話の中で福笑師匠を引き合いに出したようなくだりが……。考えすぎかもしれませんが、大先輩へのリスペクトが伝わってくるライブならではの出来事に、胸アツでした。

余談ですが、小痴楽さんのツイッターによれば、この日は38度超えの熱があったそうで……。しかし、そんな気配はまったく感じさせない、エネルギッシュな高座でしたよ。さすがプロ。

 

【オススメ記事】
女性からデートに誘うなら“落語”がオススメ #落語女子

シブラク終演後
出典: FASHION BOX

【Profile】
柳亭市童(りゅうてい いちどう)
18歳で入門、芸歴9年、2015年5月二つ目昇進。2018年渋谷らくご大賞「おもしろい二つ目賞」を受賞。最近少し太ってきたらしい。最近、人生で2度目の丸亀製麺ブームが来ている。ネタおろしをした次の日は、部屋を片付けるルーティンがある。

立川笑二(たてかわ しょうじ)
20歳で入門、芸歴8年、2014年6月に二つ目昇進。沖縄出身の落語家。飲み会に参加することが多いが、気づくと寝てしまっている。公園のベンチで落語の稽古をする。笑二が一発で変換できないため「笑う」「二年間」と打ち込んでから「う」と「年間」を消す。

笑福亭福笑(しょうふくてい ふくしょう)
19歳で6代目笑福亭松鶴師匠に入門、芸歴51年。高校を中退し、落語家になることを決意して入門する。前回シブラクにご出演されたときは、渋谷でラーメンを食べてから楽屋入りされた。「若者向けの味付けだった」と言っていた。

柳亭小痴楽(りゅうてい こちらく)
16歳で入門、芸歴13年、2009年11月二つ目昇進。2019年9月に真打昇進することが決定。ツイッターに、温泉での入浴シーンや、下着姿といった衝撃的な写真がアップされている。病的なほど本を読んでいる。焼き肉好き。

※「渋谷らくご」公式読み物「どがちゃが」2019年7月 プレビュー編より引用
※画像・原稿の無断転載はご遠慮ください
文・編/FASHION BOX

RELATED CONTENTS

関連コンテンツ