佐々木蔵之介|新卒で入社した広告代理店を脱サラして役者人生を歩むまで

佐々木蔵之介|家業を継ぐはずの人生から一転、役者人生を歩むまで

出典: FASHION BOX

今や舞台に、映画、ドラマと引く手あまたの人気俳優・佐々木蔵之介。意外にも大学生になるまで演劇に興味がなかったという彼が、役者人生を歩むに至った経緯、そして役者という職業にかける熱い想いについて伺った。

≪目次≫
●一時は家業を継ぐべく大学は農学部に進学
●大学時代に所属した演劇サークルが転機に
●影響された人はそのときどきに演じた役
●【Information】『佐渡島他吉の生涯』
●【PROFILE】

一時は家業を継ぐべく大学は農学部に進学

――クールな佇まいは今も健在で、テレビや映画、舞台と幅広い活躍ぶりを見せている。そんな佐々木さんの人生に深い影響を与えたのは、実家が京都の造り酒屋という生い立ちにある。3兄弟の次男坊として生まれ、将来的には家業を継ぐつもりでいたのだという。だから、神戸大学の農学部に進学した。

自分が酒屋の息子として生まれたという意識は子どもの頃はなかったんです。確かに大人になってからは、就職する際にしても家業のことを考えましたし、うちで造ったお酒が飲めるんだということで自分の生い立ちに関しての意識も強く持つようになりましたね。
兄は建築関係の仕事を目指していましたし、僕も進路を決める際に文系か理系かで迷っていたくらいの意識でした。そうしたら、母から「佐々木酒造を継ぐという選択肢もあるよ」と言われて、初めて家業のことを考えたんです。当時の僕は、なりたいものも全くなかったので「じゃ、家を継ぐ」と。

演劇に興味のなかった僕が初めて自分でチケットを買って観に行ったのが、神戸大学に入学する前の春休みです。建築の勉強をしていた兄から「隅田川沿いに安藤忠雄が設計した芝居小屋があるよ」と言われたのが、唐十郎さんの仮設劇場『下町唐座』です。『さすらいのジェニー』という作品だったんですけど、劇場の一番後ろの席で観ても、圧倒的なエネルギーを感じたんです、「何なんだろ、これは!」って。最後は舞台奥が屋台崩しになって、舞台セットのプールと隅田川が一体化するんです。演劇を観慣れていない僕には、内容を深くは理解できないけど、とにかく衝撃的でした。凄いものを目撃した、驚く演劇体験をしたんです。

4月の神戸大学のオリエンテーションでたまたま出会った高校の同級生と2人で暇つぶしに演劇サークルの新入生歓迎公演を観に行ったんです。大学生になったらこんなふうに遊べるんやな、と。「別に他のサークルにも興味がなかったので、ここにします」って2人で入ったんです。

佐々木蔵之介|新卒で入社した広告代理店を脱サラして役者人生を歩むまで
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大学時代に所属した演劇サークルが転機に

――大学卒業後は、マーケティングを学ぶため、広告代理店に入社。大学在学中に劇団『惑星ピスタチオ』の旗揚げにも参加し、看板役者として活躍する。そして、20代も終わりに差し掛かろうとする頃、ついに役者の道に進むことを決断。30歳で単身上京を果たすと、ドラマや映画といった映像の世界への挑戦を始めた。転機となったのはNHK連続テレビ小説『オードリー』への出演だ。上品な立ち居振る舞いと、舞台で培った演技力で一躍脚光を浴びたのである。

就職先を広告代理店にしたのも、後々家業を継ぐならば商品の売り方を勉強できる会社がいいと思ったからです。本来なら、そこで演劇は辞めるつもりだったんですが、大阪本社採用になったので劇団も続けられたんですよ。会社は2年半で退社したのですが会社員のときには断っていた東京の劇団からの客演を受けると決めたときに、家業も継がない、芝居を続けるという決断をしました。父には「何を考えてるんや」と言われました。確かに今改めて考えみても、また実際その時も無謀だと自分でも思っていました。でも、不安以上に演劇を終わらせたくなかったんですよね。

上京した頃は、何とかせなアカンと思ってはいましたが、舞台しかしてこなかったので、映像の仕事は演じ方や現場でのあり方が分かりませんでした。最初は向いてないなあ、大変やなあ、と思いましたね。というのも、舞台は1カ月稽古して本番でお客様の前に立つのですが、映像は現場に行ったその日が本番でどこの誰に向かって芝居をしていいのかもわからなかった。「いや、どこにも向かわなくていいです。勝手に撮りますから」みたいな感じで、舞台とは全然違うんですね。だから、映像の芝居のやり方みたいなものを勉強し出したのは30歳になってからです。

ただ、僕の原点は学生時代の演劇サークルですから、定期的に舞台に立っていなければと思うのです。正直舞台はシンドいし、やるとキツいんです。でも、そのキツいことが大事なんですね。稽古から始まって千秋楽までほぼ3カ月間かけて何べんも繰り返して一つの作品を作り続けていく。稽古場では毎日ダメ出しがあり、恥をかくばかりなんですけど、その時間が、その積み重ねが糧になると思うのですよね。

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影響された人はそのときどきに演じた役

役者として思うのは、その役を誰よりも僕が愛してあげるということはいつも考えていますね。その役を生きるわけだから、どんなに極悪人であっても極悪人に至ったその人のことを僕は考えてあげたいと思います。だから、よくインタビューで「影響された人は誰ですか?」という質問をされるんですが、「自分が演じる役」という答えが僕には一番しっくりくるかもしれません。

佐々木蔵之介|新卒で入社した広告代理店を脱サラして役者人生を歩むまで
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【Information】
『佐渡島他吉の生涯』

佐々木蔵之介|新卒で入社した広告代理店を脱サラして役者人生を歩むまで
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原作:織田作之助
脚本:椎名瀧治
演出:森 新太郎
出演:佐々木蔵之介、石田 明(NON STYLE)、壮 一帆、谷村美月ほか

第二次世界大戦直後に、太宰治らとともに無頼派として活躍した織田作之助の小説『わが町』がベースとなった本作。大阪の河童路地に住む人力俥夫の他吉の波瀾万丈な生涯が描かれる。
※公演は中止となりました

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【PROFILE】

佐々木蔵之介(ささき・くらのすけ)さん

1968年、京都府出身。大学在学中に劇団『惑星ピスタチオ』の旗揚げに参加。今年は、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』を筆頭に、9月には、映画 『峠 最後のサムライ』と話題作への出演が続く。

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取材・文/大西展子
撮影/宅間國博
スタイリング/勝見宜人(Koa Hole inc.)
ヘア&メイク/白石義人(ima.)
MonoMaster 2020年6月号
WEB編集/FASHION BOX
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