元プロ雀士の女性弁護士が描く、破格の遺産相続ミステリー

元プロ雀士の女性弁護士が描く、破格の遺産相続ミステリー【このミステリーがすごい!大賞『元彼の遺言状』】

 

第19回『このミステリーがすごい!』大賞は『元彼の遺言状』

『元彼の遺言状』
『元彼の遺言状』

ミステリー&エンターテインメント小説家の登竜門ともいえる新人コンテスト、『このミステリーがすごい!』大賞の受賞作が決定した。第19回『このミステリーがすごい!』大賞に輝いたのは、新川帆立さんが書いた『元彼の遺言状』。最終選考委員の満場一致での受賞を果たした。

 

【最終選考委員コメント】

強烈にキャラの立った女性弁護士もの。
「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という前代未聞の遺言状のため「犯人選考会」が開催される、とツカミはたいへん強力。
最終選考委員:大森望/翻訳家・書評家

 なによりヒロインのキャラが光る。遺言の真相には結構驚かされたし、人間関係もよく練り込まれていると思った。
最終選考委員:香山二三郎/コラムニスト

 ぶっちぎりで面白かったです。奇妙な遺言状の内容はもちろん、とにかく主人公の人物造形に魅了されました。
発想力、文章力、キャラクター造形力どれも充分。
最終選考委員:瀧井朝世/ライター

 

『元彼の遺言状』あらすじ

「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」
奇妙な遺言状を残して、大手製薬会社の御曹司・森川栄治が亡くなった。学生時代に彼と三ヶ月だけ交際していた弁護士の剣持麗子は、犯人候補に名乗り出た栄治の友人の代理人として、森川家の主催する「犯人選考会」に参加することとなった。数百億円ともいわれる遺産の分け前を獲得すべく、剣持麗子は自らの依頼人を犯人に仕立て上げようと奔走する。
他方で、彼女は元カノの一人としても軽井沢の屋敷を譲り受けることになっていた。ところが、軽井沢を訪れて手続きを行ったその晩、くだんの遺書が保管されていた金庫が盗まれ、栄治の顧問弁護士であった町弁が何者かによって殺害されてしまう……。

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強烈なヒロインを描く新川帆立さんって?

個性的な登場人物に青春時代の恋バナ(?)、奇妙な遺言状、殺人事件など、さまざまなミステリーの要素が交錯する『元彼の遺言状』。あらすじを読んだだけで、食指が動いた本好き読者も多いに違いない。作者の新川帆立さんも、なかなかユニークな経歴の持ち主なのだ。
ご本人のインタビューを手掛かりに、その素顔に迫ろう。

 

きっかけは夏目漱石『吾輩は猫である』

きっかけは夏目漱石『吾輩は猫である』

“新川帆立”というペンネームからは、性別すら判断できない。だが、バラしてしまえば女性だ。年齢は29歳。アメリカ合衆国テキサス州ダラスで生まれ、宮崎県で育ったという。

……と、ここまでで、まだ出身地しかプロフィールをご紹介していないが、既にちょっと個性的だと感じるのは、筆者が田舎モンだからだろうか。

今回、ミステリー小説でデビューを果たすことになった新川帆立さんだが、意外にもご自身が作家を志すきっかけとなったのは、かの近代文学の金字塔らしい。

新川帆立「16歳のときに読んだ夏目漱石の『吾輩は猫である』に感銘を受けたことで、自分もこういう小説が書きたい、作家を目指そうと。そのときにはじめて、なりたい職業が見つかりました」

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文筆業の保険!? 弁護士資格を取得

文筆業の保険!? 弁護士資格を取得

16歳にして、夢を見つけた新川帆立さん。だが、そこで夢に向かって猪突猛進! ……とは、ならなかった。女子高生の彼女は「将来、めでたく作家になれても、収入が安定するまでには時間がかかる」と冷静に予想。より堅実な人生設計を立てたのだ。

新川帆立「作家として収入が安定するまでには、兼業でやっていくしかない。粘り強く長期戦に対応できるための食い扶持が必要。そのため手に職ではありませんが、何か資格を取ろうと思ったんです。そこで法学部に入って弁護士資格を取りました」

ご本人の言葉を借りれば「作家になるために成り行きで職業を選択した」とのことだが……。成り行きで東大法学部に進学するとは……。

 

 

創作のヒミツとは?

長期戦になるだろうという予想に反し、29歳の若さで『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した新川帆立さん。前述のとおりユニークな経歴があるからか、受賞の知らせを受けても、ご両親は驚かなかったそうだ。

新川帆立「プロの雀士になったときだって、さほど驚かなかったぐらいですから……」

え? ちょっと待って。プロ雀士の資格も持ってるの??
なんでも弁護士の司法修習中に最高位戦日本プロ麻雀協会のプロテストに合格し、プロ雀士として活動していたそうだ。麻雀は運だけでは勝てない競技とはいえ、やはり引きも強い「持っている」人なのか。そうだな国士(無双)とか上がりそうだよな……と、あれこれ妄想してしまう。

また、一番近しい間柄であるご夫婦にまつわるエピソードも無視できない。

新川帆立「夫は本当にポジティブな人なので、去年『このミス』大賞の選考に落ちたときは首をかしげて、私より納得してないんですよ。作品を読んでもいないのに(笑)。だから今回も、夫だけは疑わずに受賞すると信じてくれていました」

お二人は大学時代から、ともにキャリアを積んできたという間柄。ご主人も新川さんと同様に、弁護士として働いているそうだ。

新川帆立「以前から夫に『本当は作家になりたいんだよね』と言っていたこともあって、執筆中は他のことが何もできない私をメチャクチャ支えてくれました。ご飯の支度や洗濯物、お風呂といった家事全般まで、全部やってくれて……。私を全肯定してくれる人が近くにいて、すごく心の支えになったので、本当に感謝しています」

パートナーに、もんのすごく愛されていることが行間から伝わってくるインタビューである。うらやましい~。

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ちなみに、受賞作となった『元彼の遺言状』は、3週間弱という驚異のスピードで書き上げたという。本当に、掘れば掘るほど驚きのエピソードが出てきそうだ。その豊富な引出しを生かして、次回作でもきっと読者を驚かせてくれるに違いない。……なんてデビュー作の発売前から書くのは、さすがに気が早すぎるだろうか。

 

(参考)

書籍『元彼の遺言状』
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書籍『このミステリーがすごい! 2021年版』
『このミステリーがすごい! 2021年版』
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新川帆立/Profile

新川帆立
新川帆立

(しんかわ・ほたて)
アメリカ合衆国テキサス州ダラス出身、宮崎県宮崎市育ち。東京大学法学部卒業。現在も弁護士として勤務。司法修習中に最高位戦日本プロ麻雀協会のプロテストに合格しプロ雀士としても活動経験あり。作家を志したきっかけは16歳のころ夏目漱石の『吾輩は猫である』に感銘を受けたこと。

 

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インタビュー聞き手/大西展子

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文・Web編集/FASHION BOX

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