私たちの生活を一変させた新型コロナウイルス感染症。アルコール消毒やマスク着用、ソーシャルディスタンスなど、さまざまな対策が行われていますが、今回注目する感染対策は、ウイルスにおびえない体をつくること。ウイルスと「敵対」するのではなく「共存」していくために必要な暮らしのヒントを、杏林予防医学研究所所長・山田豊文先生に解説していただきました。
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ウイルスにおびえない体づくり
世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス感染症。これによって社会が大きな不安と混乱に陥っています。対策のポイントは「敵対」ではなく「共存」。ウイルスにおびえない暮らし方を知りましょう。
コロナ禍の社会に振り回されない心と体を
2020年、世界中を恐れさせたのが新型コロナウイルス感染症の流行です。今なお世界各国がその対応に追われ、日本でも社会生活に混乱が起きています。感染を予防するために、盛んに叫ばれているのが、密閉空間・密集場所・密接場面の「3密を避ける」こと。またマスクや手洗い・うがいといった方法ばかりに終始しているのが現状です。
これらにも意味はありますが、果たしてこういった対策だけをやっていればいいのでしょうか? それよりも本当に大事なのは、私たち人間の体に備わっている本来の免疫力を適切に発揮して、感染を防いだり、たとえ感染しても重症化しないようにしたりすることです。どれだけ感染対策を周到に行ったとしても、私たちの生活環境からウイルスを撲滅することは不可能です。これは新型コロナウイルス感染症に限った話ではありません。であれば、細菌などの環境中の微生物と同様に、環境中のウイルスとも仲良く暮らすほうが賢明です。つまり「敵対」ではなく「共存」を目指すのです。そのためには私たちも適切な方法で自衛しなければなりません。
私たちの免疫システムは、異物が入り込むと作動して、病原体に乗っ取られないようにさまざまな手段で対応します。もし、日頃の生活習慣の影響で細胞の環境が乱れていると、この免疫システムが十分に働かなくなったり、暴走して健康な細胞にまで大きなダメージを与えたりしてしまうことになるのです。免疫力は強ければいいと思いがちですが、強過ぎても弱過ぎてもいけません。適正にコントロールされていることこそ、正常な免疫システムなのです。
このようなウイルスは今後も出てくるかもしれません。過剰に恐れるのではなく、食習慣や生活習慣を改め、本当の意味でウイルスにおびえずに暮らせるような心と体をつくりましょう。
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体に備わる2つの免疫システム
目や鼻、口、腸などの粘膜組織は、ウイルスや細菌、花粉などの異物が侵入しないように体を守っています(粘膜免疫)。それを突破して体内に異物が入ってきたら発熱や下痢などによって異物を処理したり体外へと排出したりするように働くのが全身免疫。この2つの免疫システムを正しく働かせることが重要なポイントです。
消毒に躍起になるほど心と体は弱くなる!
エタノールや次亜塩素酸などの消毒用品は、今回の騒動を機に持ち歩くようになったという人も多いでしょう。確かに消毒することで付着したウイルスを排除することはできるでしょう。ですが、手洗いや消毒が過剰になることで、手荒れに悩まされている人も多いようです。つまり皮膚のバリア機能が低下しているわけであり、これではむしろ感染のリスクを高めていることになります。なんとも皮肉な話です。
家ではもちろん、どこへ出かけても入り口で消毒をして、あらゆる場所が清潔に保たれているという清潔信仰。実は、そこには重大な落とし穴があります。そもそも手洗いや消毒を頻繁に行うのは、肌の表面に住みついている常在微生物まで排除しているということ。私たちの体は、腸内細菌に代表されるようにいろいろな菌・ウイルスと共生しています。皮膚の常在微生物の生態系が乱れることは、腸などほかの部位の常在微生物にも悪影響を与えることになります。手洗いや消毒ばかりに躍起になっていると、むしろどんどん不健康になっていくということを覚えておきましょう。
食器を手洗いする家庭の子どもは、食洗機を使う家庭の子どもに比べて皮膚炎の発症率が低いという研究もあります。食洗機だと高温洗浄で食器に付着した環境中の微生物が死滅してしまいますが、手洗いだと生き残り、飲食の際に子どもたちが接触することになります。これが免疫システムのトレーニングの機会になり、アレルギーを起こしにくくなるのです。免疫システムが正しく働くためには、菌やウイルスと接触するという経験もとても大切なのです。
ウイルスにおびえない心と体をつくる生活のヒント
汚染された空気を吸わない
呼吸器系の健康状態が低下していると、感染率が高くなります。都会や工業地帯など空気が汚れている地域に暮らしている人は、自然豊かな場所を訪れるなど、きれいな空気を吸える機会を設けましょう。いうまでもなく喫煙は呼吸器系を弱くしますからやめるべきです。
気道表面の健康を保つ
ウイルスが付着する気道表面の細胞の健康を保ちましょう。β-カロテンなどのビタミン、亜鉛などのミネラルは、これらの細胞の状態を良好に保つために大切です。このほか、野菜や果物に含まれる種々の抗酸化成分(ファイトケミカル)も機能維持を助けてくれます。
↓ファイトケミカルを含む食品についての記事をチェック
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健脳習慣を身につける
コロナ禍の心のケアも、ウイルスにおびえない生活の重要なポイント。植物性食品を中心とした「究極の食事」(くわしくはTJ MOOK『老けない体をつくる空腹健康法』を参照)で、思考と感情をつくり出す脳細胞の環境を整えることはもちろん、ここでは「高BDNF習慣」もカギとなります。断食に加え、運動、日光、音楽、睡眠でBDNF※を増やしましょう。
※BDNF(脳由来神経栄養因子)……脳でつくられる物質で、新たな神経細胞を成長させる働きや、長期記憶に重要な物質
早朝の日光を浴びる
日光を浴びてつくられるビタミンDは、免疫システムに重要な役割を果たしますし、同じく朝日を浴びてつくられるメラトニンは、体内時計を調整するほか、抗酸化作用や抗がん作用、さらにはサイトカインストーム(免疫システムの暴走)の抑制に働きます。
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教えてくれたのは……
杏林予防医学研究所所長
山田豊文(やまだ・とよふみ)先生
【PROFILE】
一般社団法人日本幼児脂質栄養学協会(JALNI)会長。あらゆる方面から細胞の環境を整えれば、誰でも健康に生きていけるという「細胞環境デザイン学」を提唱し、本来あるべき予防医学と治療医学の啓蒙や指導を行う。2013年6月に「杏林アカデミー」を開校。自ら講師を務める講座を通じて、細胞環境デザイン学を日本に広めていくための人材育成に力を注いでいる。2018年にはJALNIを始動。おもに子どもの脂質改善を目的としたさまざまな活動を全国各地で展開している。おもな著書に『細胞から元気になる食事』(新潮社)、『病気がイヤなら「油」を変えなさい!』(河出書房新社)、『脳と体が若くなる断食力』(青春出版社)など。
『ウイルスにおびえない暮らし方』(共栄書房)著者:山田豊文
ステイホーム(家にいよう)からステイヘルシー(健康でいよう)へ。「マスク・手洗い・3密回避」よりも大切な食事と習慣。コロナ時代を健康に生き抜くための食べ方・生き方を提唱する一冊。
杏林予防医学研究所ホームページ(https://kyorin-yobou.net )
山田豊文フェイスブック(https://www.facebook.com/yamada.kyorin )
(抜粋)
TJ MOOK『老けない体をつくる空腹健康法』
監修:山田豊文
☆TJ MOOK『老けない体をつくる空腹健康法』を宝島チャンネルで購入する!
編集・ライティング:藤田都美子、宇津井恵子
イラスト:藤井昌子
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WEB編集/FASHION BOX、株式会社エクスライト