ウイルスと戦う免疫力ってなに? 免疫力を上げる生活習慣を医師が解説

ウイルスと戦う免疫力ってなに? 免疫力を上げる生活習慣を医師が解説

「抗ウイルス対策には免疫力を上げることが一番」。そんな声がよく聞かれる今日このごろですが、そもそも免疫力ってなに?という方もいるのでは。そこで、栄養学にも詳しい、まいこホリスティックスキンクリニック院長の山﨑まいこ先生に免疫力についてうかがいました。

≪目次≫
●Question:そもそも免疫とは一体なに?
●からだを守るためにはたらき続ける抗体
●まずは生活習慣を見直すべき!
●教えてくれたのは……

Question:そもそも免疫とは一体なに?

ひとことで言うと、人間にもともと備わっている“外敵から身を守るシステム”のこと。ファーストステップとして、ウイルスや細菌をからだに侵入させない“防御”のはたらきをしてくれるのが“粘膜免疫”です。目や鼻、のど、腸管などの粘膜で粘液を分泌し、外敵をブロックします。それでも、粘膜免疫を突破して体内へ侵入し、増殖してしまった状態が“感染”です。

セカンドステップでは、体内に侵入したウイルスや細菌と戦うため“攻撃”をします。これが“全身免疫”です。熱が出たり、下痢になったりするのは、免疫細胞のはたらきを活発にしたり、侵入してきた悪いものを排除しようと戦ってくれているから。“免疫”はからだにとって、けなげで愛おしい存在なのです。次では、さらに詳しく免疫の特性をお話しします。

1st Step:防御

目、鼻、のど、腸管、膣など、粘膜はウイルスや細菌などの病原体の最初の入り口になります。粘膜免疫はそれらの外敵から守るはたらきをしてくれていますが、なかでも大切なのが腸で、小腸の壁にはからだ中の免疫細胞の約7割が集まる絨毛と呼ばれる突起が集中。そこで何が外敵かを判断し、トラップしているのです。従って免疫力を高めるためには、腸のはたらきを活発にすることも必要不可欠です。

<粘膜免疫のはたらく主な場所>
・目
・鼻
・のど
・腸管
・膣 など

2nd Step:攻撃

必死にブロックしても体内に病原体が侵入してしまったら全身免疫の出番。粘膜免疫があらゆる粘膜上で活躍するのに対し、全身免疫はリンパ節や脾臓、血液中などではたらきます。病原体が侵入後、すぐにひとつめの“自然免疫”が動き出し、病原体を飲み込み、病原体に感染した細胞をも直接破壊します。続いて“獲得免疫”は、抗原ごとの抗体を作って対抗します。ワクチンはまさに“獲得免疫”の代表です。

<全身免疫は二大システム!>
・自然免疫
病原体をやっつけるために、まず“飲み込む”方法があります。自然免疫は主にこの担当。食細胞(細菌を食べる細胞)と呼ばれる白血球の一種「好中球」「マクロファージ」が、病原体の侵入後、直ちにはたらき出します。

・獲得免疫
獲得免疫には周囲の免疫細胞をはたらかせる司令塔としての役割や病原体を無効化する「IgA」や「IgG」などの抗体を産生するはたらきもあります。また、その病原体を記憶し、次の感染に備えてくれるのも獲得免疫です。


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からだを守るためにはたらき続ける抗体

鼻汁、唾液、腸の粘膜に多く分泌され、主に全身の粘膜部分で活躍している免疫物質、それが「IgA」と呼ばれる抗体です。抗体は、侵入してきた病原体にくっついて、これを無力化するためにはたらきます。「IgA」は特定のウイルスや細菌だけではなく、様々な病原体に反応して外敵の侵入を阻止するので、ぜひ蓄えておきたい抗体です。

ウイルスと戦う免疫力ってなに? 免疫力を上げる生活習慣を医師が解説

まずは生活習慣を見直すべき!

<ストレスを溜め込まない>
ストレスが溜まると自律神経のはたらきが乱れ、常に交感神経が優位に。それでは免疫機能が正常にはたらきません。また、ストレスによって栄養素が大量に消費されてしまうことも。

<血流をよくする>
血液中には免疫機能を持つ白血球が存在し、常にからだをめぐりながら異物がいないかパトロールしています。でも血流が悪いとめぐりが悪くなり、免疫力をも低下させてしまうことに。

<良質な睡眠>
人間は寝ている間に全身の細胞の修復をしています。特に深い眠りのノンレム睡眠時は成長ホルモンが分泌され、疲労回復や肌の再生、免疫機能を高める効果があり、とても大切。

<バランスのとれた食事>
良質なタンパク質、ビタミン、ミネラルはマストで摂りたい栄養素。洋食は脂肪や糖分が多くなりがちなので、和食中心の食生活がオススメです。発酵食品、食物繊維なども取り入れて。

<適度な運動>
最近は低体温の人が多く、筋肉量の低下が原因と考えられています。適度に運動し、筋力をつけることで基礎代謝量も上がり、体温も上昇。免疫力アップには体温36.5℃が理想的です。


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教えてくれたのは……

ウイルスと戦う免疫力ってなに? 免疫力を上げる生活習慣を医師が解説

まいこ ホリスティック
スキン クリニック 院長
山﨑まいこ先生

【Profile】
一般皮膚科医、美容皮膚科院長を経て、2017年に開院。部分的、一時的な改善ではなく、包括的にケアし、肌本来の美しさを育む診療のあり方が多くの女性から支持されている。『腸とこころをととのえる 美しい肌が生まれるところ』(ワニブックス)が好評発売中。


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illustration:YASUKO SAKURAI
text:TAKAKO KURANAGA
& ROSY 2020年9月号
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web edit:FASHION BOX

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