“卵=コレステロール値上昇”は誤解!? 血糖値改善&糖尿病リスクが減る理由を医師が解説

“卵=コレステロール値上昇”は誤解!? 血糖値改善&糖尿病リスクが減る理由を医師が解説

 

卵と乳製品で糖尿病を防ぐ!

食べるだけで糖尿病のリスクが下がることが判明

人間の体は、さまざまな栄養素が相互に影響を与えながら維持されています。食事から摂取する栄養は、体を健康にも不健康にもします。食べるもので、人は病気を予防できるのです。栗原クリニック東京・日本橋院長 栗原毅先生は卵と乳製品を食べるだけで糖尿病のリスクを下げることができると言います。詳しくうかがいましょう。

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乳製品に含まれる、トランスパルミトレイン酸が有効

「かつてはコレステロール値を上げる食品の代表とされ、摂取量を制限されていた卵ですが、その認識はまったくの間違いであることが判明しています。それどころか、『卵をたくさん食べるほど糖尿病リスクが減る』という調査報告が複数出されています」(栗原先生)

例えば、2013年に英国の科学雑誌『Nature(ネイチャー)』に掲載された「心血管疾患及び糖尿病のリスクに関連する卵の消費」についての論文では、「卵をたくさん食べると糖尿病のリスクが42%減る」と報告された。

また、2015年、東フィンランド大学の研究グループからは「週に約4個の卵を食べていた男性は、週に1個程度の男性に比べ、2型糖尿病(※1)の発症リスクが37%低下した」という調査結果が報告されている。
「卵は、栄養素が詰まったカプセルで、必須アミノ酸を含む、理想的なアミノ酸組成をもつ完全食材といえます(下図参考)。これだけの栄養素が含まれている食品は、ほかに見当たらないでしょう。卵を毎日食べているだけで、健康状態が改善されるというのも納得です」(栗原先生)

血糖値改善のために栗原先生が推奨するのは、卵を1日3個食べること。肉が苦手な人は、1日5個を食べてほしいとのこと。
「コレステロール値を高めるという間違った情報のせいで、高齢の方ほど卵を控えてしまいがちです。ですが高齢の方ほど、筋肉量を維持して体の衰弱を防ぐため、血糖値改善のために卵を食べていただきたいところ。悪玉コレステロールの原因は、脂質異常、高血糖、喫煙、ストレスなどであり、卵は体に悪い影響を及ぼしません」(栗原先生)

卵を手軽にたくさん食べるためのコツは、ゆで卵を常備しておくこと。
「朝食抜きは血糖値のためによくありませんから、時間がない朝に1~2個、小腹が空いたらおやつとして食べてもいいでしょう。卵をどんどん活用してください」(栗原先生)

※1/糖尿病はその原因によって「1型糖尿病」と「2型糖尿病」に分類される。1型は「インスリンを作るすい臓のβ細胞が壊れ、インスリンがほとんど分泌されなくなることが原因の糖尿病」で、2型は「主に生活習慣や遺伝的な影響により、インスリンの分泌量が減ったり、効きにくくなったりすることが原因の糖尿病」のこと

コップ1杯の牛乳で血糖値をコントロール

元気のバロメーターといわれる血中アルブミン値を上げるためにも、動物性たんぱく質が摂取できる牛乳はおすすめの食材だ。しかも、カナダのゲルフ大学とトロント大学の研究によれば、「朝食に高たんぱく質の牛乳を飲む人と飲まない人とでは、飲む人のほうが血糖値の上昇を抑えられた」という。これは、牛乳に含まれるカゼインとホエイプロテインという2つのたんぱく質の働きによるもので、糖質の吸収をゆるやかにするのに加え、食欲を抑えるといった作用もある。ホエイプロテインには、インスリン分泌を増やす消化管ホルモンの産生を促す効果も認められている。

さらに、ハーバード大学の博士らが中心となり、65歳以上の成人を対象に行った大規模観察研究では、「血中のトランスパルミトレイン酸(乳製品などに含まれる不飽和脂肪酸)の割合が高いと、糖尿病のリスクが下がる」ことも明らかになっている。また、トランスパルミトレイン酸については、カナダで行われた研究においても「血漿(けっしょう)リン脂質中のトランスパルミトレイン酸の濃度が高いほど、インスリン濃度が低い(血糖値が低い)」という関係がみられた。

「糖尿病の改善、血糖値の管理のためだけではなく、健康長寿のためにも牛乳の摂取は大切です。良質な動物性たんぱく質に加え、日本人に不足しがちなカルシウムが豊富で、カルシウムが骨の材料となるために必要なビタミンDも含まれています。1日に卵1個、牛乳コップ1杯(200mL)、豚肉50gを摂取すれば、食事から摂るしかない必須アミノ酸がまかなえ、健康な筋肉や髪、皮膚、血管を維持できるのです」(栗原先生)

ただし、牛乳には乳糖が含まれ、脂質も豊富だ。
「コップ1杯以上の摂取は控えておきましょう。牛乳が苦手な人は、おやつにチーズをつまみ、乳製品を摂るようにするとよいでしょう」(栗原先生)

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「血中のトランスパルミトレイン酸(乳製品などに含まれる不飽和脂肪酸)の割合が高い高齢者は、その後の2型糖尿病の発症が少ない」(ハーバード大学の研究より)

週に4個摂取で糖尿病のリスクを37%減らす卵の栄養素

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食事摂取基準(1日の必要量)に占めるたまご1個分のエネルギー量と各栄養素の比率(%)
出典:『くらしの中のたまごシリーズ14』(全国鶏卵消費販促協議会発行)を参考に作成。

タンパク質 6.4g 約13%
脂質 5.4g 約9%
ビタミンA 78µg(マイクログラム) 約13%
ビタミンB2 0.22mg 約18%
ビタミンB6 0.04mg 約3%
ビタミンB12 0.5µg 約21%
ビタミンD 2µg 約40%
ビタミンE 1mg 約13%
葉酸 22µg 約9%
カルシウム 27mg 約4%
マグネシウム 6mg 約2%
リン 94mg 約10%
鉄 0.9mg 約14%
亜鉛 0.7mg 約10%

 

卵をたくさん摂る工夫

◆ゆで卵を常備

“卵=コレステロール値上昇”は誤解!? 血糖値改善&糖尿病リスクが減る理由を医師が解説

卵を購入したら、10個パックのうち約半数をゆで卵にしておくといい。朝食や間食にそのまま食べたり、サラダやおでん、煮物などにアレンジすれば、量を食べることができる。

◆肉と一緒に摂る

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すき焼きや親子丼、牛丼の卵のせなど、肉と卵を一緒に摂るメニューはおすすめ。味の相性はもちろん、アルブミン値を上げる意味でも効果が倍増する。ただし、丼物のご飯は少なめに。

◆納豆と一緒に摂る

“卵=コレステロール値上昇”は誤解!? 血糖値改善&糖尿病リスクが減る理由を医師が解説

植物性たんぱく質が豊富な大豆製品である納豆と、動物性たんぱく質が豊富な卵は、毎日摂っておきたい食材の代表。卵をたくさん食べるためにも、卵納豆の習慣を作りたい。


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このコンテンツの監修者は……栗原クリニック東京・日本橋院長 栗原 毅(くりはら・たけし)先生

“卵=コレステロール値上昇”は誤解!? 血糖値改善&糖尿病リスクが減る理由を医師が解説
栗原クリニック東京・日本橋院長 栗原 毅(くりはら・たけし)先生

【PROFILE】
北里大学医学部卒。前慶應義塾大学特任教授、前東京女子医科大学教授。2008年、メタボリックシンドロームや糖尿病などの生活習慣病の予防と治療を目的とした栗原クリニック東京・日本橋を開院。「血液サラサラ」の提唱者のひとりでもある。主な著書に、『名医が教える「本当に正しい糖尿病の治し方」』(エクスナレッジ)、『<肉と卵>が糖尿病に効く!』(主婦の友社)など多数。

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(抜粋)

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編集・執筆/株式会社はる制作室、真瀬 崇、坂本夏子、黒澤 円、石野宏幸
執筆協力/常井宏平
撮影/中川晋弥
写真・イラスト協力/shutterstock、photolibrary

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WEB編集/FASHION BOX

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